スシローペロペロ事件に思ったこと

 いわゆる「スシローペロペロ事件」と言われる、回転寿司店における不適切な動画撮影事件が相次いでいる。このことについて、私の考えていることを述べたい。あくまで個人の感想だ。

これは可視化されただけなのか

 回転寿司店でのいたずら動画撮影事件については、「今までも行われていたいたずらが、スマホの普及による撮影・投稿により、可視化されただけだ」という言説が支持を得ている。
 私もこの「可視化」という点では同意するが、本当にそれだけなのか、という疑問を抱いている。

 可視化されただけなら、なぜ今このタイミングなのか。なぜあるタイミングで、大量のいたずら動画が投稿・発見されたのか。

 スマホが普及したのはもう随分前の話だし、ツイッターやインスタグラム、ティックトックなどの投稿の場が生まれてから、年単位の時が経っている。
 ツイッターで「バイトテロ」が話題になったのも何年も前の話だろう。だとすれば、ペロペロ動画についてももう何年も前から可視化されていなければおかしい。

 私は、今このタイミングで、いたずら動画が大量に作成され、投稿されているとみる。いたずら動画に触発され、自分も同じことをやってみようといたずらを実行している者がそれだけいるということだ。

 バズりたい、再生回数を伸ばしたいという欲求が、善悪の判断を超越してしまった結果、いたずら動画が“複製”され、炎上が繰り返されている。

企業側の対応はやりすぎなのか

 ペロペロ動画の作成者が特定され、個人情報までもが晒され、親が憔悴しきった様子で週刊誌のインタビューに答える模様が公開され、少しずつ“同情”の声が広がり始めている。

 しかし、企業側は謝罪を拒否し、あくまで刑事・民事の両面で毅然と対応する姿勢を崩していない。

 これについては、私は“犯人”に対する厳しい姿勢を崩すべきでないと考える。実際に、刑事・民事の両面で大ダメージを負わされるところまで後追い報道をするべきだと思う。

 なぜなら、嵐が過ぎゆくまで“犯人”は閉じこもり、両親が涙ながらにマスコミに謝罪すれば、やがてみんなが許してくれるという前例を作ってしまっては、これらの事件が「その程度のこと」ということになり、次の「スシローチャレンジ」を生んでしまうからだ

 “犯人”の若者とその両親には悪いが、「ちょっとしたいたずらで人生が終わる」前例となってもわらねばならないのだ。
 「その程度のこと」では済まないという事実を、抑止力にしなければならない。

動画の“増殖”はなぜ起こるのか

 『ケーキの切れない非行少年たち』という本が、ベストセラーになった。非行少年たちに見えている世界が驚くほど歪んでいる、という衝撃が社会に走った。しかし、私にはちょっと別の見え方をしていた。

『ケーキが切れない非行少年たち』の帯に記されていた「ケーキ3等分」の図

 上に示したのが、『ケーキが切れない非行少年たち』の帯に掲載されていた「丸いケーキを3等分する」という課題を非行少年たちに課したときの、回答を、筆者がまねて書いてみたものだ(実際には線は〇からはみ出していなかったようだ)。

 これをみて、著者も、読者も、「非行少年には世界がこのように歪んで見えている」と解釈したのだが、私の解釈は違う。実は、これらのケーキは“3等分”できているのだ。

 それはどういうことか。非行少年には、「3等分」というゴールから、逆算してナイフを入れるという行動ができないのだ。
 図1の中央付近を横切る線、図2の縦線が、おそらく非行少年たちが最初にケーキを等分した線だろう。「3等分」というゴールを意識できないまま、とりあえず等分してしまう。2等分したところで、3等分、つまりもう一度等分しなければいけないことに気付く。そこで、2等分したうちの一つのピースを、再度等分することで(図1のは等分にはなっていないが、幅は大体同じである)、3つのピースに“等分”できたと思うのだ(と推察する)。

 つまり、非行少年たちは世界が歪んで見えているのではなく、「先を見通して行動することができない」のではないかと思うのだ。

 そうすれば、(既に社会から苛酷なペナルティを受けている人がいるにもかかわらず)いたずら動画が増殖する理由を簡単に説明できる。

 いたずら動画を撮影し、再生回数を稼ぎたいという欲求がある。それに対して、これが炎上することにより、莫大な賠償を請求されることになる。普通の人であれば、後者の賠償請求のことを考えて行動にストップがかかる。ところが、非行少年と同じような思考回路を持ついたずら動画の撮影者たちは、たとえ賠償請求のことを知っていたとしても、いたずら動画を撮影できるシチュエーションに置かれたとき、まずいたずら動画を撮影し投稿してしまうのだ。投稿のその先にある重大な結果を見通せないのだ。

 私は、この行動に対する解決策は持ち合わせていない。そう思ったということを書きつけるだけで終わってしまうのは非常に心苦しいのだが……。

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