見出し画像

夫婦生活と他者依存の矛盾(続き5)

こんにちは、Rioです。
この記事を見てくださってありがとうございます。

前回までの話はこちら。

その翌日、子供たちとは何事もなかったように複数の家族同士で会い、1日が過ぎていった。

パートナーは友人たちに昨日の話をするのだろうか。
今のところは何も話していないようだが、今後会うことが出来なくなった際に打ち明けなければならないだろう。


それとも私がこの場で全てを言ってしまい、第三者からの審判を受ければ結果は変わるだろうか。


そんな事を考えながら結局は二人とも何事もないように振る舞っていた。


これ以降、子供たちと友達との交流が無いかもしれないと思うと申し訳なく思い涙がこられられなくなる瞬間もあった。

結局、私たちは二人とも特に変わらない休日の家族を演じたまま、その日は解散をした。



行き帰りの車の運転中、私は普段度付きのサングラスをかけている。
ドイツでは会社の福利厚生で民間の医療保険に加入していたため、眼鏡等による矯正という名目でサングラス購入にも保険が適用される。


私は滞在中にこの保険によって運転用のサングラスをタダ同然で購入したのだが、この日ほど持っていてよかったと思った日は無かった。


子供たちに赤く腫らした目を見せずに済んだからだ。



翌日、私は同僚に悟られないように普段は夜間の運転中ぐらいにしかしない眼鏡をかけて出勤した。


冒頭にもある通り、私の勤めていた会社は外資でありながら社員を大切にする風土がある。
特に子供や家族の病気など不測の事態が起きた際には当日在宅勤務に切り替え、出勤扱いながら通院を中抜けで行ったりというケアも問題なく可能だった。

本来、進捗報告のために1ON1のミーティングを予定していたのだが、私はこのタイミングで家族の現状を上司に伝えることにした。


即座に今持っている休暇をすべて使い、家庭状況を元に戻すことに専念したい、またそれが実現できない場合は現職を辞めることになると。


内容を包み隠さず伝えた際には予想していた通り非常に驚いた様子だったが、すぐに私と息子たちのことを心配してくれた。


内心は穏やかではなかっただろう。
それもそのはず、後で判明することだが、この数週間前にコストカットの名目で社員2名が退職したばかりだった。



当時、私はその同僚2名の退職理由はキャリアアップの転職によるものだと勝手ながら想像をしていた。


社内ではベテランと位置付けられるポジションではあったが、小さい組織だったので社内での昇格が可能なほど管理職を必要としていないのも事実だった。


なので私はその同僚たちの離職はポジティブなものだと思っていたが、本社から人件費削減の指示によるものだった。



そうした状況下での私のこの報告である。
少しでもこのタイミングが前後していれば少なくとも1名の同僚は切る必要はなかった。


更に、この会社のアクションは単なる人員整理ではなく、キャリア形成して昇給を続けていたベテラン社員のポジションを新たにヘッドハンティングする事で、若返りと人的コストダウンを考えていたのだろう。



そのため、一時的にリソースが不足するが採用活動によりその穴を埋める予定だったはずだ。



そこに私のこの問題が浮上してきたことにより、会社は一気に3名分のリソースを失ったことになる。

結果が何より評価される外資の世界でこれはかなりの痛手になっただろうと想像する。


そんな状況下でも嫌な顔一つせずに承諾してくれた上司には今でも感謝している。

長期の休暇が重なっていたこともあり、私はその週のアポイントを機械的にこなし、と言っても関東の外れや関西の湖のほとりの方まで出張続きではあったが、家族の関係を繋ぎとめるための短い休みを得た。



休暇に入るまでの期間、私は出張で家を不在にしながら気が気でなかった。


もし彼女が子供たちを連れて出て行っていたら見つけることが出来るだろうか。。


いや、そもそも問題は家族としての生活が彼女自身を追い詰めているという状態のため、その線は薄いだろう。。


では子供たちをおいて蒸発してはいないだろうか。。
最悪の場合、自責の念に駆られて自殺や無理心中など、、、



頭の中はもう仕事どころではなかった。



その日の仕事終わりにビデオ通話をし、相手が受信したこと、背景が自宅であること、画面越しに子供がいる事を確認して安堵する日々を過ごした。



これほど1日が長く感じた期間は無かった。



一刻も早く仕事を済ませて自宅に帰りたい。
私はその一心でこの悪夢のような平日を過ごした。



そうして、ようやく私は無事に家族の元へと帰った。
ただ安心はしていられなかった。

今持っている休みの期間中に彼女を動かすことが出来なければ家庭と仕事を同時に失うことになる。



同僚達には上司が説明をしてくれていたようだ。



休暇に入る直前に心配に思った一人の同僚が連絡をしてくれた。
特に隠すつもりもなかったが、質問と私の答えがストレートなものではなかったため、同僚たちの中では色々な憶測が飛び交ったようだ。



ある人はパートナーが蒸発してしまったと想像をし、またある人は私が重い病期に罹ったと想像をしたようだった。


いずれにしても、数字を取ってくる役者が減れば全員のインセンティブに響くことになる。
タスクの負担は当然だが、金銭的にもネガティブな影響を及ぼしているのは明らかであったため、同僚たちにも申し訳ない気持ちはあった。


しかし、私は何に換えてもこの状況を変えたい、そう思っていたため、払う犠牲の大きさは気にも留めていなかった。


そして、この話がもつれ泥沼化していくことを、この時はまだ知る由もなかった。。



ここまで読んでくださりありがとうございます。

長くなってしまったので別の記事で続編を書いていきます。


いいなと思ったら応援しよう!

Rio
応援いただけるとありがたいです。 いただいたチップは文章力の研鑽に使わせていただきます。