ノンアルでもアルでもええねん
アサヒビール株式会社が、今後はアルコール度数が8%を超えるストロングチューハイを販売しないという方針を明らかにしました。健全で持続可能な飲酒を目指しているから、という理由のようです。
ウルフルズの『ええねん』に乗せて、酒がたくさん呑める人もあまり呑めない人も、各自のペースに合わせて楽しむ「スマドリ」でええねん、と標榜している同社のテレビCMを頻繁に見かけますし、大手メーカーでノンアルコール飲料にいちばん力を入れている印象もあり、健康的な飲酒に向けての企業努力をされていることに頭が下がります。
おいおまえ、ついこの前『ヤニねこ』の酒クズの話しとらんかったか……?いや、もっと最近は酒こそロックだみたいなことを言うとらんかったか……?
え、えーっと、その……。人間というものは、二面性を持つ生き物なのです。
ゴールデンタイムのクイズ番組では雑学に詳しい柔和なおじさんと認識されている人物が、深夜のラジオ番組では下ネタや毒舌を吐きまくっている、なんて事例もあります。
表では傍若無人な振る舞いをしているあのちゃんも、裏ではめちゃくちゃ礼儀正しくて、ちゃんと敬語も使えるのかもしれないし。
少し前に酒クズだったぷらーなは黒ぷらーなであり、今のぷらーなは白ぷらーな。作者が同じだからといって、すべての作風が同じわけではないのです。
『川の流れのように』と『恋するフォーチュンクッキー』は同じ人が作詞したけど全くテイストが違うし、萌え漫画ばかり描いていた赤松健先生が議員になって国会のエッセイ漫画を描くとは、誰も想像していなかったはずです。
ビートたけしさんと北野武さん、工藤直子さんとかまきりりゅうじさん、ToshIさんと龍玄としさんのように、同一人物であってもいくつかのペルソナを持つ方はたくさんいらっしゃいます。
ハアハア……。とりあえずこのくらい言い訳を並べておけば大丈夫だろう。たぶん。酒はやめられないとはいえ、最近は休日に昼間から呑むということはなくなりました。
その代わりというわけでもないのですが、以前はほとんど興味がなかったノンアルコール飲料をたまに嗜むようになりました。
昔はノンアルなんて人工甘味料の味しかしなくて不味いだろ、という感想だったのですが、ここ数年は製品のクオリティがかなり上がっています。
麦やホップを使って、本物のビールとほぼ同じ製法で作られているものもあるし、中にはトクホ(特定保健用食品)の許可を得ている健康志向の商品もある。ノンアルとはいえ、ビールを飲んで健康促進なんて昔ならあり得なかった発想だし、なんかチートなことをしている感覚があって気持ちいい。
いちばん美味いと思うのは、やはりアサヒビールから出ているドライゼロですね。同社の本物のビールであるスーパードライを模した商品ですが、本家と同じくらいの泡立ちがあるので、気分がかなり高まる。本家は辛口を売りにしていますが、こちらはノンアルのためか、ちょっと控えめでクールな味わい。正直なところ、本家よりも好きだ。
私は本物のビールに関してはサントリー派なので、スーパードライはほとんど呑んだことがない。山岡士郎さんが言っていた「スプーンに舌を押し当てた味」とまでは思わないが、どうにも舌に残る感じがする。少し前に発表された3.5%のドライクリスタルも試してみたが、あれは逆に甘口すぎる。
ドライゼロくらいがいい塩梅だ。ジョッキ缶バージョンのものもあり、見つけて飲んでみたが、これがまあ物凄い発泡量。アガるわー。
で、これを午前中にベッドでやるというのが実にいい。本物のアルコールビールでこれをやると酔えて高揚もするが、それと同時に午前中からこんなことをやっている俺はダメ人間すぎるだろうという自己嫌悪もうすらうすら覚えてしまう。
しかしノンアルビールなら、朝っぱらからビールを飲んでいる背徳感を楽しめつつ、ノンアルなので罪悪感がなく、自己嫌悪にもならない。酔っていないので身体が怠くなることもなく、昼からのパフォーマンス力も落ちない。
そして昼すぎに2本めのノンアルを決めたりもする。飲酒後の銭湯やサウナは御法度だが、なにせノンアルなので堂々と入れるし、たとえプラシーボ効果であろうと高揚した気持ちで愉快に暖簾を潜れる。そして、高揚した気持ちをサウナで鎮めるのである。
どうせならその後もノンアルで決め……ていたならもっと健康的になれるのですが、夜になると身体が自動的に角ハイボールを欲してしまう。
ええねん。呑まんでもええけど、呑んでもええねん。ウルフルズのメンバーのご実家の自転車屋さん(地元では有名)の方角を見ながら、今夜も1杯やるニャ。