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仲村ぷる #短編小説
2021年6月18日 15:53
卓志はベランダに出ると、煙草を咥えて火をつけた。朝の日差しが眩しい。大きく息を吐いた。 これが夜だと隣の部屋に住んでいる桃花ちゃんがひょっこり顔を出したりして他愛ないお喋りを交わしたりするのだが、平日の五時半である。桃花ちゃんがいればふかすだけになる煙草を、呑むというに相応しい吸い方で堪能する。 卓志は考えていた。夜勤のある工場で働き、随分時が経ってしまった事を。大学でも出ていれば、資格でも