ポルシェ流、新しいターゲットオーディエンスへのアプローチ論。
「若者のクルマ離れ」。最近の記事でまたこの言葉を見かけたので、思ったことを書いてみた。思えば、「若者のクルマ離れ」という言葉は、私が新卒の頃から言われ続けているので、もう10数年以上使われている言葉です。
私は、この言葉は、「戦(いくさ)を負け戦にする」言葉、つまり負のフレーミングだと思うのです。
残念ながら、この言葉は、自動車業界でも自虐的に使われているし、これに対してどう立ち向かうか、という課題設定をメーカーのマーケティング部が持っていたりする。
でも、クルマ離れというよりも、単に、誰もが買うような汎用品に興味を失ってきただけでは?と思います。
当時のマーケッターなり、分析官が統計データを持ってきて、若者のクルマへの興味関心が薄れている、購買意欲が落ちている「現状分析」を、さてどうするか、と。若者や女性に刺さるようなメディアを使おうとかキャッチコピーを作ろうとかカラーサンプルやタレントで若いイメージを醸成しようとか色々やっていた(いる?)と想像できる。
そんな中、見て欲しいのがポルシェとVICEが制作した、電気自動車Taycan(タイカン)の動画です。これを見ると、我々が10年以上行ってきた課題設定やマーケティング思考が正しかったのだろうか、と考えさせられます。
*Porsche x VICE present Electric Driving 101: Image
これを見ると、自動車会社のアプローチが変わりつつあることを感じさせる。若者を明確にターゲットにしたコミュニケーションをしていることはわかるが、別にクルマリテラシーの低い人にわかるような簡単な言葉で説明しているわけでもなく、エントリーユーザーに親しみやすさを醸成するような仕掛けもない。ターゲットオーディエンスに媚びることなく、ただ、若者の領域に入ってきて、かっこいいでしょ?と良さを伝えてあげている。
いいクルマを所有する昂りなのか、ドライビングの高揚感なのか、ライフスタイル、精好なプロダクトそのものなのか。ユーザーが本当に欲しいものを見極め、それを押してあげる作業。めちゃくちゃ高難易度のことだと思うが、ポルシェはうまくやっているなと思うし、これを見て、やっぱりタイカンは欲しいと思った。
翻って、私は、13年前の新卒の頃は全くクルマに関心はなかったが、今では、大好きになり、結構無理をしてポルシェに乗っている。
若者にとって、クルマだって、きっと欲しいものは欲しいのです。
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