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#自由詩

椿

椿

乙女の黒髪

艶やかしとり

スルスルするり

ツヤツヤつやり

乙女の眼差し

しめやかはらり

ホロホロほろり

シトシトしとり

椿油は要らんかね

蝶々

蝶々

ひらひらひら

ひらひらひら

黄色い蝶々は嬉しい知らせ

ひらひらひら

ひらひらひら

黄色い蝶々は嬉しい知らせ

ひらひらひら

ひらひらひら

私の分の嬉しい知らせ?

二十歳

二十歳

そう、いつかの絶望した少女は

まぎれもなくまだ同じ“今”にうなだれたままで

あの絶望にきっと今でも簡単に帰れてしまう

少し大人になったつもりの少女は

今、深く息を吸い

あの少女をいとおしく抱き締める

青

上品な人が好き。

そんなこと知らなかったよ。

私は私をよく知らない。

君の表に現れている

抑制の効いた青い空気は

ひょっとしたら作り物なのかもしれない。

それでもいいと思ったよ。

愛のある嘘に溺れていたい。

嘘もまやかしも愛の魔法。

繰り返す場面切り取って

青の魔法に溺れて眠る。

まどろみの世界

まどろみの世界

まどろむまどろみまどろまぬ

ただただ浸っていたいんだ

今はなんにも入ってくるな

まどろむまどろみまどろまぬ

うっすら見えたシルエット

残像何度も繰り返す

重心が低い君の声

まどろむまどろみまどろまぬ

20201105

20201105

言葉が浮かばないんだよ

「なんか喋ってよ」

君は言う

暖かくって穏やかで

そこになんにも要らなくて

「なんか喋ってよ」

君は言う

言葉が浮かばないんだよ

これを安堵と呼べばいい?

ドーナツ

ドーナツ

甘いドーナツ一緒に食べよ

朝の頭は回らないから

甘いドーナツ一緒に食べよ

まだまだ体はあったまらない

熱いコーヒー入れたげるから

甘いドーナツ一緒に食べよ

月夜

月夜

はらはらと

唐突に

風のように現れては消える

あなたの名は何だった?

後に甘い余韻を残して。

耳鳴り

耳鳴り

今日はやけに耳につく。

暗がりで光る冷蔵庫の音。

隣の部屋の時計の秒針。

あの日の君の真面目な話。

火

この炎の向こう側にいるはずの

あなたが幻でもかまわない。

宇宙を燃やし尽くすほどの

私の命の灯を

どうか絶やさないように

消さないように。

春になったら

春になったら

君の好きな黄色い花が咲いたよ。

僕の好きなハナミズキが今きれいだよ。

夜帰ると花の香りがして、「おかえり」って言ってもらえた気がするんだ。

今日は月がきれいだよ。

おやすみ。

あなたはお花とお月さまの話ばかりするね。

あなたの世界はきれいなんだろうな。

春になったら、私にも見れるかな。

あなたの美しい世界を。

美

切り取ることのできない美しさがある。

人の内面世界のみに存在する

形も色も音も香りも定まらない

それ故、再現することのできない

それでいて、心を永遠に捕らえて離さない

そんな幻のような美しさが。

人はそれを追い求める。

追いかけても見失うのに

不意に強烈に心に訪れては

また心を奪い去っていく

そんな悪魔を。

メロディー

メロディー

鳴り止まないメロディーがある。

口ずさんだのは君だった?

何度も聴くうちに、昔から知っていたような気がした。

そんな、懐かしい声に

私は今世、何度か出会っている。

あぁ、君も

私の昔からの友だ。