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「筋肉が硬い」ってどういうこと?正しい用語で伝えよう!
おはようございます!こんにちは!こんばんは!「副院長でセラピストの豆知識」へ、ようこそ!
筋肉の『硬さ』や『固さ』を表す言葉、実はたくさんあります。でも、それらの意味をしっかり理解していますか? セラピスト同士の会話や記録で、正しい言葉を使うことは、誤解を避けるためにとても重要です。そして、その状態に対する適切なアプローチを見つけるためにも、正しい理解が欠かせません。
今回はなんとなく使いがちな「筋肉が硬いですねー」という言葉をしっかり整理していきましょう。
1. 名称一覧
今回紹介する筋肉の硬さを表す用語を挙げていきます。
・筋緊張(Muscle Tension/Muscle Tone)
・凝り(stiffness)
・筋硬結(Muscle Knot)
・筋短縮(Muscle Shortening)
・筋攣縮(Muscle Spasm)
・筋強直(Rigidity)
・硬直(Rigidity)
・固縮(Rigidity)
2.各名称の説明
1.筋緊張(Muscle Tension/Muscle Tone)
筋肉には正常な状態で、体を支えたり動く準備をするために一定の範囲で筋肉の緊張状態を保っています。図のように正常より緊張が高い場合に筋緊張が亢進、高いなど表します。運動器系の疾患のみでなく神経系の疾患による症状も「筋緊張」を使って表現できます。
Ex1)力を発揮しようとすると「力コブ」ができますが、これは筋肉が収縮し緊張が高まっている状態なので異常ではないです。
Ex2)脊柱の円背姿勢(猫背)によって背筋群の緊張が高まっているのは、姿勢が原因の亢進状態と言えるでしょう。
Ex3)神経の断裂で筋肉に指令が届かなくなった状態による弛緩は、正常の筋緊張より低下しており異常となります。
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2.凝り(stiffness)
使い方が難しい言葉の一つです。物理学的な側面では「剛性」という意味も含んだ表現になります。臨床ではStiffnessがある状態の筋肉というのは凝った状態の筋肉のイメージです。
Ex1)持続的に使用して筋緊張が高くなった状態
Ex2)頑張って運動した後に筋肉が張っている状態
3.筋硬結(Muscle Knot)
筋肉の「しこり」の部分をさします。筋緊張が高いことにより発生していることもありますが、筋損傷後の瘢痕状態や、筋内血流障害による酸欠による筋の微細損傷による腫れ状態も硬結と表現することもある印象です。Stiffnessの凝りよりは、単一の筋肉内に発生しているスポットが決まっている状態を指すかと思います。
4.筋短縮(Muscle Shortening)
筋肉が収縮すると筋節間の距離が縮まりますのでこの状態自体も筋が短縮している状態といえます。これは正常でも起こる反応ですが、異常な短縮状態となってしまうと、筋緊張に関わらず筋肉を伸張しようとしても伸びなくなってしまいます。
Ex1)関節固定などの筋肉の不動期間に、筋節が減少し筋肉自体が短くなってしまう状態
Ex2)同じく不動により筋線維内に架橋結合したコラーゲン線維が増え、伸びたくても線維が十分に伸展しない状態
5.筋攣縮(Muscle Spasm)
筋緊張が高く、痙攣した状態が続いている状態を指します。これは脊髄反射としての緊張であり自分の意思に関わらず筋緊張が一定より高い状態が維持されます。持続収縮による筋内血管の虚血により筋が変性してくるため疼痛が発生したり、筋硬結が生じることがあります。
6.筋強直(Rigidity)
筋強直性ジストロフィー(遺伝子異常による筋疾患)による「こわばり」の状態をいいます。関節を反復して動かすには筋肉の収縮と弛緩を繰り返し行う切り替えが必要になりますが、筋強直では筋の収縮による興奮状態が持続してしまい、弛緩するまでに時間がかかります。
Ex1)手でグー、パーを連続しようとしてもグーの後なかなかパーに戻せない状態
💡豆知識💡〜強直(ankylosis)〜
強直という言葉だけでは、筋肉は含まない用語になります。こちらは、関節内の骨、軟骨、関節包などの関節構成体に原因があって、強い力を加えても関節はほとんど動きません。関節を動かさなければ痛みは無いですが、無理やり動かそうとすると痛みを生じます。
7.硬直(Rigidity)
神経的な要因などにより病的に筋緊張が亢進した状態
・除皮質硬直や脳幹硬直:筋緊張の抑制系の制御ができなくなり筋緊張が亢進した状態
・項部硬直:くも膜下出血や髄膜炎に起因する項部を含む背面の筋緊張が亢進した状態
💡豆知識💡〜死後硬直〜
死後硬直という言葉もありますが、上記とは異なり亡くなった後数時間から徐々に発生し、数日間続く現象です。ATP枯渇により進行し筋原繊維が強く結合していて硬くなった状態を指します。
8.固縮(Rigidity)
神経的な要因(パーキンソン病など)により筋肉が一定の固さを持ち、動きに抵抗が生じる状態。動かす際の硬さ。また筋肉が持続的に収縮して固くなっている状態。
・折りたたみナイフ現象:他動的に関節を動かそうとしたときに、筋緊張亢進により最初は強い抵抗があるが徐々に抵抗が弱くなっていく現象
・鉛管様固縮:他動的に関節を動かそうとしたときに全可動域において筋緊張亢進による一定の抵抗がある現象
・歯車様固縮:他動的に関節を動かそうとしたときにカクカクと歯車のように抵抗がある状態。
※Rigidityという言葉には日本語で言う「硬直,強剛,固縮,強直」が含まれています。
最後に
改めて確認してみるといかがでしょうか?現状でまだ不明確や統一されていない表現もあり、伝える難しさを感じるばかりです。もう少し各状態の詳細がお伝えしたり、それぞれの対処方法などお伝えできればと思います。今回は個人的見解も含む中での羅列で終わり申し訳ないですが、コミュニケーションのヒントになれば幸いです。
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