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しゃっくりのせいでウワバミになるのを諦めたジャンカラ

また昔の会社の話をするぜ。 

ヤマ○電機での店頭販売は、そもそも成績がのび太レベルだった我が営業マン時代でもワーストだったもので、辛いことのほうが多く、前回は暗い感じになってしまいましたが、今回は、パーっと明るいことを書きますか。

呑み会についてです。

思えば、いちおう成人するかしないかの頃からお酒はそこそこ嗜んでいたものの、酒飲みと周囲から認定されるくらいにまで上り詰めたのは、この時の呑み会で鍛えられたことが大きかったですね。

会社そのものが決起会と称した呑み会イベントを月イチで行っていたのに加えて、当時の所属部署の上司のMさんが、まあいわゆるウワバミの方でして。

三ツ矢サイダーの感覚でビールをイッキ、コカコーラの感覚で焼酎を呷り、レッドブルの感覚でテキーラを注入。

そのウワバミのMさんの右腕のHさんも左腕のOさんもまたウワバミでして、類は友を呼ぶという諺の通りに同類が集まり、さらにその類の肉体はアルコールで酔っぱらうという概念がそもそもないらしく、まあ無限に呑めてしまう。すげえ。うらやましい。尊敬しちゃう。

自分はこの類ではないので、アルコールを摂取してから分解されるまでにそれなりに時間がかかってしまう。

会を重ねるうちに、三ツ矢サイダーの感覚でビールを呑むところまではできるようになったのですが、焼酎は間違いなくコカコーラよりも喉への刺激が強いし、テキーラは毒物にしか思えない。

このままではいけない。まだ青くて若かった私は(今でも精神は14歳なので若いが)、夜の電車内で吊り革に掴まってフラフラしながら思いました。

ここで断っておきますが、幸いなことに、Mさんは温和な人で、自分はビールをイッキに呑むけど他人にそれを強要するようなことは一切せず、この部署での他の上司や同僚からのアルハラも、全くありませんでした。

他の部署にいた時は……、うん、……まあ、……しぶとく訴訟すれば勝てそうなくらいには……。

京都の河原町にはスーパージャンカラというクソデカカラオケ店があり、多くの場合はそこで2次会を開くのですが、店を出て阪急河原町駅へと続く地下道を歩く頃には、視界は逆さになっており、阪急電車の小豆色ダッセェアハハハハ泣いていいですか?と完全に情緒不安定な気分になって帰宅。

どういうわけかいつも家には辿り着けるのですが、その道中のことは全く覚えていないのが基本。知らないうちにどこかに迷惑をかけていた可能性があり、それについて考えると恐ろしい。

暴れたとか叫んだとかはありませんが、あ、叫んだのは何回かあるような気がしますが……、マジで怖いのでそこらへんを思い出したくない……。申し訳ありませんでした。

そんな酒に弱い自分を変えたい。酒に強くなりたい。立派なウワバミになろうと決意しました。立派な営業マンになろうと決意したことは一度もないのに。

強くなるには、酒の味、アルコールに身体を慣らすしかない。

というわけで、昼間からひとりで居酒屋に入り浸ってみたり、昼間からコンビニの前でビールをかっ喰らってみたり、そのうちになんか恥ずかしくなってきて、誰もいないトンネルへと場所を変えたら下校途中の小学生とすれ違ってもっと恥ずかしくなってきたりと、まあ傍から見れば限界アル中にいさん。

当時まだ22歳くらいですが、あんたがそうなるのはまだ早いと公園のベンチでおじさんに諭されたりもした。昼間に外で酒を喰らうことは、特にそれを若者がやることは、どうやら一般的にはよろしくないらしい。

しかし、じゃあどこで酒を喰らおう。家で呑み続けるという手は、当時は大学受験生だった弟がいる手前、使えませんでした。

ちなみに家では、昼間からそんな限界アル中プレイをしていることは隠していました。まあ、実際のところはバレていたんだけど。

そうしてまだ太陽が燦々と降り注ぐ時間帯の駅前を徘徊していると、目に入ったのはジャンカラの店舗。

先述の河原町のスーパージャンカラのような大型店舗は限られているものの、小さなジャンカラは関西のいたるところに点在し、地元にもありました。というか関西では、同じくカラオケチェーンのビックエコーやまねきねこよりも、ジャンカラの店舗数のほうが圧倒的に多い。

そしてジャンカラはとにかく安い。あくまで当時の価格だけど、30分80円でドリンク飲み放題、夏場はソフトクリームも無料だったりする(※2008〜2010年ごろの話です。ドリンク飲み放題は今もあるけど、ソフトクリームはもうないかも)。このドリンク飲み放題の中にはアルコールも含まれている。つまり、80円で酒が飲める。

グルメシティで売っていた88円のクソマズ発泡酒より安いじゃねえかよ。しかも歌っていいとかやべーだろ。コスパがとんでもなさすぎる。

というわけでヒトカラ入店。無料のジントニックを注文。正直なところ薄いのですが、いくらおかわりしようが無料なのだから文句は言うまい。

当時は店員さんが部屋に持ってきてくれたので(現在は基本的にセルフサービス)、ひとりで2杯も3杯も注文するのは悪いなあとは思いつつ、酔いは確かにだんだん回ってくる。

チューハイの一部も無料だったので、今度はみかんハイでも行きますかと宴もたけなわになってきて(ひとりしかいないのだが)、ここは一発オーディエンスの皆さん(架空上)と全員でロージア飛ばしていくぞ。アイアムアトリガー。

と、みんな大好きなヴィジュアルロックアンセム、LUNA SEAの『ROSIER』のAメロを歌い出した瞬間のことである。

「かーがやく、こー……ゲフッ!ヒャック!ヒャック!」

突然のしゃっくりに見舞われた。『ROSIER』の出だしのシャウト「アイプートゥーマーイ」(※公式のスコアでは「I've pricked my heart」となっていますが、私の耳コピではこうなっている)をキメた直後に、喉の奥にみかんチューハイが絡まって、どうやら体内が痙攣を起こしたらしい。

カラオケという施設は、原則的に歌うことを楽しむためにある。その歌うことを、突然に禁止されたらどうなるのか。それはもうカラオケではない。しかもそれを禁止してきたのが、まぎれもない自分自身の肉体である。誰も責められない。

でもって、しゃっくりという現象は一度でも意識してしまうとなかなか止められない。水を飲むとか息を止めるなどの古来から伝わるしゃっくり抑止法を試してみても、とんと効果がない。

なんかもうすべてが虚しくなり、酔いが一気に醒めた。その後ずっとソファーに寝そべり、なにやってんだわたしはという気分で天井の電球を見つめ、延長もせず、そのまま帰りました。

まだしゃっくりが止まらない帰り道で、もうウワバミになるのは諦めよう、自分には才能がないのだ……と、肩を落としました。ふと横を見ると、目に入ったのはファミリーマートの看板の「酒・たばこ」の文字。

気がつけば、ビール缶の入った袋をぶら下げている自分がいました。ウワバミになるのは諦めるが、酒を呑むのはやっぱり楽しい。明日からまた会社か……。今週も呑み会があるのかな……。

というのが当時の自分の日常だったのですが、まあ、アルコールはほどほどにしましょうね。30代になってから健康診断でγ-GPT値が引っ掛かったりするからね。あ、いや、14歳なんですけど。ていうか、呑み会ではなく個人的に酒をかっ食らっていた話だなこれ。

サウナはたのしい。