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【地方クリエイター】若い人どこにいる? 現場が回らない。技術の継承は?


若い人がいない? という会話から

普段仕事で顔を合わせる人たち、初めましての人たちが10人くらい集まって、カメラマンとデザイナーとライターと代理店の人が語らう飲み会がありました。

50代の大御所を筆頭に、だいたいが40代と30代、と20代ちょこっと。

その場で、「若手カメラマンがいない。定年でどんどんリタイアしていく人がいっぱい」という声を聞いたのですが。

例えば。

地方カメラマンさんたちの大事な収入源のひとつが「学校関係」。

入学式、卒業式、スポーツの試合など。イベントごとはだいたい日にちが被るので、「入学式とか超やばい」そう。カメラマンの絶対数が足りない。

あと学校ごとにカメラマンを手配するため、スポーツの試合ではカメラマンがダブつく事態も発生するらしく(同じ試合会場に10校いるなら、カメラマンが10人いるとか)。ここはシステムの合理化が必要な部分

それならば、「学校関係のスナップが上手に撮れるなら即戦力になるのか」というと、そういう話じゃない。


地方が求めるのはオールラウンダー


私自身も地方誌に在籍していたので、なんとなくイメージがつくのですが。地方のクリエイターって「全ジャンルにおいて一通りのことができる」。グルメや観光はもちろん、美容、ファッション、キャンプ、DIY、ガーデニング、料理レシピ、住宅、起業についてなどなど。仕事が来るなら社長のプロフィール写真から入学式の集合写真まで。

ジュエリーが撮れる、などの超絶技巧が必要な分野もあるにはあると思うのですが。

自分が地方誌にいるとき、どのカメラマンさんも料理撮影が上手で、店の内観も美しく、人物写真まで満遍なくできていました。あと物撮り。雑貨でも服でもコスメでもなんでも撮影をオーダーするし(それが基本だった)。

そのせいか「全国誌の女性誌がたまにグルメを取り上げる」時の写真の不自然さが気になりました。

→首都圏のカメラマンは「料理」「住宅」など得意ジャンルを決めて一点集中すれば食っていけるという話も聞き、なるほど!


ただ修業の場は少ない


でも、今若者が「いつかフリーランスになる」みたいな目標を掲げたとしても。

「地方雑誌の編集部で修業」とか「地方のスタジオでアシスタント」という環境がゴリゴリ減っています。地方誌はもう息も絶え絶えです。

だから東京で修業するか、地方ならいきなりフリーランスになるしかなさそう。でもその場合は、独自に勉強をしなければならない。

その昔カメラマンになりたいなら、スタジオに入ってアシスタントを経験し、自然光の使い方、ライティングのコツ、機材の使い方などをひととおり学ぶことができました。「中程度の技術」を全員が持っていて、それにプラスアルファで強みを身につければよかった。

でも現状、「自分以外のスタッフを雇える」スタジオがあまりない。

※ここからはXで見た情報ですが、「今カメラマンを探そうとしても、ちょうどいい人に出会えない。昔はスタジオでほぼ全てのカメラマンが学び、当たり前にできていたはずの技術がすっぽ抜けているケースが多い。価格は破壊されているからスタジオを維持しながらアシスタントを育てる環境は少ない。以前なら、どんなカメラマンに頼んでもそれなりにいい写真が上がってきたが、今は全ジャンルで一定以上のレベルを持つ人が減っている」というつぶやきを拝見しました。
(これは首都圏の話でした)

自分一人で工夫して、あらゆるジャンルの撮影をプロレベルでこなせる人も一握りはいるとのこと。

でも、「中堅どころの、手軽に頼めてプロの写真を撮ってくれる人」が激減しているという。そしてそういう人こそ、日常の業務で本当に欲しい人だと。


今ならまだ技術の継承はギリできる


今、50代くらいで大御所カメラマンをやっている人々は、アナログの時代からアシスタントを経て、現像所にポジを出して回収してから納品する経験をしてきた人たち。現場であらゆる辛酸を舐めてきたプロフェッショナルたち。

彼らが息をしているうちに、その経験を継承できる環境があればいいなと思います。

でも、彼らのアシスタント時代の苦行(ほんとにお金がなくて、女性カメラマンから「あの頃パンツさえ買うのが勿体無くて、ゴムがゆるゆるなのをずっと履いてた」と聞いて切なくなった記憶があるし、その状態で20代を使い切ることがいいとも思えない)を、現代に再現できるかというと無理だと思う。

ただ、大企業が自社ではきっと抱えない「現場のプロたち」の育て方って、どう考えても何度も現場を体験するしかない気がしていて。

現場を繰り返し体験することで空気感を掴み、機材の取り回し方を体に刻み、クライアントとのコミュニケーション力を磨き、その上で、写真を美しく仕上げていくテクニック。

そういうのを、苦行感なく得られる方法があればいいのにな、とも思います。


ライターはどうなの? の考えも少し


色々な記事を誰もが綺麗に作れるようになって、それで、それで? みたいな企画と内容も多くあるような感覚があります。

さまざまな地方へ時間をかけて取材に行って、「地方にこんなに綺麗な場所がありました」「こんなにかわいいカフェがありました」だけでは、ちょっと勿体無いというか。

昔、若い頃の私がきっとこの原稿を書いたら、上司から「わざわざ行ったんだから、その地方ならではの情報をちゃんと入れなさい」「ネットで調べばわかることだけ書いても意味がないから」と叱責を受けたであろう記事が、そのまま綺麗に仕上がって世に出てる場面に、直面することがあるのです。

あれ? これでいいの?

とってもサラッとしていて、情報がここまで薄くていいのだろうか、と。

ただ、想像はできるのです。若い頃(なんなら今も)、「形にするだけで一杯一杯」だったことを。だから、多分、上司に当たる人が「もうちょっと深掘りしてみて」という一言を伝えていないのではないかと。

上記については、まだまだ検証の余地がある考察なので、また、いつか。


自分が頼みたい時に人がいない問題


さて。話は戻り。

「現場主義」で叩き上がってきたプロたちが、まだ現場で仕事を回している地方の今。

20代とか30代の、これからを担う人たちの姿があまり見えないという話なのですが。

私自身、「ちょっと撮影をお願いしたいのだけど、一日数万円で動いてくれる人が想像できない」状況にまごまごしています。

正直、大御所たちはギャラが高い。いや、安くても「明後日なら空いてるし、もうここまで直近なら何も入らないだろうからいいよー」って言ってくれるんです。が、来月の予定を抑えようとすると「いやそのギャラでは日程確保は難しい」になる。なぜなら他の大型案件が入る可能性があるから。

でもこのスタンス、昔も今も同じで。

20年前、撮影のためにヘアメイクさんを依頼した時。1日がっつりお願いする日は3万円、1人だけ漏れた別日を「ここだけ1万円で依頼したい」と伝えたところ。

「1万だと私は動けないので、若い子を派遣しますね!」と言われたことがあります。3万円を切る現場には来ないという姿勢(大事)。

アシスタントを経てフリーになり、少しずつギャラをあげ、フリーランスとして大成していく。そんなルートが瓦解した今、「上を目指して色々な仕事を経験したくて頑張っている人」が見当たらず、めっちゃ大御所か、今脂が乗っていてすごく稼いでいる人のどちらかしかおらず。

仕事をとってくるなら、「しっかりギャラを確保できる案件」でないと、私自身も動けないんだなあという感覚を味わっています。


↓↓↓ライターの仕事に関する記事はこちら↓↓↓
地方の出版社を経てフリーの編集ライターとして活動しています。
○地方でライターの仕事を続けるには
○単価アップを叶えるには
○そもそもライターってどんな仕事?
○編集の視点とライターの視点の違い
などについて、自分なりの解釈をしていきたいと思っています。





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ライター和田知子:CLANG CLANG クランクラン
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