「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?」(上野の国立西洋美術館)に行ってきた 2024/05/01開始、2024/05/15公開
「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか? ――国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ」に行ってきた。 膨大な情報量に圧倒された。正直、疲れた。
国立西洋美術館創立65年目の展示として、国立西洋美術館史上初めて、「現代美術」を展示したのだ。
以下の8つの問いを投げかけている。
美術館の存在意義を批判的に見つめ直し、未来を創る今のアーティストに目を向けるというコンセプトが面白かった。国立でここまで良くやったなと感じた。
1 ここはいかなる記憶の磁場となってきたか?
内藤礼
内藤礼
color beginning
2022– 23年
アクリル/カンヴァス
作家蔵
ポール・セザンヌ
葉を落としたジャ・ド・ブッファンの木々
1885 –86年
油彩/カンヴァス
国立西洋美術館
豊島美術館の作品「母型」の作家、内藤礼さんが好きなのだが、color beginingという不思議な作品があった。
color beginningは、最初、真っ白なキャンバスだった。ポール・セザンヌ
「葉を落としたジャ・ド・ブッファンの木々」と、真っ白な四角を見比べているうちに、真っ白な紙の上に、どんどん色が浮かび上がってくる。
それにしても、なぜ内藤さんは、ポール・セザンヌ「葉を落としたジャ・ド・ブッファンの木々」を選んだのだろうか。
2 日本に「西洋美術館」があることをどう考えるか?
赤い絨毯の上に屹立する五重塔、横たわるロダンの作品が印象的だった。
小田原のどか
西光万吉
毀釈
1960年代
岩絵具/和紙
西光寺
オーギュスト・ロダン
青銅時代
1877年(原型)
ブロンズ
国立西洋美術館、松方コレクション
3 この美術館の可視/不可視のフレームはなにか?
布施琳太郎
布施琳太郎
骰子美術館計画
2024年
ミクスト・メディア
ル・コルビュジエ
レア
1931 年
油彩/カンヴァス
国立西洋美術館、
大成建設株式会社より寄託
青い液晶モニタの展示。ブルーの光が印象的な展示だった。楕円のスクリーンに詩が流れる。恋愛についての詩が印象的だった。でも、その詩を写真や動画におさめることができなかった。一期一会だ。
4 ここは多種の生/性の場となりうるか?
飯山由貴「わたしのこころもからだも、だれもなにも支配することはできない」はちょっとした参加型アートで、こちらもオススメだ。ポストイットで自分の考えを表明できて、それがアート作品になる。
飯山由貴
飯山由貴
わたしのこころもからだも、
だれもなにも支配することはできない
2024年
プリント経師紙、段ボール、紙、鉛筆、
油性ペン
作家蔵
鷹野隆大
「KIKUO(1999.09.17.Lbw.#16)「ヨコたわるラフ」シリーズより」は、男性のヌード写真の作品だ。等身大、いやそれ以上の大きさの写真のように感じた。
以下が対照となる作品になっているとは、観ている当時はあまり思いつかなかった。気持ち悪くはない。でも、美しいとは感じない。それはなぜなんだろうか?
鷹野隆大
KIKUO(1999.09.17.Lbw.#16)
「ヨコたわるラフ」シリーズより
1999年
ゼラチンシルバープリント
作家蔵
ギュスターヴ・クールベ
眠れる裸婦
1858年
油彩/カンヴァス
国立西洋美術館
ゴッホの「ばら」は好きな作品だ。IKEAのような家具で構成された部屋のデスクの前に置かれていたのだろうか。
フィンセント・ファン・ゴッホ
ばら
1889年
油彩/カンヴァス
国立西洋美術館、松方コレクション
反─ 幕間劇 ─上野公園、この矛盾に充ちた場所:上野から山谷へ、山谷から上野へ
圧倒的な量の作品。そして、色使いが鮮やかで、私たちがリアルでも見ていない世界を描いている。
5 ここは作品たちが生きる場か?
クロードモネの作品を、薄い布で修復するという作品だ。重ねようとしても、重ならない。薄い布は、風に吹かれ、浮く。クロードモネの睡蓮の水面に風を感じる。
竹村京
竹村京
修復されたC.M.の1916年の睡蓮
2023 – 2024年
釡糸、絹オーガンジー
作家蔵
クロード・モネ
睡蓮、柳の反映
1916 年
油彩/カンヴァス
国立西洋美術館、
松方幸次郎氏御遺族より寄贈
(旧松方コレクション)
6 あなたたちはなぜ、過去の記憶を生き直そうとするのか?
遠藤麻衣
遠藤麻衣
オメガとアルファのリチュアル
─国立西洋美術館ver.
2024年
ヴィデオ、16分20秒
作家蔵
やはり、この作品は、「国立西洋美術館ver.」だ。女性と蛇のダンス。男性は出てこない。
7 未知なる布置をもとめて
最後の絵の展示も良かった。二人の好きな作家を発見できた。坂本夏子さんと辰野登恵子だ。
坂本夏子
坂本夏子
秋(密室)
2014年
油彩/カンヴァス
高橋龍太郎コレクション
以下の作品もモネと対置されていて興味深かった。
辰野登恵子
辰野登恵子
WORK 89 -P-13
1989年
油彩/カンヴァス
千葉市美術館
クロード・モネ
睡蓮
1916 年
油彩/カンヴァス
国立西洋美術館、松方コレクション
友人が好きだと言っていたジャクソン・ポロックの作品が展示されているのを今気づいた。注目して観たかった。
ジャクソン・ポロック ナンバー 8, 1951 黒い流れ
アートは何のためにあるのか、と自問自答したくなった。メタ視点を持て。
そして、私自身にとって、アートは何のために存在しているのか?を問い直したい。
また、さまざまなアーティストの作品が展示されている企画展の感想文をもっと上手く書けるようになりたいと強く思った。
以上