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『新時代の会話』

  夏が始まり、じわりと汗ばむ季節が今年もやってきた。この時期は朝と昼の温度差にいつも服装を悩まされる。薄着を羽織って行こうか、やめておこうか、結局羽織らずに半袖で家を出ると、ビル風に煽られ肩を震わせるはめに遭うのだ。それでも正午を迎える頃には太陽がギラギラと肌をつきさし、Tシャツすらも脱いでしまいたいような暑さに見舞われる。どう転んでもこの時期の天候にはうんざりするだけだ。
 外に出る際にはマスクを着用することが一種の常識となった今、どれだけ暑かろうとマスクをしなければならない。それだけで汗がじわじわと額から吹き出してくる。最寄りのショッピングセンター内にあるいくつかのお店では、店員さんがマスクの代わりに、透明なサンバイザーのようなものを着用しているのを見かけることが増えた。あれはとても快適に見えるが、サンバイザーと接する部分がかえって蒸れそうではある。一番快適なマスクの代替品はなんなのだろう。
 マスクにも種類がたくさん増えて、これ迄にもあったのか知らないが夏用マスクというものが注目を浴びているらしい。ユニクロのエアリズムマスクはとてつもなく好評ですぐに売り切れたらしく、一体どれほど体感温度が変わるのか試してみたくもある。しかし、近くの店舗では次回入荷時期は未定らしく、入荷される頃にはきっとエアリズムマスクの熱もさめ、僕も忘れてしまっているだろう。最近では手作りのものも珍しくなく、すれ違う人の約3割くらいが他には目にしないような柄付きのお手製マスクを着けていて、日常に浸透しているのがとても面白く感じる。電車を待つ中年のサラリーマンが黄色いマスクをつけているのを見かけたとき、その人の家庭の個性を垣間見ることができてすこしだけ勝手に親近感を覚えてしまった。会社内でお互いに手作りマスクを着けていたら、
お宅もですか。
妻が自粛中に大量に作ってくれたので。
みたいな様子で会話が弾みそうである。そして生まれる親近感。
 マスクが当たり前でなかった前までは決して生まれることのなかった話題であり、それがすこし新鮮で、そして当たり前へとなっていくのかなと思うと、変わりゆく時代の流れに触ることができたような気がして嬉しい。

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岩上魁星(IwagamiKaisei)
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