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子どもたちはどんな大人の話なら聞いてくれるのか?〜恐怖で支配しない、信頼で築く子どもとの関係〜
1.「言うことを聞かせる」のは本当に必要?
「何回言っても聞かない!」
「もっとちゃんと話を聞いてほしい…」
子どもと関わる大人なら、一度は感じたことがある悩みではないでしょうか。
つい 「ダメ!」 「やめなさい!」と強く言ったり、時には大きな声で叱ってしまうこともあるかもしれません。
しかし、心理学の観点から見ると、 「言うことを聞かせる」ことを目的とする関わり方 には大きな問題があります。
一時的には大人の指示に従っても、内発的な動機づけ(自分から行動しようとする力)が育たず、外発的な圧力(怒られる・褒められる)でしか動けなくなる 可能性が高いのです。
では、子どもが 「聞きたくなる」 大人とは、どんな存在なのでしょうか?
認知科学や心理学の視点を交えながら、解説していきます。
2. 子どもが話を聞きたくなる大人の特徴
①「聞いてもらえる」安心感がある大人(自己決定理論)
自己決定理論(Self-Determination Theory) では、人間には 「自分で決めたい」 という基本的な欲求があるとされています。
しかし、子どもは自分で決定できる場面が少なく、大人にコントロールされやすい環境にいます。
そのため、子どもが 「聞く耳を持つ」 ためには、まず 「自分の意見を尊重してもらえている」 という実感が重要です。
✔ 「どうせ言っても無駄だ…」
✔ 「この人は怒るだけで話を聞いてくれない…」
子どもがこんな気持ちを持っていたら、当然、大人の話にも耳を貸したくなくなります。
【ポイント】
✅ 子どもの話を最後まで聞く(途中で口を挟まない)
✅ 「そうなんだね」「なるほど!」と共感する
✅ 「あなたの考えを知りたい」と伝え、意見を引き出す
これにより、子どもは 「自分の意見も尊重されている」 と感じ、大人の話にも耳を傾けやすくなります。
② 怖くないけど、ブレない大人(愛着理論)
心理学者ボウルビィの 愛着理論(Attachment Theory) によると、子どもは 「安心できる大人」のもとでこそ、他者との関係を築き、学びを深めることができる とされています。
「怖いから従う」環境では、子どもは 恐怖を回避することが最優先 になり、深い学びが起こりません。
反対に、「甘やかす」関わりも、子どもを不安定にさせる要因となります。
重要なのは、 一貫性のある対応をすること です。
【ポイント】
✅ ルールは一貫性を持たせる(言うことが日によって変わらない)
✅ 怒鳴らずに、落ち着いた態度で接する
✅ 「どうすればいい?」と子ども自身に考えさせる
大人が感情的にならずにブレない対応をすることで、子どもは 「この人の言うことなら信じても大丈夫」 という安心感を持つことができます。
③「大人が楽しそうに話している」(ミラーニューロン)
ミラーニューロン(Mirror Neuron) とは、他者の行動や感情を鏡のように映し出し、模倣する神経細胞のことです。
子どもは、大人が 「楽しそうに話しているか」「退屈そうに話しているか」 を敏感に感じ取ります。
大人自身がワクワクしながら話すと、子どもも 「もっと聞きたい!」 と思うのです。
【ポイント】
✅ 声のトーンや表情を意識する(抑揚をつける)
✅ 具体的な例を交えながら話す
✅ 「こんな面白いことがあるよ!」とポジティブに伝える
④「なんで?」を一緒に考えてくれる大人(認知発達理論)
ピアジェの 認知発達理論(Cognitive Development Theory) では、子どもは年齢に応じた認知の発達段階を経るとされています。
特に 幼児期から学童期にかけての子どもは、「なぜ?」と疑問を持ちやすい時期 です。
このとき、頭ごなしに否定せず、一緒に考える姿勢 がある大人に対して、子どもは信頼を寄せます。
【ポイント】
✅ 子どもの「なぜ?」を大切にする
✅ 「どう思う?」と逆に問いかける
✅ 答えがすぐに出なくても、一緒に考える時間を楽しむ
3. まとめ:「聞いてほしい」より「一緒に考えよう」
子どもが大人の話を聞くかどうかは、「大人がどれだけ子どもの話を聞いているか」 にかかっています。
✔ 一方的に「言うことを聞かせる」のではなく、子どもの意見を尊重する
✔ 怖がらせるのではなく、一貫したルールのもとで安心感を与える
✔ 退屈させずに、ワクワクしながら伝える
✔ 「なぜ?」を一緒に考える
これらを意識することで、子どもは 「この人の話なら聞いてみよう」 と思うようになります。
「子どもが話を聞いてくれない…」と感じたときこそ、大人の関わり方を見直すチャンスです。
恐怖ではなく信頼で築く関係こそが、子どもとのコミュニケーションを豊かにする鍵となっていきます^^
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