運動は急性呼吸器感染リスクを低下させる

運動は薬である、その薬効エビデンスに急性呼吸器感染も追加すべき・・・というご託宣

Nieman, David C., Camila A. Sakaguchi. 「Physical activity lowers the risk for acute respiratory infections: Time for recognition」. Journal of Sport and Health Science 11, no. 6 (2022年): 648–55. https://doi.org/10.1016/j.jshs.2022.08.002 .

-風邪、肺炎、インフルエンザ、コロナウイルス感染症2019(COVID-19)、気管支炎などの急性呼吸器感染症(ARI)は、世界的な疾病負担と死亡率の主な原因となっている。

-ARIのリスクは、適切なレベルの適度で活発な身体活動(MVPA)を行っているコホートでは低い。

-COVID-19のパンデミックでは、科学的な精査が強化されたため、この関連性を裏付ける証拠が強化された。

-様々なARI転帰のリスク低減におけるMVPAの健康関連利益を、科学的コンセンサスグループが認識する時が来た。

要約

運動不足は、心血管疾患、がん、糖尿病などの慢性疾患の危険因子として確立されている。運動不足は、急性呼吸器感染症(ARI)の危険因子とみなされるべきであるという認識が高まっている。風邪、インフルエンザ、肺炎、コロナウイルス疾患2019(COVID-19)などのARIは、地球上で最も蔓延している疾患のひとつであり、広範な罹患率と死亡率を引き起こしている。
ARIと運動不足との関連を支持する証拠は、COVID-19の大流行の間、科学的な精査が強化されたために強化された。大規模な研究では、他の危険因子を調整した後でも、身体活動量および/または体力が低いコホートでは重症COVID-19の転帰リスクが高いことが一貫して報告されている。
身体活動の活発な集団における重症COVID-19やその他のARIのリスク低下は、主要な免疫細胞の監視強化や慢性炎症の減少など、運動による免疫保護作用に起因すると考えられている。
アメリカ人のための身体活動ガイドラインを提出したグループを含む科学的コンセンサスグループは、この分野の研究にまだ敬意を払っていない。
It is time to add “reduced risk for ARIs” to the “Exercise is Medicine” list of physical activity-related health benefits.:今こそ、「運動は薬である」という身体活動に関連した健康効果のリストに、「ARIのリスク低減」を加えるべき時である



1.1. Total infectious disease and respiratory disease mortality rates and MVPA
1.2. The common cold and MVPA
1.3. Influenza, pneumonia, and MVPA

図1. MVPAによる慢性疾患と感染症のリスク低減の比較。有酸素運動と筋力強化の両方を行う成人(活動が不十分な成人)において、インフルエンザ/肺炎の死亡リスク低減率は54%であったのに対し、心血管疾患は50%、がんは40%、糖尿病は53%、全死因死亡率は40%であった12。


1.4. COVID-19 and MVPA


2. CRFとCOVID-19死亡リスクの関係。CRFを評価したUKBB高齢者2690人のうち、体力が中等度(57%減少)および高度(63%減少)の人は、CRFが低い人に比べてCOVID-19による死亡リスクが有意に低かった51。しかし、COVID-19陽性とCRFとの関連は認められなかった。*p < 0.05. COVID-19=コロナウイルス疾患2019、CRF=心肺体力、NS=有意ではない、UKBB=United Kingdom Biobank。


図3. MVPAの状態によるCOVID-19の重症転帰のリスク。南アフリカでCOVID-19が確認された成人患者65,361人のレトロスペクティブ観察コホートから得られたこれらのデータから、MVPAガイドラインを満たすことは、身体活動レベルが低い人に比べて、COVID-19による入院(RR=0.66)、ICU入室(RR=0.59)、死亡(RR=0.58)の割合が低いことと関連していることが示された59。COVID-19=コロナウイルス疾患2019、ICU=集中治療室、MVPA=中等度から精力的な身体活動、PA=身体活動、RR=相対リスク。


1.4.1. MVPA: One spoke in the COVID-19 prevention wheel

4は、痩せ型、健康な人、活動的な人では、太りすぎ/肥満、健康でない人、活動的でない人の典型的な反応と比較して、ウイルス量の反応が低いことを示す図である。COVID-19=コロナウイルス疾患2019;SARS-CoV-2=重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2。


図5. MVPAとBMIレベルによるCOVID-19死亡率のオッズ比。このUKBB研究による解析では、BMIが正常な高活動者(参照群、オッズ比=1)と肥満の低活動者との間で、COVID-19死亡率のオッズに2.85倍の差があることが示された54。


2. MVPA reduces the risk for ARIs: Inclusion as a health-related benefit


図6. ARIリスク(主に死亡率)とMVPAの関係をまとめたグラフ。ARIs=急性呼吸器感染症、COVID-19=コロナウイルス疾患2019、MVPA=中等度から強度の身体活動。

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