初歩からのフォトグラメトリ~カメラを複数台使ってストロボ撮影する方法~【写真からゲームで使える3Dキャラを作ってみよう! vol.5】
■ターンテーブルでの人物フォトグラメトリに再挑戦
こんにちは、茶里です。フォトグラメトリを用いて3Dキャラクターを作成する企画の第5弾です。予定では、モデルのクリーンナップ方法を説明したり、とうとうゲーム用のキャラにする準備を始める予定だったのですが……。
先日サイバーエージェントさんが、フォトグラメトリを使用して著名人のデジタルツインを作成するサービスを発表したんですよね。
実は、更新は長い事滞っていたのですが(不定期ですみません……)、下記の第3弾記事で、多くの反省点を抱えたのち、
色々と試行錯誤を重ねた結果、ターンテーブルを使った人物のフォトグラメトリが、より綺麗に、安定して作成できるようになってきました。
「いまならこの『デジタルツインレーベル』に肉薄できる部分もあるのでは!!」と、思いまして、最新の成果をご紹介させていただきます。
■まずは完成した3Dモデルのご紹介
さて、早速ですが今回作成した3Dモデルをご覧ください。この記事では、これらのモデルの作成方法(まずは頭部から)をご紹介します。
2度にわけて撮影し、2度目は1回目の反省を踏まえて、より精度を高めた(つもり)です。
■■■1st TRY■■■
〇Align後の点群
〇点群をメッシュ化
〇テクスチャを貼ったあと(※別途クリーンアップもしました)
【モデル紹介】
Tommyさん (Instagram: @toastie_insta )
メンズファッション、スポーツモデルとしてご活躍のTommyさんは、身長186cmの細マッチョ。ベストボディジャパンに向けて鍛えられているとのことで、素晴らしい仕上がりでした……!気になった方はぜひinstagramをチェック!
■■■2nd TRY■■■
〇Align後の点群
〇点群をメッシュ化
〇テクスチャを貼ったあと(※別途クリーンアップもしました)
【モデル紹介】
黒木沙耶さん (Instagram: @syk_ksy13 )
ファッションモデルとしてご活躍で、ウェディングコンシェルジュサービス "Bridal Essence" のイメージガールを務めていらっしゃいます!こちらも気になった方は、ぜひinstagramをチェックしてみてください。
■前回から改善した点は、ほぼ写真の撮影方法だけ
いかがでしょうか?これらのモデルは2つとも、基本的には前回ご紹介した方法で作成したものですが、点群やメッシュを見るだけでも、ずいぶんと精度が上がっているのがお分かりいただけると思います。
☝参考までに、こちらが前回作成したモデルです。
じつはReality Captureに取り込んだあとの工程は、第4弾でご紹介したものと殆ど変わらないのですが(いずれご紹介しようと思っている、クリーンアップを施してはいますが)一番大きいのは、写真の撮影方法に色々と手を加えたことです。
なかでも「カメラを3台同時に使って、同時にシャッターを切るようにストロボ撮影する方法」は、なかなか発見するのに苦労したので、同じことをしようとしている方がいましたら、参考になるかと思います!使用した機材なども詳しく説明させていただいております!
■改善点1:ターンテーブルを変えた
前回、ターンテーブルの動作が耐荷重の問題で不安定だったので、今回は耐荷重100Kgで指定の角度だけ回せるという、この便利なターンテーブルを友人のご厚意で貸していただきました。
レビューも少なく、日本語説明もアヤシイ海外製品なので、購入にはかなり勇気がいりますが、一応、今回の撮影で、スペック通りの活躍が確認できました…笑
リンク先でも確認できますが、たとえばリモコンについている「1/48」ボタンを押すと、360÷48 度(≒7.5度)だけ回転したのちに、ピタリと停止してくれます。
これにより、安定してすべての角度から被写体が撮影できるようになりました。
耐荷重が100kgもありますので、撮影時はこのように椅子の上にすわって、モデルさんも、あまり身体を動かさずに撮影ができました。
※ちなみに、いまのところ大丈夫ですが、やはり1点に重心をかけて立つと、ミシっと音がして危険を感じます……^^; 気を付けて使いましょう。
■改善点2:同じカメラを3台同時に使って撮影した
人物のフォトグラメトリで一番ネックなのはやはり被写体が少しずつ動いてしまうことです。そこで、少しでも短い時間で撮影を終えるため、今回は上中下のアングルに1台ずつ、合計3台のカメラをを使って、同時にストロボ撮影する方法を考えました。
3アングルで同時にシャッターが切れれば、フォトグラメトリの精度もきっと上がるだろう、(※注)撮影時間も大幅に短縮できるので便利だろう、という大いなる期待のもと、なかなか大がかりな方法で、なんとかかんとか実現させました。以下、その方法を記します。
※注
ここまで説明しておいてアレなのですが、その後の調べで、モデルさんがジッとしていられる方であれば、カメラ1台でも結果は激変しない印象でした(回転台の変更が、おそらく今回最大の改善点です)。お試しになる場合は、まず1周目は上の角度から、2周目は真ん中から、3周目は下から……という形で回転台を3周させる方法でも、十分な結果が得られると思います。
1台でやってみて満足できればそれが一番安上がりなわけですから、まずは1台で試すのを強くオススメします。自分はたまたま上手くいきましたが、ストロボとの相性もあると思われ(数十枚に1回くらい、1台だけ同期しない、などの不具合もありました)、まだまだ未完成なテクニックとなっています。
STEP1:同じカメラを3台用意する
これからご紹介する方法でシャッターを同時に切るには、結局同じカメラを複数台そろえる必要がありました(違う機種間で試してもみたのですが、うまく同期しませんでした)。
今回の撮影では、友人の助けを得たり、レンタルするなどして、CanonのEOS R5を3台揃えました。
※たまたま高級機になってしまいましたが、別にある程度画素数のある最近の一眼レフなら、結果が劇変することはないかと思います(試していないので保証はできませんが)。
レンズもおそらく全く同じものを揃えるのが吉だと思いますが、複数混ざった状態でも一応ちゃんとシャッターが同期するのを確認しています。自分は今回下記のレンズの組み合わせで上手くいきました。
パターン1
Canon RF24-240mm F4-6.3 IS USM × 3台
パターン2
Canon RF70-200mm F2.8 L IS USM × 1台
Canon RF24-240mm F4-6.3 IS USM × 2台
STEP2:カメラに対応した、ワイヤレストランスミッターを用意する
撮影スタジオのストロボと、カメラ3台を同期させて撮影するため、こちらの『ワイヤレストランスミッター』を4組(カメラを3台使う場合)用意しました。これを使って、3台のカメラで同時にシャッターを切り、ストロボ撮影するのです。
各社から同様の製品が出ていますが、自分はこちらを使用しました。1つのセットにつき、受信機と送信機が1つずつ入っています。
STEP3:カメラとストロボにワイヤレストランスミッターを接続する
以下のように接続して使います。
ご覧の通り、3台体制の場合は受信機が4つ、送信機が2つ必要なので、結局のところ上記の製品が4セット必要になります。
※noteの仕様上画像の解像度低いのですが、画像を右クリック等でDLするともっと綺麗にみられると思います。
テキストでもまとめておくと
※Godox FC-16(Canon用)の場合
カメラA(親):
送信機(flashモード)をカメラのホットシューに、受信機(cameraモード)のcamera端子をカメラのリモコン端子に接続する
カメラB(子):
受信機(cameraモード)のcamera端子をカメラのリモコン端子に接続する
※リモコン端子に接続された状態でホットシューに載せても問題ない
カメラC(子):
受信機(cameraモード)のcamera端子をカメラのリモコン端子に接続する
※リモコン端子に接続された状態でホットシューに載せても問題ない
ストロボA(親):
受信機(flashモード)のflash端子をストロボのシンクロ端子に接続する
ストロボB(子):
ストロボAに追従発光するように設定
手元:
送信機(cameraモード)を持つ。シャッター半押しで3台同時にピント合わせが行われ、シャッターを押し込むと3台同時にシャッターが切れる&ストロボが2台発光します。
STEP4:カメラを異なる3つの高さに設置して撮影
以上の下準備をしたうえで、3台のカメラを異なる高さに設置し、片手に回転台のリモコンを、もう一方の手に送信機を持ちます。
そして回転台を7.5度ずつ回転させ、そのたびに送信機のシャッターを押して3枚ずつ写真を撮影していきました。
合計48×3枚=144枚 撮影したことになります。
上のほうはもうちょっとアングルを付けたほうがいいとも思ったのですが、あまりに角度が付き過ぎても、うまくAlignしないことがあるので、これくらいの塩梅にしています。
ちなみに、カメラの設定は3台とも揃えたほうがいいと思います。今回は
1/125秒、F16、ISO100
で撮影しています。その他、細かな内部設定も可能な限り揃えましょう。特にシャッター周りの設定は、少しでも違うとシャッターが同期しない原因になってしまいますので注意が必要です。
※22/03/28
シャッタースピードの設定が3台とも一致しているにも関わらず、うまく同期しない(シャッターが写り込んでしまったり)場合は、シャッタースピードを遅くしてみると解決することが多い印象。最初1/160で始めて、ダメなら1/125で調整するなど。
■改善点3:モデルさんにヘアネットをかぶっていただいた
前回は、髪の毛のせいでメッシュが壊れたり、うまくAlignしないことがあったので、今回は定石どおりヘアネットをかぶっていただきました。
■改善点4:なるべく背景が一様になるようにした
※この項目は、3Dモデルの改善に貢献したというより、おかげでワークフローが大分楽になった、という部分です。
前回は、わざわざPhotoshopで被写体を切りぬいてからAlignしていたのですが、今回は試行錯誤を重ねて、そういった下準備なしでも、そのままReality Captureに放り込めばよい状態になるよう、調整を重ねました。
1st TRY(Tommyさん)のときは、下記画像のように影が出てしまった(&背景の布が一様に見えない)ので、前回同様、切り抜き加工をしないと上手くAlignしない状態だったのですが、2nd TRY (黒木さん)のほうは、うまく背景を一様に撮影することができました。
このおかげで、黒木さんのほうは、特に下処理をすることなく
下記のように、一発で綺麗にAlignするようになりました。
ちなみに、Tommyさまのほうも、切り抜き加工さえしてしまえば、こんな感じで、Control Pointなど一切加えずに綺麗にAlignされました。なんとかかんとか、つぎはぎしながら完成させた前回とは大違いです。
■結論:カメラ3台は楽。ターンテーブルにはこだわった方がいい
いかがでしたでしょうか。あらためて結果を見てみますと
TOMMYさん
黒木さん
このように、以前挑戦したときよりも、大分精度が増したように思います。
さすがにデジタルツインレーベルには敵わないかもしれませんが、そもそもゲーム用のモデルを志向している(どうせ最終的にはクリーンアップしたりポリゴン数を減らしたりする)ことを考えれば、十分に実用的なレベルになったかと思います。
上述しましたが、今回の最大の功労者は新ターンテーブルだと思います。
たしかにカメラ3台体制はかなり時短にはなったのですが、ストロボと同期させるにはかなりトリッキーな設定が必要で、苦労の割には、ものすごくクオリティが上がる、ということは無い印象です。
その点、ちゃんと一定の角度でストップしてくれ、椅子を乗せた状態でも回転してくれるターンテーブルは、使うのと使わないのでは、明らかに撮影の安定性に差をもたらしてくれました。
結局、ターンテーブルでの撮影を極めたいなら、ちゃんと使い易いものをこだわって選んだほうがいいということですね……^^;
さて、次回はリベンジの続きということで、前回大失敗してしまったターンテーブルを使った全身のフォトグラメトリにチャレンジしてみます。
↓ちょっとだけ次回予告(そこそこうまくいっています)
お楽しみに!!