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壁に耳目あり

2024年12月3日

仕事を終えて帰ると
同居人が怯えていた

家に侵入者がいたらしい

部屋で寝ようとしていたら
誰かがバルコニーを伝って
隣の部屋へと渡る音が聞こえた

ナイル川の中洲にあるザマレク
大使館が多く治安の良い地域として
昔は駐在員の閑静な街だった

今ではアート系の学生と
イキった若者の夜の溜まり場になっている

エジプトにありがちな
外国人同士のルームシェアの我が家は
3部屋が南向きに並んでいる

僕の部屋を通り越して
さらに隣の部屋のバルコニーへと
飛び移ったようだった

そこから中へと入り
リビングやキッチンの電気をつけ
ゴソゴソしている

北欧出身の女性研究者の同居人は
部屋の扉に家具をおいてバリケードにし
ナイフを握りしめて息を潜めていた
留守だと思っているようだった

30分ほどで玄関から出て行った

帰宅して侵入者の一報を同居人から聞き
慌てて機材を確認するが
何もとられた様子はない

警察国家で生きるにあたり
こういうのが一番厄介だ
何も盗られていないということは
何かが設置されたということだろう

盗聴器か監視カメラか
最近研究者も政府に狙われがちだから
おそらく目をつけられたんだろう
彼女の同僚も警告を無視して研究を続け
今は檻の中にいると聞いた

しばらくは家の中で筆談をするか
こっそりと話をすることになった

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