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ジョニー・イングリッシュ(2003)

打倒『Mr.ビーン』! ドジなスパイに扮した
ローワン・アトキンソンの、とぼけた笑いに癒しあり

1990年代、シュールなブリティッシュコメディ『Mr.ビーン』でタイトルロールを演じ、世界的な人気者となったローワン・アトキンソンが、2003年、久々に古巣のブリティッシュコメディに主演し、新たなコメディキャラクターの創造にチャレンジしました。

その名は「ジョニー・イングリッシュ」。マジメな顔して大ボケをかます、アトキンソンの特異なキャラクター性と非凡なコメディセンスを存分に生かしたスパイコメディです。

【ストーリー】
スーパースパイに憧れるジョニー(ローワン・アトキンソン)はジェームズ・ボンドが所属するMI-6ならぬMI-7で内勤をしている英国諜報部員。彼のドジが原因で、MI-7のエージェントが全員死亡してしまい、唯一残されたジョニーに重要なミッションが回ってきます。
念願のスパイらしき仕事にジョニーは自信もやる気も満々でしたが、案の定、警備にあった英国王室の戴冠用の宝玉が何者かに盗まれてしまいます。

何気なく触ったペン型の麻酔銃で人を撃ってしまうとか、敵の高層ビルにまんまと忍び込んだと思ったら隣のビルだったとか、やること為すこと裏目に出るジョニーのドジは当たり前過ぎるオチで、ちょっと物足りなく思えます。

でも、これらは軽いジャブに過ぎず、周囲の人々が唖然とするなか、無茶苦茶な言い訳や見え透いた小芝居などで強引にその場を取り繕うジョニーの様子に、アトキンソンならではのアナーキーなユーモアがちりばめられています。

一心不乱にギャグをやり抜くアトキンソンを、渋くアシストするのはジョニーの部下のボフを演じた人気コメディアンのベン・ミラー。

失態を演じたジョニーに向けるボフのクールでシビアなツッコミが、実は一番笑いのツボにはまります。

また、宝玉泥棒パスカルを演じたジョン・マルコヴィッチが見事なフランス訛りの英語を披露して嫌味なフランス人になり切りっているのも愉快です!

下ネタ、幼稚なコントなど、あらゆるユーモアの要素をてんこ盛りにして、じわじわと笑いのツボを刺激してくる本作は、明るいノリや勢いだけで押し切ったハリウッド製コメディ『オースティン・パワーズ』シリーズ('97年~)とは対極にあると言えるでしょう。

監督はユニークな趣向のドラマ『スライディング・ドア』(’97年)で監督デビューしたピーター・ハウイット。

『ワールド・イズ・ノット・イナフ』(’99年)、シリーズ40周年記念作となった『ダイ・アナザー・デイ』(’02年)といった実際に007シリーズを手がけたシナリオライター、ニール・パーヴィス&ロバート・ウェイドが脚本を手掛けているというのもシャレがきいています

どうしても傑作コメディ『Mr.ビーン』と比較されるのは免れず、世間の批評的には辛口でした。

とはいえ、続編2本(『ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬』(’11年)、2018年に『ジョニー・イングリッシュ アナログの逆襲』(’18年))が製作されており、マニアックな支持を受けているのかもしれません。

何よりアトキンソンの、のほほんとした、とぼけた笑いは殺伐とした今の時代に観ると、本当に微笑ましくて、癒されます。

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