フロム・ジ・アース〔人類、月に立つ〕(1998)
月に行くーー。おそらく人類が生まれた頃から見られてきただろう夢物語を現実に変えたのは、やはりフロンティア精神に溢れたアメリカでした。
東西冷戦が雪解けを始めた1961年、ロシアが世界で初めて有人宇宙飛行に成功し、そのニュースを聞いたジョン・F・ケネディ大統領は、独断で1960年代中に人類月着陸を成功させることを宣言。月への航海、それは人類が持ち続けた夢のための壮大な、そして政治的野望以外の何者でもない危険なプロジェクトでした。
21世紀を目前にした1998年、月面着陸をめざしたNASAのアポロ宇宙計画の軌跡をたどるドキュメンタリー・ドラマ『フロム・ジ・アース』が製作されました。
ハリウッドの大作映画としても十分に通用する題材を、あえて全米HBOの12話のTVシリーズとして製作したのは、アメリカが達成した偉業を再び誇示するためではありません。
本シリーズでは、挫折を重ねた末に勝ち取った栄光だったアポロ計画の全貌を丹念にひもといていきます。このTVプロジェクトは、当時、宇宙開発技術と映像製作技術の両分野で先端をいっていたアメリカの使命といってもいいのでしょう。
本シリーズの実現に最も尽力したのが、『アポロ13』(95年)で悲運の宇宙飛行士ジム・ラベルを演じたトム・ハンクス。全12話の製作総指揮とナレーション、一部のエピソードでは監督、脚本、出演も担当しています。
そのほかのスタッフ陣も豪華な顔触れです。製作に『アポロ13』のロン・ハワード、監督陣に『フェノミナン』のジョン・タートルトーブ、『コンゴ』のフランク・マーシャルほか10人が、脚本には『スピード』のグラハム・ヨストほか12人が参加しています。
そしてTVシリーズとしては破格の72億円を投入したHBOと当時の貴重な記録フィルムを提供したNASAの全面協力のもと、最新CG技術を駆使して生み出された迫真の映像と人間ドラマは賞賛を浴び、1998年度エミー、ゴールデン・グローブ両賞のテレビ部門作品賞を受賞しました。
さまざまな媒体で、幾度となく描かれたてきたアポロ計画のエピソードですが、人類が成し得た奇跡のような出来事は感動的で、見応えがあります。
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