アビエイター(2004)
飛行機と映画にかけた実業家
ハワード・ヒューズの栄光と転落の半生
巨万の富、世界的な地位と名声を手に入れた成功者の中には、どうしてこうも常人の想像を超えた波乱の人生を送ってしまう人がいるでしょうか?
ハワード・ヒューズは1930 ~40年代にかけて、米国の航空業界を荒業で牛耳り、ハリウッド映画界を我がもの顔で席巻した実業家です。
しかし、航空技術の発展に貢献し、数々のハリウッド女優と恋に落ちるなど、公私ともに華やかな生活を送りながらも、極度の強迫神経症のために落ちぶれ、晩年は廃人同然の隠遁生活を過ごした奇人としても有名なのだそうです。
そんなエキセントリックなお騒がせ男の栄光と転落の半生を、マーティン・スコセッシ監督が映画化しました。
【ストーリー】
冒頭、母親にばい菌感染の恐怖を刷り込まれるヒューズの幼少期を意味ありげに描いた後、舞台は多くの単葉機が停泊する砂漠へ。そこはハリウッド映画『地獄の天使』の撮影現場。製作兼監督を務める21歳のヒューズは父の遺産を元手に、常識はずれの撮影を強気の姿勢で進めていきます。
ヒューズを演じるのは、30代になったばかりのレオナルド・ディカプリオ。この撮影エピソードでのディカプリオは童顔と細身の体がネックになって、型破りなヒューズを演じることへの心もとなさが感じられました。
そんなディカプリオが輝き出すのは、ヒューズがハリウッド女優キャサリン・ヘップバーンと恋に落ちてから。キャサリン役のケイト・ブランシェットは本作でアカデミー賞を始め数々の助演女優賞を獲得しましたが、ハリウッド女優らしい気高さと気の強さの中に、孤独と焦りを垣間見せるキャサリンは実に魅力的です。
魂が乗り移ったような演技とはまさにこのことでしょう! ケイトについていくうちにディカプリオもヒューズをものにしていきます。
キャサリンと別れてからヒューズの潔癖症が悪化し、極度の強迫観念にさいなまれます。カリスマ的な実業家の堕落した原因が潔癖症とは、少し情けない気もしますが、この滑稽な事実をディカプリオは鬼気迫る熱演で見ごたえあるものにしました。
『アビエイター』とは飛行家の意味。ハリウッド女優との恋愛遍歴、奇行の発症ではなく、新型飛行機の開発にかけた飛行家としての姿を描きたかったのだということが最後になって分かります。
マーティン・スコセッシ監督はヒューズの豪快な人生を完璧に表わすように、前半から息つく間もなく波乱に富んだ数々のエピソードを見せてくれるものの、ついに息切れしたのかラストは唐突です。
まだまだ観たいヒューズの人生……。ディカプリオも、本作では期待されたオスカーを逃してしまったし、映画館で本作を観たときは、オスカーは『アビエイター2』で狙うつもりなのか? なんて思ったほどでした。(もちろん、未だ『2』なんて作られてませんが💦)
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