気分障害(mood disorder)
○気分障害
持続的な気分の変調によって困難が生じる障害。
クレペリン (Kraepelin. E.)が1899年に早発性痴呆と躁うつ病の二大精神病概念を確立した。
男女比1:2、生涯罹患率10%、自殺の危険があるが、治療可能性は高い。
気分エピソード(mood episodes)
○大うつ病エピソード(major depressive episode)
精神症状:
抑うつ気分、興味・関心の減退、知的活動能力の減退、自責感・無価値感、 自殺念慮・自殺企図(約10%)
身体症状:
不眠・睡眠過多、食欲・体重の変動、疲労感
抑うつ気分は朝に最も強くなり、夕方にかけてやや回復していく(日内変動気分)。
休養、薬物療法、認知行動療法が主。
○躁病エピソード(manic episode)
精神症状:
過活動、誇大妄想、話がむやみに脇道にそれる(観念奔走)、 些細なことで怒ったり興奮したりする(易刺激性)、多弁・多動
身体症状:
睡眠欲求の減少、食欲や性欲の増大、体重減少
病識がないことが多い。
薬物による鎮静が主。
原因として脆弱性ストレスモデルや、神経伝達物質の分泌異常と考えるモノアミン仮説(monoamine hypothesis)など考えられている。
○気分障害になりやすい病前性格
1 クレッチマー(Kretschmer, E.)の循環気質(cyclothymic disposition)
肥満型の体型で社交的、陽気、活発。
2 下田光造の執着気質(immodithymia)
律儀で責任感が強く、物事にのめり込んでしまう堅物。
3 テレンバッハのメランコリー親和型性格(melancholic type)
仕事面では几帳面で責任感が強く、対人関係では他人のために尽くし、 秩序と道徳を重んじる。
うつ病患者に旅行といった気晴らしは有効ではなく、家での静養が一番よい。
自殺未遂は自殺既遂を予測する最大危険因子。
支持的な対応を心がけ、励ましは禁物とされている。
患者にYesと答えさせるレスポンスを心がける。
電気けいれん法(electroconvulsive therapy)を受けた患者の86%にうつ症状の改善が見られた。
○仮面うつ病(masked depression)
身体症状(疲労感、睡眠障害、頭痛、便秘、肩こり)は現れているが、抑つつ気分は自覚していない状態。
一見するとうつ病とはわからない。
身体症状のみを訴えるため内科を受診することが多く、見落とされる可能性もある。