【プリズンライターズ】「心の雫」短歌15首 vol.12
拝啓
晩秋の候、日毎に冷気が増してきて残る少ない秋の名残を惜しむ今日この頃です。
半年ぶりに書くお手紙で懐かしく感じています。お元気でしょうか。
こちらのコロナ禍はすっかり落ち着きました。
スポーツの秋ですね。11月2日木曜日は半日使っての運動会がありました。
3年ぶりのことです。(昨年は1時間半くらいでした)プログラムは例年通りの競技で、大玉ボウリング、大玉リレー、玉入れならぬ玉置きゲーム、障害物リレー、そして、全員でのダンス(今年は郷ひろみの”俺は最高”)でした。
生産工場が5つと経理工場で6工の戦いです。
最初の大玉ボウリングは期待が大きかったのですが、4位となり、ちょっとあきらめムードでした。
しかし残る3つのゲームが1位、2位、1位と高順位で総合的に1位となりました。
私は長くこの施設にいるのですが、優勝旗をもらったのは(私が受け取った訳ではありませんが)初めてです。
工場はあちらこちらと転々としていますので、2位、3位になっても、運動会の優勝は経験していません。
その他のソフトボール大会とか、玉入れ大会とかでは優勝するのですが、優勝旗はありません。
賞状と盾までです。それでとても嬉しかったです。
これは一人一人の頑張りなのでしょう。1位になりたいという思いが120%の力となったのでしょう。
狙ってもなかなか優勝は難しいのですが、予想以上の結果でしばらくは夢見心地でした。
たかが運動会ですが、塀の中の楽しみはわずかなものです。
声を枯らして応援するのも久しぶりのことで、ストレス発散に十分に役立ちました。
また、読書の秋です。10月の初め頃、アマゾンからの本が届きました。
お陰様で余暇時間が潤っています。最初は北方謙三や矢月秀作、黒川博行の本を読んでいましたが、楽しみにしていた大沢在昌の『新宿鮫』シリーズに入りました。
面白いという噂は聞いていたのですが図書館には無く、いつかは読みたいと思っていました。
12巻まであるようですが、今は7巻目の『風化水脈』を読み始めたところです。
元キャリア警察官鮫島の行動にハラハラドキドキしつつ、次へ次へと読み進めています。
矢月秀作の『もぐら』シリーズ、堂場瞬一の鳴沢了シリーズやアナザーフェイスシリーズも一気に読み進めてしまいました。
ちょっと依存症かなっと思うくらい本に没頭しています。
そして、芸術の秋でもあります。休日は水彩画もよく描いていて、猫の絵とか、外国の風景画もまずまずかなって思っています。
朝焼けのカシオペア(寝台列車でしょうか?)自分ではちょっといい感じと、満足感に浸っています。
絵画クラブに入っているのですが、先月のシマウマもその前の月のエゾリスも、”あれっ割とウマになってるじゃん”とか
“リスになっていて可愛いじゃん”と心の中でにやけています。
昨年は大変な年でしたが、今年は少しずつ盛り返しています。
職業訓練はビジネススキル科というパソコン教室に入り、9月からは社会人基礎力科に入っています。
班長という責務を外れた今だからこそできる訓練の参加です。
与えられた時間を有効に使いたいと思い、予習復習をしつつ合格を目指して勉強しています。
あれやこれやで今年1年も終わりそうです。
PJにも変化があったようで、大変かと思いますが、私たち会員はPJの皆様に非常にお世話になり、感謝しています。
どうか末長く活動が続けていかれますよう願っています。
朝、夕寒くなります。どうか皆様お体に気をつけてお過ごしくださいませ。ではまた。
かしこ
令和5年11月15日
短歌15首です
・雷鳴が移ろう季節を告げたるか豪雨のあとの白き秋風
・真夜中の雷雨過ぎれば虫の音が三階の窓耳にやさしき
・野の花の名前忘れし淋しさに折り合いつけて歩み進める
・一株の羊歯の葉蔭の蜘蛛の巣の懐かしさきかな女郎蜘蛛
・落ち葉踏み乾いた音の響きくる足裏からの秋の呼び声
・空路にも臨時便がありたるか常なき爆音真上を通過
・大好きな僕の居場所を盗らないで押し合いへし合い雀のホテル
・桜葉の日ごと散りゆく寂しさに鳥の鳴き声切に響けり
・早朝をいづこに向かうか大群の鳥の隊列頭上飛びゆく
・休日に除草機の音響ききて見えない誰かにエールを送る
・方程式貴女と解いた思い出を連れていこうよ転室近し
・ヘアピンを口にくわえて格闘す君のひと日は五時にスタート
・あさなさな頰に塗り込むクリームのアロエの香り癒しとなりて
・送られし本の重さに応うるは強き意思なる違反なきこと
・赦されし罪ではないと知りつつもかすかに願う更生への道