
〈今月の本〉2024.1
2023年12月から始めた、毎月読む本を決めて感想を投稿する試み。
今回は2回目になります。
恋愛に関する小説を2冊、料理小説を1冊、エッセイ1冊の、計4冊読みました。
読んだ順番で感想書いていきます。基本、ネタバレしない方向。
1.辻村深月「傲慢と善良」(朝日文庫)
実は、初・辻村深月さん。
読んでみたいと思いながら、どれを読もうか迷って手を出せませんでした。
初めて読む作家さんの最初の1冊ってとても重要だから。
「傲慢と善良」は、彼氏がよく見てるYouTuberさんが紹介していたとかで、彼氏経由で知りました。
そのYouTuberさん曰く、辻村深月さんは「女性版・朝井リョウ」らしい。
2人とも心理描写に優れていて、似ていると感じるそうです。
さらに、文庫版の最後にある「解説」を朝井リョウさんが担当されています。
私は中学からの朝井リョウファンなので、それは読むしかないと、「傲慢と善良」を手に取りました。
すぐに読む予定もなかったので先に彼氏に貸したところ、「読んでよかった」と言われ、すぐ読む予定に変更。
今月読む本は既に3冊決めていましたが、「傲慢と善良」を追加しました。
読み始めてすぐに引き込まれる作品でした。続きがとにかく気になる。
物語は、主人公・架の婚約者、真実がストーカーに鉢合わせたと、架に電話する場面から始まります。
それがきっかけで同棲を始める2人ですが、ある日突然、真実と連絡がとれなくなってしまうのです。
少しでも真実の所在がわかる手掛かりを探すため、真実の家族や仕事の同僚、地元の友人などに連絡をとる架は、
その過程で、真実の人生と、「結婚」について知っていきます。
30代後半の2人が結婚を急ぐのも、これまでの人生を振り返るのもすごくリアル。
心情変化が丁寧に描かれているから、とても自然に状況を受け入れられるような文体でした。
ただ、辻村深月さんと朝井リョウさんの作品の雰囲気は似ているともあって、中々に心を抉ってきます。
自分の愚かさを指摘されたような気がするんです。
それでも、そんな読者を優しく導いてくれるところまでお二人は似ていると思いました。
読んで良かった。
2.瀧羽麻子「うちのレシピ」(新潮文庫)
ジャケ買い。先月に引き続き、「美味しそうな本」たちの積読から。
裏表紙のあらすじにも惹かれました。
チョコレートケーキ、すきやき、ミートソース。その味は、きっと生涯忘れない。(中略)
私たちは、恋や仕事や子育てに日々悩みながらも、あたたかな食事に癒される。美味しさという魔法に満ちた6つの物語。
ある家族の物語です。
それぞれが語り手となった短編が、6つ収録されています。
偶然ですが、「傲慢と善良」に引き続き、家族や結婚について考える1冊でした。
仕事と家庭。
母親と娘。
祖父と孫。
それぞれの関係や立場、相手への思いからぶつかる場面もあるけど、最後には温かい料理がピッタリの物語に。
表紙に描かれた料理が作中に登場するので、
読み終わって本を閉じた時にはお腹がなってしまう作りです。
私はいま、キッシュが食べたい。
3.山本文緒「自転しながら公転する」(新潮文庫)
またまた恋愛小説。
そして今回も、結婚に悩む30代の話。
誰しもが、結婚について悩むし
結婚に悩むことはつまり、自分の人生と向き合うことでもあって、避けては通れないのだ、と思いました。
この話は結婚や恋愛が軸となって進むけど、
人生と向き合い悩む過程は、きっとどんな生き方をしていても経験するんだろうな。
ストーリーは「傲慢と善良」とはもちろん異なりますし、雰囲気も違いますが、
テーマや話題としては近いものがあり、2冊を短期間のうちに読めて良かったと思います。
「傲慢と善良」の主人公女性と過程は異なりますが、自転公転の主人公女性が行き着く先も同じような場所でそこも面白かったです。
でも、同じような場所なのに、そこで出会う人たちの雰囲気は両者で全く違う。
そこを比べられたのも良かったかも。
「傲慢と善良」と比較すると、「自転しながら公転する」は、サクサク読めるような話に感じました。
600頁越えなのでボリュームはありますが、
話の続きが気になっていつの間にか読んでしまっている印象です。
「傲慢と善良」と併せて、ぜひ。
4.加納愛子「イルカも泳ぐわい」(筑摩書房)
お笑い芸人Aマッソ加納さんの初エッセイ。
Aマッソは、THE Wでやったプロジェクターを使った漫才など、なんかいつも面白いことしてるコンビです。
トーク番組に出てる時の加納さんも好きで、よく観ます。
そんな加納さんのエッセイは、どれも楽しくて、関西弁がリズミカルで、タイトルからは想像のつかない話ばかりで、どんどん読めちゃう。
たくさんの話がある中で、私のお気に入りは
「ありがとーぅ」
「タイトルだけで何がわかる、タコが」
の2つです。
もうタイトルが良いよね。
何が始まるのか気になる、わくわくする感じ。
ちなみに、帯を岸本佐知子さんと朝井リョウさんが担当されてます。朝井さーん!
岸本佐知子さんは、名前の後ろに「(翻訳家)」とありますが、エッセイも出版されてます。
岸本さんのエッセイもゆるく、それでいて情報量がギュッと詰まってるのが、「物事を深く考えている人の頭の中の様子」って感じで好きです。
ちなみに、朝井リョウさんもエッセイは3冊出版されてます。とんでもなく面白いです。くだらないです。
でもそのくだらなさを面白い文章にしてしまうのが、朝井さんの魅力です。