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グラディエーター(2000)
ローマ帝国の栄光の陰にある邪悪な歴史を
リドリー・スコットが壮大なスケールと叙情的な映像で描く
名匠リドリー・スコット監督が今や風光明媚な観光地であるローマの血塗られた歴史の一端を浮き彫りにし、監督自身念願の米国アカデミー賞作品賞を獲得するなど、高い評価を受けた歴史アクション大作です。
『ベン・ハー』や『スパルタカス』など、かつては大スペクタクル活劇として巨大資金を投じて描かれた古代ローマ史劇が、ミレニアム(2000年)を迎えた記念すべき年に登場しました。
とはいえ、当初、約1800年前のローマ皇帝の座をめぐる愛憎劇はリドリー自身、時代遅れ過ぎる題材と難色を示したそうです。
しかし、まるで歴史絵巻を見ているような大ローマ帝国軍の荘厳な戦いや、人間の欲望が渦巻く闘技場での凄惨な戦いなど、最新テクノロジーを駆使した臨場感と迫真性に満ちた映像は、リドリーならではの映像センスに溢れ、観る者を圧倒します。
【ストーリー】
時は西暦180年、ローマ帝国の将軍マキシマス(ラッセル・クロウ)は剣の腕前と人望の厚さから次期皇帝の座を託されていました。しかし、それを知った皇帝の実の息子コモドゥス(ホアキン・フェニックス)の策略により、マキシマスの運命は狂わされます。
言われ無き罪で捕らえられたマキシマスは処刑寸前で逃げ出しますが、やっとの思いでたどり着いた我が家で待っていたのはコモドゥスの命令によって殺された妻子の姿でした。
その後、生きる望みを失ったマキシマスは奴隷商人の一団に拾われ、剣闘士として売られてしまいます。
もはやかつての名将の姿はそこにはなく、ただ無意味に殺戮を繰り返す見せ物となったマキシマス。だが、ローマの巨大コロシアムの一席に皇帝として君臨するコモドゥスの姿を見つけたマキシマスは皇帝への復讐心を燃え上がらせ、圧倒的な力で民衆を魅了するグラディエーターにのし上がります。
時の最高権力者ローマ皇帝に忠誠を誓い、大ローマ帝国を築き上げるために戦いに明け暮れた者は偉大な将軍や兵士たちばかりではありませんでした。奴隷や敵国の捕虜、そしてわざわざ養成所で訓練を受けたグラディエーター(剣闘士)たちが支配者や群衆の欲求を満たす娯楽として、巨大コロシアムで命を賭けた壮絶な戦いを行っていました。
娯楽としての殺戮ほど残酷なものはありません。本作では、ローマ帝国の栄光の陰にあるこの邪悪な史実を、皇帝の座を巡る権力争いとからませ、壮大なスケールで描いています。
しかし、本作は決して歴史的な戦いを鼓舞したヒーローものでも、ローマ帝国建国云々を謳ったものでもありません。“闘い”という運命に翻弄された男たちの思いが胸に熱く迫る人間ドラマです。
リドリーは後に、『ブレードランナー』以来のインスピレーションを得た力作と語ったようです。
グラディエーターと呼ばれる剣闘士として復活したマキシマスは圧倒的な力で大衆を味方につけ、ついにコモドスとの一騎打ちの戦いをします。
剣と剣、生身の体をぶつけ合う接近戦が最大の見どころですが、繁栄と興亡に彩られたこの時代特有の危うい美しさを投影した絵画的な世界観にも魅了されます。
主人公のローマ帝国繁栄の陰で人生を狂わされてしまうマキシマス将軍に扮するのは、『L.Aコンフィデンシャル』で一躍脚光を浴びたラッセル・クロウ。本作ではかなり体を絞り込み逞しいグラディエーターになりきり、激しくも華麗な剣闘に挑戦しています。
対する仇役の新ローマ皇帝コモドゥスには、『Uターン』『8mm』などで存在感を残し、当時、若手演技派と呼ばれていたホアキン・フェニックスが扮しています。
剣や盾、槍を使った接近戦は、ファイトシーンの巨匠、ニコラス・パウエル(『ブレイブハート』)が俳優たちのアクションを振りつけました。
また、今は朽ち果てたコロッセオはあまりに巨大なため、1層部分のみが実際に製作され、残りの2、3層部分は視覚効果技術(CGI)によって加えられ、現代によみがえりました。
ほかにも皇帝の宮殿や、公会場、ローマの市場など、セットの奥行きや古代ローマの遠景を作り出すために、製作時は最先端のCGIが効果的に使われています。