螺旋思考と強迫観念-亀とトゥアタラTurtles All the Way Down by John Green
ジョン・グリーン(著). 2017.
ネット上のクリック率が高いジョン・グリーン
YA (ヤング・アダルト:本のジャンルで児童文学と一般小説の間に位置する)小説の金字塔、ジョン・グリーン。2012年出版のニューヨークタイムズNo.1 ベストセラー小説『The Fault in Our Stars』、’08年出版のTedTalkでも披露した『Paper Towns』は映画にもなっています。その他過去作品も、今続々とNetflixやHuluで映画化、ドラマ化されているようです。
Youtuberとしても有名で、弟のHank Greenとともに毎週、動画ブログを更新しています。本書の出版発表から発売までは、カウントダウン配信に釘付けになりながら、発売を今か今かと待ちわびていました。他にもCrash Courseというアカデミック動画シリーズを配信しており、高校や大学の授業の予習や復習時には大変お世話になりました。
今回は3年ぶりに『Turtles All the Way Down』再読!
▶︎ジョングリーン著7冊目。彼の表現の仕方や、読んでいて広がる世界観が好きです。
ジョン・グリーンと無限後退思考の旅
作家、クリエーターとして活躍するジョン・グリーンですが、本人は強迫性障害(OCD: Obsessive Compulsive Disorder)* を患っていると打ち明けています。今回の『Turtles All.. 』の主人公アーザは彼と同じOCDの症状が見られます。
行方不明である、幼なじみの父親を探すというプロット(筋書き)はあるのですが、そのストーリーよりもアーザの頭の中でなにが起こっているのか、彼女の螺旋思考(Spiral Thoughts)を追体験するような作品です。まるでジョン・グリーンの頭の中を覗いたような、彼の自伝を読んでいるような感覚で胸が熱くなりました。
強迫性障害(OCD): 不合理な行為や思考を自分の意に反して反復してしまう精神障害の一種である。同じ行為を繰り返してしまう「強迫行為」と、同じ思考を繰り返してしまう「強迫観念」からなる。Wikipedia.
亀とトゥアタラ、動物の話
題名にある、Turtles All the Way Down とは宇宙論、哲学・神話学で広まった概念の一つです。無限後退を比喩的に表したもので、地球球体説以前、地球平面説というものが一般的でした。今では慣用句として使われていますが、地面・陸を亀の甲羅と見立てて、そいつは亀の甲羅の上に、またそやつは別の亀の甲羅の上にのっかている、と、永遠に終わりの見えない無限連鎖、論法の失敗に陥ることを視覚に訴えいます。OCDの状況を見事に捉えた表現豊かなジョン・グリーンらしいタイトルです。
物語りに絶妙な味わいを生み出しているトゥアタラ/ムカシトカゲ(通称: トゥア)は、主にニュージーランドに生息するトカゲに似た爬虫類です。「生きた化石」とも称されており、地球上で約2億年ほど前から存在しているが、細胞分子的変化は他の動物と比べても一段と早いそう。そんなトゥアに込められた思いと、人生感、託された運命も見所です。
*作品の一節。
"What I love about science is that as you learn, you don't really get answers. You just get better questions." - Turtles All the Way Down by John Green.
これが全ての答えなのかも。
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