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寄り道しないと帰れない

結婚願望は今のところ全くもってなく、現時点ではそれが叶いそうなパートナーも存在しないのですが、ひとりの女性を芯まで愛するとはどういうことか、については、たまに考えることがあります。

これについて最も参考にできそうなのは我が両親なのですが、子供の頃から6万回くらい聞いているのに、なぜだか2人の馴れ初めについては全く教えてくれません。

自分が子供の頃に、結婚披露宴の時のビデオを頼んでもいないのに何度も視せてきたくせに、ちっとも教えてくれねえ。

ちなみにうちのオトンはオカンを今でもちゃん付けで呼びますが、どうもそれは珍しいケースらしく、その世代だと「おまえ」呼びがわりと当たり前だとか。あまり実感がなかったのですが、我が両親はラブラブ(死語)な夫婦だったらしい。

タレントで漫画家の蛭子能収さんのエッセイ『ヘタウマな愛』では、2001年に死別した元奥様の、喜美子さんとの思い出が語られています。

葬式で笑ってしまったり、公の場で言ってはいけないことを言ってしまったりする蛭子さんらしく、この著書の中でもコンプライアンス的にどうなのかという表現がところどころにあるのですが、当時の奥様が病に臥せられた1999年ごろから、亡くなられた直後までの描写は、いつになく真面目なもので、ヘタウマなりに、ひとりの女性を愛した男性の生き様を感じます。

生き様といっても、まあ蛭子さんなので、堅苦しいものではなく、井の頭公園の草むらで○○○したらパンツに草が入ったとか、ふつう自分が世に出す本でそんなもん書かねえだろと思うし、麻雀賭博事件で謹慎を言い渡されて間もないのにラスベガスでカジノをやりまくっていて、全く反省していないのにもクスッとくるのですが、微塵もカッコ良くないぶん、リアルに迫るものがある。 

前妻の喜美子さんと連れ添っていた30年間、蛭子さんは、浮気や不倫はもちろん、いわゆる風俗店に行くこともいっさいなく、ずっと奥様ひとすじだったそうです。

飲み会などにもできるだけ参加せず、収録が終わったらすぐにタクシーに乗ってまっすぐ家に帰っていたそうな。これは現在の奥様と再婚されてからもそうらしいし、人付き合いが煩わしいという理由だそうだが。

果たして、自分が結婚したとして、これができるだろうか。

いや、その手のお店に関しては20代の頃にひととおり行ったのでもういいやという感じだし、キャ○クラは苦手だし、もちろん浮気や不倫もしません。外呑みも昔に比べればしなくなった。

もっと根本的なことなのですが、「まっすぐ家に帰る」が自分には難しい。

何も買わないのにコンビニに入って出るだけとか、特に用もないのに公園に入ってスマホを弄るだけとかでいいので、なにかしらの寄り道をしないと、家に帰れない。

もちろん、愛しの妻が家で待ってくださっていたのなら、それはとてつもなく幸福なことだ。ありがたい。

私が夏に必ずやる、約1週間どっぷり寝かせた硬派カレーや、漢らしく600mlのクリスタルガイザー全入れの水分たっぷり軟派カレーではなく、新鮮でコクがありまろやかなカレーを作っていただいてくださったりなどするとなれば、それはもう跪かなくてはならない。

のですが、それはそれとして、仕事からの帰り道から直通でその幸せにありつくというのは、なんだか物足りないようにも思う。

もちろん、早く帰れば帰るほどに、ふたりの時間(子供が生まれたと仮定すると家族の時間)は当然ながら増える。

だけど、やはり私は、ひとりの時間が1日に最低2回はないと精神の安定を保てそうにない。

出勤時はわざと30分くらい早く出て30分くらいグダグタし、退勤時はわざと最寄りじゃない駅で下りて近くのコンビニで角ハイボールを買ってステーション・バー村田リスペクトをキメるのが現在の私のルーティンなのですが、そういうものがないと、自分のアイデンティティが失われるような気がしてしまうのです。

思えば、物心ついた頃からそうで、わざと通学路じゃない道から帰ったり、習字教室に行くのに道路ではなく田んぼの畦道をふらふら歩いて(※当時も今も田んぼの畦道は私有地なので勝手に入ってはいけません)帰ったりしていた。

なんだかもう、本能的に寄り道をしてしまうとしかいえない。

なので、(いるのかどうかわからんが)未来の妻よ、私の帰りはきっと遅い。

食事の支度はしてくださらなくて良い。というか勝手にどっかで食べてきてくれて良い。自分も勝手にどっかで食べてくるから。なんなら3日くらいお互い別行動でよくね? 

…………こんな奴は、結婚できねえに決まっとるな。

今のところは、放し飼いの生活が性に合っています。今日も帰りはステーション・バー。というか、ステーション・バーと妻子ある家庭を両立させている村田さんは改めてすげえな。さて、どこの駅でキメるかな……。

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ぷらーな
サウナはたのしい。