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「医者選びって難しい」-エッセイ-

〜50音でつづるエッセイ〜
今週は「い」から始まるテーマでお送りします♪

お陰様で、これまで生死をさまようような大病や大怪我には縁がないのですが。

これまでの人生で3度ほど、病院にまつわる強烈な思い出があります。

心配症の母に救われた話

最初の思い出は、中学生の時。
前の晩からひどい腹痛や熱で、心配した母が仕事を休んで最寄りの内科まで付き添ってくれました。
「まあ風邪か何かの菌がお腹に悪さしたんでしょう。お薬出しておくんで、それで治らなければ3日後に」
と、言われたのですが。

夜中から治らない腹痛と発熱に普段の風邪とは違うと感じていた母は、その診断では納得せず。
大病院への紹介状を書いてもらうよう、先生を必死に説得していました。

私は強まる腹痛に少し違和感を覚えつつ「先生がああ言ってるんだし、そこまで心配しなくても」と、半ば他人事のように思っていました。

先生は呆れながら「お母さんの心配な気持ちはわかりますが、ただの腹痛で大袈裟な」と言いつつ、渋々紹介状を書いてくれたのでした。

……その結果。
大病院の診察で、急性腹膜炎を併発しかけた急性虫垂炎(盲腸炎)だと判明。
一刻を争う状態だと言われ、着いて1時間以内には、そのまま切開手術となりました。

「何でもっと早く病院に来なかったの?!このレベルの痛みなら、いつもと違うと分かるでしょう!」 
と大病院の先生にはしかられて、何とも理不尽な思いをしたのですが。
今思えば、私がもっと痛みに敏感で大騒ぎするタイプなら、展開は違ったのかもしれません。

それにしても。
母が先生を説得してくれていなければ、たぶん入院期間も倍くらいになっていたと思うと……。

意味のないギブス生活を送った話

つづいての思い出は、高校の時。
体育の授業中に、倒立前転を失敗して手をひねったため、保険の先生に付き添われて最寄りの整形外科へ。

レントゲンを撮ってもらって「まあ、特に問題ないし、軽いねんざですよ」と言われたのですが……。
日に日に広がるアザのようなものと、湿布でひかない強い痛み。

さすがにねんざにしては変だな?と思って、1週間後にもう一度診てもらうことに。
「おや?おかしいねえ。念のため、もう一度レントゲン撮りますか」
先生も心底不思議そうな顔で首を傾げながら、撮り直した写真をまじまじと見つめていました。

「……あ。よく見たら折れてるな、これ」
ボソッとつぶやかれ、思わず「え?」と聞き返したところ。
「いや、ははは。親指と人差し指の間のところの小さい骨ね。折れてたけど、小さ過ぎて見落としてたよ」
そこでようやく、湿布から片腕を吊るタイプのギブスに変更されました。

翌日、突然のギブス姿にクラスメイトもびっくりで。
「どうしたの?」「また怪我した?」と口々に理由を聞かれたのですが。
「何か、実はこの間から折れてたらしくて……」
としか言いようがなかったですね。

結局、それから骨は何ヶ月固定しても元通りにはくっつかず。
「まあ、腫れはひいたし。折れたままでも特に支障なさそうだから、多分!」
という事で、そのまま治療完了宣言されたのでした。 

「治ったんだね!おめでとう!」
とクラスメイトに言われて、これまた「う、うん。治った……のかな?」と微妙な返事になるしか無かったという。

あれから手のレントゲンを取る機会はありませんが、今どうなってるんでしょうね。

手術跡を証拠として見せた話

最後は、大学卒業後すぐの働き始めた頃。
仕事中にひどい腹痛に襲われたため、周りから近くの医療センターへ行くように言われたのですが。

「た、大変だ!今すぐ、今すぐに紹介状。いや、救急車か?!」
触診後に、先生がうろたえ始めました。

その時点で大丈夫か?この先生……と不安になりつつ。
「いや、あの先生。落ち着いてください」
となぜか私が、先生をなだめる始末。

先生「いいですか?今から言いますが、落ち着いて聞いてください」
夏生「私はさっきから落ち着いてます。お腹は尋常じゃなく痛いですけど」
先生「そうでしょうとも。虫垂と言ってね。ここにほら、こういう器官があるのだけど……」
と、人体の構造図みたいなのを指差して、なぜか虫垂炎とは何かという解説を始める先生。
これは……まさか。盲腸だと思われてる??

夏生「あー、えっと。盲腸炎なら子どもの頃に既になりましたけど」
先生「そんなはずありません!この症状は間違いなく虫垂炎以外に考えられない!貴方の記憶違いか、薬で散らしたんでしょう」
夏生「いやいや、間違いなく中学の時に切りました!」
と、不毛なやり取りが続いた後。

先生「じゃあ、そんなに言うなら証拠を見せなさい。手術跡があるはずでしょ?さっきお腹見た時にそんなの見えませんでしたよ?」
夏生「……ええっと。ここですけど」
チラッと手術痕を見せると。
先生「あ……。そんな下に」
と今までの勢いはどこへやら、力なくポツリと漏らす先生。

気まずい沈黙の後。
先生「僕の知ってる昔の手術だと、もう少し上だったんですよ。どうも失礼しました。まあ、それはそうと。虫垂炎じゃないとすると何ですかね?」
夏生「いや、私に聞かれましても……」

とりあえず。
「僕の手には終えないけど、心配だから検査してもらって!」と先生の強い勧めで、大病院へ。

CT撮ってもらったところ、虫垂炎と紛らわしい症状の大腸憩室炎だと分かったのでした。

まあ結果的に、先生のお陰で大事に至らなかったので。
「虫垂炎が手術跡が残らないタイプの手術だったら証明が大変でしたね」と笑い話で済みましたが。
まさか、あそこまで疑われるとは……。

医者選びの失敗談というより、どれも緊急だったので選ぶ余裕がなかったのも一因かもしれません。
そして、若干自分の鈍感さも、原因に絡んでる気がします。

まあでも、今回の話以外にも病院選びにまつわる思い出に事欠かないため、本当になかなか難しいものだなぁと思います。

いざという時に飛び込みでよく知らないところへ行くのは、なかなかのギャンブルなので(あくまで私の経験上ですが)。

散々失敗している私が言うのも何ですが。
出来ることなら、日頃から信頼できるところを見つけておくことをおすすめします。

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