マガジンのカバー画像

短編小説1000字

100
大体1000字くらいの短編小説です
運営しているクリエイター

2022年3月の記事一覧

短編小説 化粧をする女

 弟は料理が上手い。週に一度こうして私の住処にやって来ては手料理を振舞ってくれる。
「真波、皿」
  ぶっきらぼうに私を呼ぶが、私が化粧道具を弄っているとわかるとすぐにひっこめ、自分で戸棚の皿を選ぶ。今日は中華。よだれ鶏の辛いソースの香りがここまで漂ってくる。ただ、私の興味はそこにはなくて今日の口紅の色をどうしようかで悩んでいた。真っ赤なリップは飽きた。
 食事の支度が整うと、そわそわと弟は私

もっとみる