6.転倒による骨折の予防
こんにちは。
理学療法士&パーソナルトレーナーの現役_病院勤務のリハビリ先生です。
本noteでは「病院にお世話にならない為に知っておくべきこと」として、
以下の10項目を一つずつ解説していきます。
1.健康的な身体づくり 3つの基本
2.加齢による身体の変化
3.生活習慣病とメタボリックシンドロームの予防
4.低栄養とサルコペニアの予防
5.骨粗鬆症の予防
6.転倒による骨折の予防
7.ロコモティブシンドロームの予防
8.血圧のコントロール方法
9.健康的なダイエット方法
10.健康的な増量方法
本日は「6.転倒による骨折の予防」です。
転倒はどんな方でも起こりうることです。自分はまだ若いし転倒しないだろう。と思われている方も転倒により後悔しないためにも是非読んでいただければ嬉しいです。
また、ご家族様や身近な大切な方へ、この記事でお伝えるする「転倒の怖さ」や「予防方法について」情報共有して頂けたらと思います。
転倒予防の歴史と現状
このグラフは厚生労働省による平均寿命をあらわしたものです。
高齢者における転倒の問題とその予防の重要性は、現在はよく知られていますが、50年程前はあまり転倒予防について考えられていませんでした。
転倒予防が注目されはじめた理由は、「ヒトの寿命の変化と関係がある」と言われています。
上の図に示すように1900年の初めはヒトの平均寿命は 45〜50歳(グラフ 赤ライン)でした。その後、薬などの治療が発展し、流行していた感染症がコントロールされ始め、平均寿命は飛躍的に延びました。
現在では、平均寿命が 女性87歳、男性81歳(グラフ 青ライン)とになり、「転倒される方が増えたことにより転倒予防への関心も高まった」と言われています。
寿命の延伸は、長く生きられるという良い側面を有する一方で、長寿に関連した新たな問題として、認知症や嚥下障害、そして転倒といった問題を生じさせたと言われています。
また、慶應義塾大学医学部のリハビリテーション医学教室で調査された高齢者の転倒頻度に関して、「高齢者の 3 人に1人は1年間に1度以上の転倒を経験している」と言われています。
転倒するとどうなる?
少しこわい話なのですが、転倒・転落により1年間で7,766人の方が亡くなられています。1日あたり約21人です。
不慮の事故による死亡数を種類別の構成割合でみると、転倒による死亡者数は窒息に続き第 2 位であり、交通事故を上回っています。(平成25年度調査)
また、 全転倒のうち 約1割で何らかの骨折が発生することがわかっています。
骨折しやすい4つの骨
骨折しやすい4つの骨を以下にご紹介します。
転倒する方向や床に接地する部位によって、骨折する骨が異なります。
側方・後方への転倒 ー 肩・肘から接地:上腕骨の骨折
前方・側方・後方への転倒 ー 手から接地:橈骨遠位端骨折
後方への転倒 ー お尻から接地:脊椎圧迫骨折
側方・後方への転倒 ー 股関節部から接地:大腿骨近位部骨折
特に大腿骨近位部骨折は、日常生活動作能力と生活の質を大きく低下させます。
また、転倒によって引き起こされる悪循環として「転倒後症候群」というものがあります。
転倒後症候群とは・・・
転倒することで直接的に外傷・死亡 → 身体機能低下 → 生活機能低下を引き起こします。
それだけではなく、転倒したことで「私は転んでしまうからだなんだ・・・」と自信喪失し、「また転んでしまうかもしれない」と転倒恐怖感を抱き「あまり動かないようにしよう」と生活機能が低下し、再び転倒するという悪循環を引き起こしてしまうのです。
この悪循環を打破する為には、以下で説明する「生活環境の変更」や「転ばない身体づくり」を行う必要があります。
転倒してしまう原因について
転倒してしまう原因には、「内的要因」と「外的要因」があります。
内的要因
加齢による体力・筋力の低下や疲労、焦り、不注意、服薬によるふらつき、視覚や認知機能の低下など「自分の体力や体調が関係する原因を内的要因」と言います。
私が患者様に「転んだ原因はなんだと思います?」と伺うと、大多数の患者様が「筋力が弱いからかな?」「玄関のベルがなって慌ててつまづいてしまった」「ぼーっとしてて・・・」と内的要因を答えられます。
しかし、転倒・転落の原因は本人だけではなく、様々な条件が重なりあって発生すると言われています。
外的要因
周囲の明るさや天候、段差、カーペット、電気コードなどの床の状態、スリッパや脱げやすい履物など、「外的な環境に影響されるものを外的要因」と言います。
加齢による体力低下や注意力の低下等、内的要因を補うことはもちろん必要ですが、まずは日常生活を過ごす居場所の環境条件を整える事が、転倒を防ぐためには大変重要な事です。
続いて、転倒しないために意識することについて、お話しさせて頂きます。
転倒しない為に意識すること
転倒しない為に意識することを理解する前に、まずは転倒しやすい場所について知っておく必要があります。
転倒は屋外より屋内で多いと言われています。
屋内の中でも、グラフで示すように居室、玄関、階段、寝室、バスルームで転倒件数が多いことが分かります。
庭で転倒が多い理由としては、ガーデニングや庭の手入れ等、難易度の高い動作が含まれることが考えられます。
外的要因による転倒の予防対策として、住まいの安全対策を紹介します。
また、玄関には上がり框(少し高い段差)があるお家が多いかと思います。階段の安全対策と同様に適切な位置に手すりをつけることや「椅子を設置し座って靴の脱ぎ履きをする」ことをお勧めします。
また、転倒しやすい場所や場面をチェックするための合い言葉として、以下を紹介します。
是非、この「ぬかづけ」を覚えて、周りの大切な方へ伝えてください。
続いて、あなたの転倒危険度チェックをしていただければと思います。
あなたの転倒危険度チェック
このチェック表の5項目中2項目以上当てはまるの方は転倒のリスクがあります。5つ目に関しては、要注意が必要です。
続いて、内的要因による転倒への予防に関してです。
実施にやってみよう「転倒しにくい身体づくり」
7つの運動(ストレッチ2つ・筋トレ5つ)を紹介します。
まずはふくらはぎのストレッチです。ここで言うふくらはぎは「腓腹筋」「ヒラメ筋」を指します。
メリット
この「腓腹筋」「ヒラメ筋」をストレッチして柔軟性を高めることで、つま先の引っかかりによる転倒リスクを下げることが出来ます。
① タオルを足先に掛けて引っ張る方法。
② 皆様も1度は行ったことがあるとは思いますが、立って行う方法です。
ストレッチは20秒以上行うことが推奨されています。反動や勢いをつけると筋肉や腱を痛めてしまう可能性がありますので、ゆっくりと行うようにしましょう。
続いて、足指・足首の運動です。
メリット
足指を動かす複数の筋肉、足首を動かす「前脛骨筋」を鍛えることで、つま先を上げる力がつき、ふくらはぎのストレッチと同様につま先の引っ掛かりによる転倒リスクを下げることが出来ます。
③ 写真に示すように足指でグー・チョキ・パーをします。
④ 脛の前の筋肉を使い、つま先を上げます。
続いて、立ち上がりの運動です。
メリット
足の筋肉全体(特に「大殿筋」「大腿四頭筋」)を鍛えることができます。身体の土台となる筋肉ですので、鍛えることでふらつきによる転倒リスクを下げることが出来ます。
⑤ 椅子からの立ち座りです。上から膝を見たときに膝がつま先の真上にくるように意識します。膝が内側や外側に動揺しないように気をつけましょう。
続いて、かかと上げ・足上げの運動です。
メリット
⑥かかと上げにより「腓腹筋・ヒラメ筋」を鍛えることで、地面を蹴りだす力がつき、歩く際に前方への推進力が向上し、足が振り出しやすくなり、引っかかりによる転倒リスクを下げるすることが出来ます。
⑦横への足上げにより「中殿筋」を鍛えることで、側方へのふらつきによる転倒リスクを下げることが出来ます。
⑥ 立った状態でかかとを上げます。壁や机等の支持物を持って行いましょう。
⑦ 足を横に上げます。身体が横に倒れないように骨盤から上は真っ直ぐ保つように心がけて行いましょう。
あなたの転倒危険度チェック表にて、2項目以上当てはまった方は、以上7つの運動を可能な範囲で実施してみてください。
最後に、転倒の内的要因の中でお伝えした、認知機能に対する転倒予防方法について書きます。
認知機能に対する転倒予防方法
生活の中では、上の図で示すように「スーパーで献立を考えながら商品を探し歩く」「家の中で鍵やメガネを探し周ったり」「歩いている時などに急に声をかけられたり」等、「頭(脳)を使いながらからだを動かすこと」つまり、「2つ以上の課題(二重課題)を同時にこなすこと」で転倒のリスクが高くなると言われています。
何が言いたいのかいうと「身体機能(体力・筋力)が高いからといって転倒しないとは言えない」と言うことです。
認知機能(ここで言う注意力)が大きく影響するのです。
注意力の低下については加齢に伴って低下してくるものだと思ってください。
注意力を高める方法として、「二重課題を用いた運動」を行うことが推奨されています。
今回、「二重課題を用いた運動」を2つ紹介します。
① 手拍子やお題に答えながらの足踏み運動
図に示すように1.「1つの運動」→2.「手と足の2つの運動」→3.「頭を使いながらの運動」と難易度をあげて行って見てください。
② 歩きながらしりとりをする。
①、②共に2人以上で行うことで、楽しみながら身体機能・注意力を高めることが出来るかと思います。是非、行ってみてください。
また、どうしても転倒してしまうことが予測される方に関しては、「日頃からプロテクター・サポーターを装着する」ことをお勧めします。
記事、前半の「骨折しやすい4つの骨」で説明した、転倒しやすい方向によってプロテクターを使い分けて頂ければ良いかと思います。
プロテークターやサポーターはたくさんありますので、どれが良いのか分からなければお気軽に聞いてください。(プロテクター会社の回し者では御座いません)
最後に、「転ばない健康的な身体は幸せな人生の土台」となります
私と一緒に健康な身体を手に入れて幸せな人生にしましょう!!
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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健康・疾患について、具体的なリハビリ内容などお伝えできればと思います。
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