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レジリエンス-心の免疫力-とは何か

レジリエンスとは

 レジリエンスは、多義的で多様な意味があります。その中でも、レジリエンスの父と呼ばれるノーマン・ガルムジーは、次のように説明しました。

厳しい状況や試練、脅威があるにもかかわらず、良好に適応するプロセスであり、能力・可能性または成果

 Garmesy(1993)

 逆境やストレスフルな状況に対して柔軟に応じるときのプロセスであり、発揮される能力であり、柔軟に応じた後の状態でもあると理解できるかと思います。近年、レジリエンスという言葉が使われる際は、スキルのように使われることが多いように思いますが、もっと奥深い概念だと言えそうです。

レジリエスの歴史

 レジリエンスは、もともと、トラウマ研究から発展したものでした。戦争・虐待・災害・犯罪被害者などによりトラウマ(心的外傷)を負うと、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症するなどして、それまで通りの日常生活を送ることができなくなる人がいます。その一方で、数少ないながら、比較的症状が軽い人や、症状があってもその人らしい人生を送る人がいたのです。そういった、脅威にさらされる体験をしても、柔軟に変化し、前進できた人の背景要因を探る研究から始まりました。現在は、レジリエンスの概念は汎用され、日常のストレスフルな状況からの回復力を向上する要素・方法・プロセスの研究が進められています。

ストレスとレジリエンス

ソラハルウェビナー 2

 ストレスの知見を抜きにして、レジリエンスは語れません。もともとストレスは、物体に圧力を加えて歪んだ状態のことを指す物理学の用語でした。負荷がかかる出来事があり、精神的な平穏が歪むような現象にかかわることの総称と言えそうです。その状態から回復していくことをレジリエンスを呼びます。また、レジリエンスを発揮する人のことを「曲げられて形が変わったとしても折れてしまうことはなくもとの形に戻り、さらに成長していく若い小枝のようなしなやかさを持った人」と、ハーバード大学の心理学者ヴェイラントは論文で述べています。もとに戻るだけではなく、成長へのバネにする力を併せ持っていると言えそうです。プシケでは、特に回復力や抵抗力に注目し、イメージしやすいよう、心の免疫力とよく表現しています。

レジリエンスを構成するもの

二次元レジリエンスモデル

 レジリエンスを構成する要素については、所説ありますが、資質的なもの(性格など)と獲得的なもの(技術など)があるとの見解が多いようです。プシケでは、二次元レジリエンス(平野,2010)の理論を参考に、プログラムづくりをしています。プシケでは、ストレス対処法を実践的に学ぶもの、自分の内省を促すもの、相互交流しながらコミュニケーション力を向上するものなど、多様なプログラムを用意しています。また、プログラム参加者の人柄を理解・分析し、ワークショップ中はそれぞれの良さが発揮できるように、講師がフォローや声掛けを行っています。

レジリエンスを培うかかわり方

 レジリエンスには、資質的(性格など)・獲得的(技術など)側面がありますが、どちらも独力で得られるのではなく、人とのかかわりのなかで培われていきます。レジリエンス概念を重視したサポート・ケアの方法についての研究をまとめると、次のようなことが共通しているように思います。

  • 思いやりのあるサポーティブな関係を築く

  • 強みに注目する

  • 感情を受け止められるように促す

  • 問題を通した自己発見を促す

  • 視野を広げる手伝いをする

  • 人助けの機会を設ける

  • コミュニティに所属したり社会的資源を活用する

 プシケでは、参加者の強みに注目してサポートを工夫しています。科学的・実証的な心理療法に基づいたプログラムや多様な情報提供により、考え方の視野が広がるよう取り組んでいます。また、プシケでは、交流しながら実践的に参加する同世代のグループワークを大切にしています。安心感ある雰囲気のなかで、参加者それぞれのよいところを活かして助け合いながら取り組めるワークを用意しています。

プシケのレジリエンスワークショップ

ソラハルウェビナー
※心の健康状態はグラデーションで、行きつ戻りつします。支援方法と一対一対応ではありません。あくまで目安としてご覧ください。

 プシケで、レジリエンスを育むプログラムを集団で行う場合、精神的な危機状態に陥る予防から成長を促し精神的健康の維持・促進までが見込めるものと考えています。
 プシケのnoteでは、プログラム内容を紹介していますので、よければご覧ください。

講話・講演も受け付けてます

 自社開催のほか、教育機関やメンタルクリニックのデイケアとしてプログラム提供を行っています。興味のある方はお気軽にお問合せください。また、単発の学校講話等もお受けしています。お問合せは、いずれもこちらのメールアドレス宛にお寄せください。

【出典】

平野真理(2010年)「レジリエンスの資質的要因・獲得的要因の分類の試み ―二次元レジリエンス要因尺度(BRS)の作成.日本パーソナリティ心理学会パーソナリティ研究第19巻第2号
American Psychological Association. (2014). The Road to Resilience
白川美也子(2019)レジリエンス概念からみたトラウマケア.こころの科学208号
スティーブン・Mサウスウィック、デニス・S・チャー二―(2021)(森下愛訳、西大輔、森下博文監訳)
『レジリエンスー人生の危機を乗り越えるための科学と10の処方箋』岩波学術出版社
セルジュ・ティスロン(2016)(阿部又一郎訳)『レジリエンスーこころの回復とはなにか』文庫クセジュ
広島大学心理学研究第4号(2004年)「大学生の精神的回復力とコーピング方略・落ち込みの検討」
及川恵・坂本真士(2008年)「大学生の精神的不適応に対する予防的アプローチ:授業の場を活用した抑うつの一次予防プログラムの改訂と効果の検討 」
及川恵・坂本真士教(2007)「女子大学生 を対象 とした抑 うつ予防のための心理教育プログラムの検討 ―抑うつ対処の自己効力感の変容を目指した認知行動的介入―」.教育心理学研究
こころの耳 「ストレスとは」https://kokoro.mhlw.go.jp/nowhow/nh001/

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