自分の値段(ライターの見積もりについて)
少し前に、会社を辞めて独立したい広報さんから「これくらいのライティングの仕事の場合、いくらで受けますか?」と質問された。自分が退社後に受注する金額の参考にしたいと。
自分ごとだとクヨクヨしすぎて、ほんとにしょぼい金額を提示しがちなんだが、人ごとだから大きな顔して以下のようなことを伝えた。
※業務は、商品の現場確認、A4サイズのチラシっぽいもの1ページにびっしり文字が埋まる程度のPR文章を書く作業を念頭に置く。
①自分の1日の単価を決める
そもそも、私は当初勤めていた会社が「店舗取材が1件あたり3000円くらい。取材とライティング代込み。本文は100文字程度と短いが、短ければ簡単かというとそうでもない」という死にそうな安ギャラ体制だったため、安すぎる体感値を覆すのに時間がかかっていた。
しかし、歳を重ね、ライターやカメラマンやデザイナー業だけで食っていく人々の話を聞いて、それをそろそろ改めないといけないと思うようになっている。
「いくら地方で生きるにしても、家族を養いながら家を持ち、暮らしを回していくには最低1日6万円は欲しい」
そういうリアルな金額を聞き、「そうか」と。※頑張って1日のギャラ目標が3万円だったので、反省した。
時間数で割ると、8時間働くとして、時給は7000円から8000円くらい。※いつも頑張って時給3000円計算だったので再び反省。SEとかやってる知人から「見積もりのゼロが一桁足りないんだよ」と突っ込まれる。
すると、金額が見えてくる。
②業務にどれくらい時間がかかるかを見極める
今回のケースなら、現場確認で1から2時間、ライティングで多めに見て6時間、仕上がりチェックと修正で1時間くらい?
純粋に計算すると7000円×9時間程度=63000円。
しかしここで「いやいや、普段A4サイズ一枚の原稿なんて頑張って2万くらいでは」という気弱精神が顔を出す(人ごとなのに結局)。
で、広報さんには以下のように回答した。
○強気でいって5〜6万円プラス税
○やや強気で3〜4万円
○多分最低価格帯は2〜3万
③自分が生きてく金額を加える必要がある
これを伝えたら、「今までどれほど搾取されていたかがわかりました!」と返事が来た。
そもそも本業が広報じゃないのに、片手間でほぼタダ働きされてた風。
でも、「会社員であること」の強みは絶対にあるはずだと考える。たとえこれを5万で受注できて、今までタダ働きだった仕事にお金が付随してきたとしても。
自分で社会保険払って、自分で会計してっていうアレコレを加味しながら、それで仕事とってきて、回して、生きて、をやっていくと「あれ、収入増えないな(むしろ減ってる)」という現実にぶち当たる可能性もある。
だから、それを考えた上でギャラ設定をしなければいけないのだが。
どうしてもどうしても「私なんて」という自己評価低い体質をなくせず、なぜかいつも安めにいきがち。
④というわけで、強気に出ることにした
これまで、知人の骨董店の店主から「もう高齢だし、次世代に譲りたいヴィンテージ食器や骨董を売るのを手伝って欲しい」と頼まれ、WEBショップの運営を任されてきた。
BASEでショップを開き、写真と文章を作って更新を重ね、売りたいものをほぼ売り捌くことに成功したのだが。
これについては、「売り上げを折半」という破格待遇を設定していただき、投入した時間分のギャラは回収したし、BASEショップでモノを売り、梱包して(しかも割れ物)、クレームなく運営するという稀有な体験をさせていただいた。ステップアップの一環である。
が。
骨董店さんの知人から「うちのHPも作ってくれないか」と問い合わせをいただいた。
「正直、いくらでやってもらえるのか」を聞きたかったようだ。
まず、問い合わせをくれた60代男性のスペックとしては、インターネットが全然わからない。メールくらいは仕事で使ってきたが、「インスタがわからない。HPはもっとわからない。でも会社員をリタイアして、余生で新しいチャレンジをしたい。そこで店を開き、HPを作り、そのドメインを名刺に記載したい」という思いがあった。
私「ドメインを取得するにあたり、お金を払ってオリジナルのドメインを取るか、BASEなどで勝手にあてがわれる適当なドメインでいいのか、それによって話が変わってくるのです」
相手「ん? ドメインって、がんばれば取れるものじゃないの?」
私「ショップを開くにも、ドメインを取るにも、自分のクレジットカード番号を登録し、個人情報を開示した上で、サービスを運用する必要があります。あ、でも、ショップ運営でクレジット機能を使う必要がないなら、BASEとかのショップサービスじゃなくてWIXなどでHPを作るだけでもいいのかも」
相手「(多分話がほとんどわからない)まず知りたいのは、今あなたが骨董屋さんに作ったような簡単なHPでいいので、あれをいくらで作ってくれるのか、です」
ここまでの会話から、ドメイン取るにしても、ショップを開くにしても、メアド設定とクレジットカード設定から私が代行する将来が見えてくる。安くするわけにはいかない。
私「そうですね、このサイトなのですが、単純なように見えて、コンセプトページ、商品紹介ページ、あと定期的に更新しているブログページがあって、、、。写真の登録、商品ごとの紹介文作成などで実際めちゃくちゃ時間がかかっていて。最低10万円は欲しいのですが」
おそらく、相手は衝撃を受けた。
多分、2〜3万円でやってもらえないかと考えていた感じを感じる。
しかし、いくらBASEなどのフォーマットを使って作るにしても、ちまちま写真をリサイズしたり、あれこれしてると時間があっという間。HPを作成している間に他の仕事ができないとなると、「私の時間を確保するギャラ」は払って欲しい。
相手「やっぱり、知人のネットに詳しい人ともう一度相談します」
私「そうですね、あの、わかる人がやればとても簡単な作業なので、ご自分でやるのが一番のコストカットになります。もし、対面で作業方法だけレクチャーして欲しいということであれば、日当金をいただいて対応することはできますよ」
などなど。
強気で行ったために、この仕事はおそらくなくなるが、これくらいもらわないと、暮らしは回らない。
昨日、取材先の社長さんから「インスタ代行会社に毎月20万払ってたけど、2年も! やっと勿体無いと気付いて自社でやり始めた」と聞いて。いや結構面倒だと思うけど毎日更新するの。でも20万。売値20万でもライターまで降りてくる頃にはギャラが2万になることも多いから、「売値」を知らないままのこともよくあるのだが。
私はそろそろ「単価を本気で上げる」ことを考えなければいいけないのだな。
※後日、ちょっと大きな印刷会社で働く友人にこのHP作成の話をしたら、「いや10万円でも安すぎる」と突っ込まれた。私が過去に制作したBASEページを見せてみると「ゼロが一桁足りない」と。BASE代行を謳っているサイトを比較すると安くて3万円から、高めで10万円からなのだけど、この世の本当はどこにあるのだろう。
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地方の出版社を経てフリーの編集ライターとして活動しています。
○ライターの仕事を続けるには
○単価アップを叶えるには
○そもそもライターってどんな仕事?
○編集の視点とライターの視点の違い
などについて、自分なりの解釈をしていきたいと思っています。