【ショートショート】ちーちゃんとママ

『人にわるいことをすると自分に返ってくるよ』

ちーちゃんのママはいいました。

『何で人にわるいことをするの？』

ちーちゃんはいいました。

『その人のことが羨ましいからよ』

ちーちゃんのママはそっけなく答えました。

ちーちゃんはなんだか悲しくなりました。

『みんなちーちゃんみたいだったらいいのにね』

ちーちゃんのママは寂しそうにつぶやきました。

『何で？』

ちーちゃんは不思議そうにいいました。

『小さいことでも幸せを感じられるからかな』

ちーちゃんのママは目を細めていいました。

『みんなはそうじゃないの？』

ちーちゃんはいいました。

『大人になると子供の時とは違い、様々な景色を見るの。それは、真っ黒い絵の具に隠れたキャンバスだったり、高い崖の下から見える霧がかった黒い雲だったり。。。。』

ちーちゃんのママは目を閉じながらいいました。

『それらに飲み込まれてしまい、本来の透き通るような白い風景が見えなくなるの』

ちーちゃんはじっとちーちゃんのママを見ていました。

『だから、ちーちゃんはずっとそのままでいてね』

ちーちゃんのママの瞳から涙がひとつぶこぼれ落ちました。

それをちーちゃんは小さい手でぬぐいさってやりました。

そして、ちーちゃんのママにいいました。

『ママ、きれいな色だね』

ちーちゃんのママはほほ笑みながら優しくちーちゃんのおでこにキスをしました。

ちーちゃんはうれしいようなはずかしいようなやさしい気持ちになりました。

『ママ、きょうはハンバーグが食べたい！』

ちーちゃんはニコニコしながらちーちゃんのママにいいました。

『よーし、じゃあおまけにチーズものせちゃおう！』

ちーちゃんのママははりきって答えました。

今日からまた二人の日常が始まります。。。

END