【読書日記】11/11(1131字)
谷内六郎の絵は週刊新潮の表紙に載っていたので、私と同じ昭和生まれの方だったら、目にされたことがあるかもしれません。この『谷内六郎展覧会秋』は、秋にぴったりの絵と味のある画家の文章が収録されています。
優しくて幻想的な谷内六郎の絵は、本当に魅力的です。眺めていると胸の中に懐かしさが湧きあがってきます。幻想的でちょっと怖いところもあるのですが、そこがまた良いのです。例えば、94ページの「秋の夜長」という絵では、影絵遊びをしている女の子の手が、狐になっているのが描かれています。
ご本人も書かれていますが、谷内六郎の絵は日本的なアニミズムにも基づいているのではないか、と思います。自然と人間の世界が切れ目なくつながっています。104ページには銀杏の葉っぱが、子供たちと一緒に横断歩道を歩いている絵が載っています。この本の中で一番好きな絵です。
今回読み返して、この本は宝物の一つにしようと思いました。下記に今頃の季節にぴったりの干し柿の絵の写真を載せてみます。「柿ののれん」というユーモラスな題がつけられています。
サトシンさんの『ま、いっか!』は愛読している絵本です。絵本は図書館で借りることが多いのですが、この本は購入しました。テキトーさんというのほほんとした男性が主人公。何度読んでも大笑いします。
目を覚ましたら、寝坊していることに気づくのですが、「ま、いっか!」と慌てません。犬にキャットフードをあげても、「ま、いっか!」。間違ったバスに乗っても「ま、いっか!」、海について服のまま海に飛び込んで、濡れても「ま、いっか!」。
楽しく泳いでいるうちに、服が流されてしまい、財布もなくなってしまいますが、「ま、いっか!」。深刻な状況ですが慌てません。単なる間抜けのようにも思えますが、ここまでくると立派です。
ついに裸のまま会社に歩き始めます。能天気な人のように思えますが、一応仕事はしようと思っているようです。やっとのことで会社にたどり着いたときは夜。そして意外なことが分かります。
失敗した時に「ま、いっか!」で済ませるようなことは、けしからん!と思われるかもしれません。でも、私はそれぐらいのおおらかさが必要だと思います。
もう7年ぐらい母の介護をしています。うまくいかなかったり、思い通りにならないことが多いです。最初の頃はそれで腹を立てることが多かったです。でも今は思い通りにいかないときは、「まあ、いいか」と言うことにしています。この本のおかげでもあります。
不思議とそれでうまくいきます。例えば、薬を飲んでくれないときは、まあ、いいかと思いその時はあきらめて、しばらくしてから飲ませると、飲んでくれることがほとんどです。今回また読んで、私にとって「ま、いっか!」は魔法の言葉だと分かりました。