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インガ

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世界規模の感染症パンデミックにより、国家という枠組みが瓦解して企業自治体が乱立した世界。 感情を表層化するIMGシステムにより管理された社会で、謎の人型ロボット「インガ」に命を狙…
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2022年6月の記事一覧

インガ [scene ???]

———…ここに居たのか。 ———ああ、少し外の空気を吸いたくてな。 ———コーヒー、飲むかい? ———いや、いい。お前が淹れたのは苦すぎる。 ———変わらないな。これなら、お気に召すんじゃないか? ———ん?…おおタバコか、よく持ってたな。この街じゃ、もう売られてないはずだが。 ———よく知ってるね。 ———目が覚めたとき、ネットで色々と確認したからな。…うまい。 ———感謝してくれよ?君のデスクに残っていたそいつを、廃棄される寸前に救出したうえに、しっかり乾

インガ [scene003_04]

歪な凹凸に包まれた、真っ白な球体。 それ自体にはこれといった意匠を感じないけれど、その役割がこの物体をモニュメントたらしめている。 財善メディカルセンターが抱える、数えきれないほどの患者たち。 生者も死者も分け隔てなく集ったこの場所そのものが「医療の象徴」だった、と。そういうことなのだろう。 「…聞きそびれていたんですが」 ハルさんが言っていた、ちょっぴりえげつないIMGの改造。ヒバカリさんの、モルモット仲間という言葉。 局長職という肩書きと立場には似つかわしくな