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原田マハ 板上に咲く が素晴らしい

棟方志功を描いたアート小説 板上に咲く 読了後の私の気持ちを書いてみます。


ワぁの命にも等しいもんは板木では、ね。
ーーおメだ



そうなんだ。そうなんだよ。そういう人だから、こんなにも力強くて優しい作品なんだよね。自分の気持ちに正直でまっすぐで、諦めない、力に満ちた優しくて強い人。
純粋でありながら、鋭い直感を持っている。
子どものように純粋で、かわいらしいひと。
更に才能もある、運もある。
でも、その裏に計り知れない努力、自分を信じる力があったのだろう。そして、その裏を支えていたのは妻のチヤだ。棟方を信じて、世界のムナカタへ導いたのはチヤだと思う。妻が夫を支え、全てを捧げるなんて現代の風潮とは違うものの、現代を生きる私から見てもかっこいい人にしか思えない。チヤは棟方を信じていると同時にチヤ自身のことも信じていただろう。やっぱり、自分を信じる気持ちや貫く姿はいつの時代も素敵で魅力的だ。

読んでいて、自分はすっかりチヤになりきっていた。野草しか食卓に出せない日は辛く、やるせなかった。
また、子ども達が庭を走り回りチヤが洗濯物を干している日は私の目の前にもあたたかい太陽の光を感じ心が満たされた。1945年の出来事、福光駅では私も座り込んでしまう、そんな気持ちだった。そして、「ワぁの命にも等しいもんは板木では、ね。」と言われた時には涙が溢れてとまらなかった。うれしかった。
棟方が日本に、そして世界に認められていくと誇らしくなった。

読み終えて、現実に戻る。
すっかり棟方ファンだ。ネットでたくさん検索し、「む」と文字を打つと「棟方志功」と出るほど。YouTubeで実際に板を彫る棟方志功を見つけた。想像よる遥かに素早く彫っているのには驚いた。そして、話すときの笑顔は私の想像通り。純粋で温かい、心の深さを感じる人だった。

もし、ゴッホが棟方志功の作品を見たら、きっと絶賛しただろうな。浮世絵や日本に憧れたゴッホ、そのゴッホに憧れた棟方志功。これはもう両思いだね。


原田マハさんの「板上に咲く」のおかげで、こんなにも魅力的な人物と出逢えた。
小説のどこまでが本当のことかはわからないけれど、伝わってきたものは本当のことなんだ思う。素晴らしい一冊だった。

日々やってくる嬉しいこと、辛いこと、びっくりすること、迷うこと、それらを味わい、乗り越えていかなくてはならない。そんな時にこの本から貰った優しさと勇気で自分を信じていける気がする。そんな気持ちになった。

ありがとう

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