70歳、現役パティシエ。明日も友だちに会いに行く。 / はみだしプショップ!02 原さんの場合
老舗の喫茶店で。お気に入りの古本屋で。深夜の音楽喫茶で。
毎日どこかしらのお店にひょっこり現れて、楽しくおしゃべりしていたかと思うと、いつのまにか居なくなっている。
陽気な愛されキャラなのに、どこか飄々とした雰囲気のある不思議なひと。
それが、「原さん」です。御年70歳。
絵の個展を開いたり、ギターの弾き語りでライブ出演したりと多才な原さんですが、本職は現役パティシエ。広島市内のフランス菓子店に勤めています。
ーコロナの流行で、お仕事への影響はありましたか?
それが、なかったんですよねぇ。お店は毎日営業してたし。マスクやアルコール消毒は、仕事柄、元々やってるでしょう。だから変わらなかったですよ。
ただやっぱり、オーナーシェフから「人ごみにはなるべく行かないように」とね、言われたりはしました。仕事中にゴホンと咳でもしようものならね、明日から来なくていいですよと言われそうな、厳しい雰囲気はありましたねぇ。
ー生活は変わらなかったですか?
原さんの行きつけのお店が閉まってたでしょう?
それよ、それ!(笑) コロナの影響っていったら、それですよ。行きつけのお店が全部閉まっててね。私はいつも100%外食だから。困った困った。仕事が終わっても、楽しみがなくてね。
ーごはんはどうしてたんですか?
ええと…どうしてたかな…(しばらく考え込む)
多分…弁当とか買ってたと思う。仕事の後は…何してたかな、うーん…(またしばらく考え込む)
あ、そうそう、開いてる珈琲屋さんがあって、そこで長居して過ごしてたね。それぐらい。
やっぱりね、友だちに会えないのは寂しいですよ!友だちは大事よね。
一生つきあっていきたいと思える人がいっぱいいますから。年齢も性別も関係ないよ。僕が友だちと思ったら友だち。会うと元気になるよね。
最近描いた絵。テーマは「想像の世界のお茶会」。
原さんの世界では、お相撲さんやポットも一緒にテーブルを囲む。
ー自分が罹るんじゃないかって不安はなかったですか?
ないね(即答)! 全然ない。
健康体なんですよ、これはお父さんとお母さんに感謝だね。毎日自転車に乗ってるしね。仕事に行くのもね、片道40分くらいかかるけど。自転車が好きだからね。これで元気なのかもしれない。
あとは楽天的なこと。これ、長生きの秘訣かもしれないよ。人間だから悲観的になることもあるけどね、まあなんとかなるだろうって思うでしょ、それですよ。
ーもともとポジティブな性格だったんですか?
そうね、これでもまあ、いろいろありましたよ。
10年くらい前にお兄さんが亡くなってね。学生の頃から精神の病気があった人で、最期は自分が介護してね。2人暮らしでした。
お兄さんが死んだあと、何も残さなかったんだよね。会社とか土地とかそういうものは何もなかった。じゃあ何を残したんだろうって思ったときに、ああ、お兄さんは優しかったなぁと。優しさを残してくれたんですよ。
だから人には優しくせんといかんよ、と。優しさは甘さだけじゃなくてね。1人で生きれるようにサポートすることよね。
フォークソングが好きで、十八番は高田渡。
音楽喫茶ヲルガン座のギター部では部長を務める。
ーコロナの影響で世界が大きく変わったと思うんですが、
原さんはどんな風に感じてますか?
やっぱりね、解放しなくては。平和な気持ちを持つことね。目に見えないものっていうのは、あると思う。たとえば友だちを好きになる理由なんかも、科学的に証明できないでしょう。
だからねぇ、今こういう風になってるのは、みんなが人生を見つめ直すチャンスかもしれんね。生活は大変だけど、変わることは楽しみもあるでしょう。僕は今が青春よ。いい友だちに恵まれてね、最高!
ー最高!なお話、ありがとうございました。
掲載アイテム:デニムビッグトートバッグ
● 取材後記
「さよっこちゃん、これからもずっと友だちでいてくださいね。」
別れ際、原さんはこう言いました。
戦後まもなかった幼少期、たくさん旅をした青年期、そして家族の死を乗り越えてきた壮年期の、原さんを支えてくれたもの。
この先どんな風に世界が変わっても、原さんはきっと、毎日どこかのお店に現れるでしょう。大好きな、友人たちに会うために。
ちなみに、長くいい関係を続けるために大切なのは、「踏み込みすぎないこと」だそうですよ。
● はみだしプショップ!とは?
日々変わりゆくこれからの世界を ふにゃっ と楽しむためのお店 プショップ!の店主さよっこが、「気になるあの人」にインタビューしてお届けするシリーズです。
プショップ!
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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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