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短編小説1000字

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2023年11月の記事一覧

短編小説 はなむけ

 大福をひとつ、鞄の中に持っていた。美津は走った。早く丘に辿り着きたくて。そこには重雄がいると信じていた。
 丘には茂みがあり、それを抜けると拓けて海が見える場所がある。まだ重雄は居なかった。
 キョロキョロと辺りを見回してから、木の影に腰掛ける。美津は大きくため息をつく。
 戦時中の今でも、清貧に生きている人たちがいることを知っている。美津もそうだった、ついさっきまでは。鞄の中の大福は盗んできた

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