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PMSと空飛ぶポケカ

たぶん生理前なんだろう。ルナルナもそう言ってるし。
なんもかんももう嫌だ。
そんな日ってどうしたってあるし、それが運悪く土曜日だったって言うだけだ。
夫は水曜と日曜がお休みで、つまり土曜は毎週出勤している。
そして、さらに言えば、夫は出勤が非常に早いので毎朝私たちが起きたらもういなくて、最近はすこぶる忙しくて帰宅も20時頃(定時はたぶん15時とか)で、つまり、朝の戦争も、夕方の戦争も、土曜の大戦にも、彼は居ない。
そのことにはずいぶんと慣れているはずなんだけど、たまにこうして辛抱たまらなくなる。
そして、それはだいたい土曜日だ。
しかも、今週の土曜日に関しては、先週の土曜日から始まった5連休(運動会の代休がくっついた。あるまじき)を経由して、たった2日しかない平日を終えた後の土曜日だ。
そして、やってくるPMS。布陣として強すぎる。そんな大戦負け戦だ。
私は体もメンタルもちっとも強くない。

*

たった2日の平日でなにができるって言うのか。
食材の買い出しをして、メールの返信をして、原稿を1本半ほど書いたらタイムアップだ。
たくさん買った食料たちはなぜなんだろう、いつも一瞬でなくなってしまうし、お仕事もなんだか中途半端なまま土曜日に突入した。残便感がすごい。

土曜の朝、見渡した部屋はひどく散らかっていて、きっとよその誰かの汚部屋に違いない、と思った。

とりあえず子どもたちに朝食を、と冷蔵庫を開けたんだけど卵がない。申し訳ていどのソーセージとミッキーかまぼこが1枚。誰だよ1枚だけ残したの(わたし)。
ソーセージがたぶん4本とか。こんなのもめごとの種にしかならないので、刻んで野菜でかさを増やすしか術がない。すこぶる面倒だけど、ソーセージ戦争を見るくらいならえんやこら。
冷蔵庫から人参と舞茸と、白菜を出して、中華飯にした。もちろんミッキーかまぼこも刻んで入れた。

*

土曜日の子どもたちは大変自由で、よろしいのだけど私の声がちっとも届かない。
YouTubeをえんえんと観ているんだけど、土曜日だし少しくらいいいじゃないとも思うんだけど、たびたび、誰そればっかり好きなの観てるとか、誰それが観せてくれないとかで、ちびちびと喧嘩をしたりする。それがああ、もうに変わる。
ほら、順番よ、交代しよう、もそのうちお口が飽きる。もうこれ以上言いたくないよ、つーか観過ぎや、ええい、からの、もうおしまいにしよう、が飛び出すけれど、聞いちゃいない。
こういうときだけ彼らは心をひとつにするんだもんな。

そろそろ、長女の習い事の時間もあるし、宿題済ませたら、と声もかけるけれど、もちろん聞いちゃいない。お耳どっか行っちゃうのかな。ねぇ、どうしちゃったの。
もちろんのもちろんだけど、ここで、「お洗濯もの畳むの手伝って」とお手すきな誰かへ声をかけたりもしたんだけど、聞こえるはずもないよね。声帯を無駄使いしてしまった。

*

もういい加減にYouTubeおしまいだよ、もう行かないと遅刻だよ、靴下を履くだのよ、水筒の用意してね、と届かないお耳に根気よくお声をかけて、ようやく出発。
いつだって車に乗車するまでに骨が2本ほど折れる。

長女の習い事の間にガソリンを入れて、そのあと昼食。
朝から骨が4本くらい折れているので、今日は迷わず習い事をしているショッピングモールのフードコートでごはん。
うどん、スガキヤ、カレー。了解。
私は彼らの残りを胃袋へ。一食が終わるということの安堵が最大のご馳走。
食べ終わらない長女を残して、フードコート隣接のゲームセンターに吸い込まれる幼稚園組。
「いい?」と訊かれて、「みんながごはんが終わるまで待ってね」と答えるやり取りを何回やったことでしょう。
そう、土曜の彼らのお耳は機能していないのでした。
8億回目くらいのやり取りののち、手をつないでいるというお約束の元、ちびっ子たちはゲームセンターへ。
と思ったら、ほどなくして末っ子が戻ってきて「うんちとおしっこ!!」了解。
トイレに行って戻ってきたら長女が「おトイレ」。了解。
ひとりで行けるね、と送り出したけれど、末っ子がどこやらへ行こうと手を引く。「ねーねがトイレから戻るから待ってね」もやっぱりお耳に届かず、渾身の力で私の腕を引く3歳。
こうなったら長女が戻るまで力比べをするしかなくて。

*

長女が戻って、息子を探したら、末っ子が足が痛いのと言う。
あれだけ言ったのに靴下を履いていなくて、靴擦れしたらしい。ちょっと固いサンダルを履いていた。
まあ、ちゃんちゃいだしな、そういうこともあるよね、とおんぶして、そそくさと帰宅。
予定していた夕飯のお買い物はできないままだった。

帰宅して、子どもたちを車に残したまま、靴下を取りに家に入って、信じられないと思うんだけど私、寝ていた。
ほんの10分ほどだったんだけど、知らないうちに寝てしまっていて、目が覚めた時になにが起きたか分からず、呼びに来た長女に「朝ごはん食べたっけ?!」と訊いてしまった。
おつむが疲れすぎている。

「買い物いこっか」

よろよろと車を発車させるのだけど、どこのスーパーに行こうか気持ちが定まらない。
頭が働かないのだ。今日は、この世で一番効率がいいスーパーにしか行きたくないのだけど、それがどこなのか見当がつかない。
行きなれたスーパーなのか、なんでもそろうスーパーなのか、気分がアガって元気が出るスーパーなのか、心をどこにも寄せられない。
すると息子が

「ポケカが買えるところ、ほら、あそこ!あのスーパーがいい!!」

ああ、あそこか。

ポケカというのは子たちが大好きなポケモンのカードゲームのことであり、スーパーのお菓子売り場や大きめのコンビニに150円くらいで売られてある。それがどこでもあるのかと言えばそうではなく、ある特定のスーパーにしかないのだった。
しかし、そのスーパーはちょっぴり遠い。遠くて狭い道を通らないといけない。今日の私のコンディションであの細い曲がりくねった道を通ったら無傷では帰られない気がした。

だったら、コンビニで買えばよいのでは、どこのコンビニにあるか知らんが。

と、思ったあたりでだいぶ思考がねじれていることに気づけばよかった。

目的地はスーパーであり、買うのは食料であり、なぜ私はポケカに向かっていたのか今となっては不思議でしかない。疲れているときってそういうことってあるんだ。あるの。

1件目に入ったコンビニに運よくポケカはあって、なんだけど種類が多くて何を買えばいいやらわからない。150円くらいの目当てのやつには、なんちゃらと横文字が書かれてあって、その意味が分からない。
そしてその横に500円の「デッキ」があった。
デッキなら分かる。デッキっていうのはつまりセット。電気タイプデッキならば電気タイプのポケモンのセットが入っている。
なにを買ったらいいのかおばちゃんさっぱり分からんし、調べる元気もないし、3人で1個だけデッキを買ったらコスパ最高なんじゃないの、とケチなのか太っ腹なのかよく分からんことを思ったんだった。
家にあるのは、息子のお誕生日に買った、水タイプと、草タイプと、炎タイプだから、それ以外のデッキを買ったらもっと愉快に遊べる気がしたのだ。

そのなんちゃらという横文字が何をさしていて、うまいこと家にあるポケカといっしょに遊べるかもなんだか不安だし、もしそうなったら150円×3が無駄になるし、と働かない頭でそろばんをぱちぱち弾いた結果の結論。
知性がいっこも感じられない。知ってる。

*

何度も言うけれど彼らのお耳は土曜日には働かないんだから、そんな提案は吸収されるはずもなく、末っ子はピカチュウが描かれた電気タイプのデッキを欲しがり、長女はイーブイが描かれた無色タイプのデッキを欲しがり、息子はなんちゃらと横文字が書かれた150円のポケカを欲しがった。
もうほとんど記憶がないんだけれど、なにかしらの説得を試みたはずなのに、私の中のなんか悪くてずるくて怠け者な部分が私をレジに誘って、結果、それらを購入していた。
ポンタカードを読み取ってもらったことだけはちゃんと覚えている。

一緒に購入した抹茶シュークリームを「これ苦いやつだから!!」って誰にも渡さず、発車前に運転席で一気に飲み込んで、これでよしと心を立て直そうと思って振り返ったら車内で見事にポケカが散らばっていた。

座るところがなくなって末っ子が「ああん」と言うので、手伝ってやるしかないよね、とスライドドアをピーピー開けたら、駐車場にポケカが舞った。
神様っているのかな。

*

夕飯のお買い物に行きたいけれど、また駐車場でポケカをかき集めるようなことにはなりたくないので、いったんまた帰宅。
ポケカを片付けて、と声をかけたけど、待てど暮らせど終わらない。のぞき込んだら長女と息子があーでもないこーでもないと仕舞い方について揉めていて、いよいよ崩れ落ちてしまった。
なんだかわーわーしょうもない文句を言って、絨毯に突っ伏した後、階段を駆け上がって寝室に飛び込んだ。10代かな。

子どもみたいに不貞腐れて、もうなんもかんも嫌だとめそめそした。

(ツイートして心をなんとか鎮めようとしているところ)

*

ツイートだけでは心が鎮まらず、自分の要領と頭の悪さに嫌気がさして、夕飯の買い物ができる気もしなくて、なんだかもう私はどこへも向かえない気がして、そんな溜まりすぎたうっぷんが今このnoteを書かせている。
読んで2キロほど痩せてもらえたら、と思うばかり。

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よければ、我が家の食卓のお話を供養だと思って読んでね。
こちらはそんなに痩せないし疲れないから。
読んでくれたら私が少し元気になります。

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ハネサエ.
また読みにきてくれたらそれでもう。