【読書録】サン・テグジュペリ『星の王子さま』
本を読むのが好きだ。文章を読むのが好きだ。
いや、私はただ、文字を読むのが好きだ。物語性なんか無くてもいい、有益な知識や情報が増えなくてもいい。ただ文字を読むことが好きだ。
例えば、ペットボトルのお茶とか、コンビニで買ったシュークリームの裏に書いてある「品名・原材料名・保存方法」とか。トイレの壁に書いてある、頭の悪そうな落書きとか。
私はそういうのだって必ず読んでしまう。それくらい好きだ。読むことの楽しい所は、いつだって何かを知れることだと思う。それが本当にどうでもいいことだったとしても。
だから、今まで沢山の本を読んできた。
ミステリーも、恋愛小説も、コメディーも、ちょっとお堅い研究書も。お気に入りの本は話を覚えてしまうくらい何度も読んだ。
その中でいちばんのお気に入りを聞かれたら、ありきたりだけど、私は『星の王子様』と答える。
あれは子供向けの童話じゃない。
『星の王子様』の有名なフレーズを挙げるなら、「本当に大切なものは目に見えない」だろう。広告とかにもよく使われるから、『星の王子様』は知らなくてもこのフレーズは知っている!なんて人も多い。
何故このフレーズだけがこんなに有名になったのか?きっと聖書にこれと酷似した言葉があるからだと、私は思う。
「わたしたちは見えるものにではなく、見えないものに目を注ぎます。見えるものは過ぎ去りますが、見えないものは永遠に存続するからです。」(新約聖書 コリントの信徒への手紙Ⅱ 4章18節)
聖書は世界一のベストセラーと呼ばれる。そう思うと星の王子様のこの台詞が有名になるのも納得のことだろう。
つまり何が言いたいかっていうと、この有名すぎるフレーズのせいで、作者が本当に読者に伝えたかったことが霞んでしまったんじゃないか?っていうこと。サン=テグジュペリが『星の王子様』でいちばん伝えたかったのは、この言葉じゃないだろうってこと。
そして私のお気に入りのフレーズは別にあるっていうこと。
「どんな人でも出会ってしまったら、その相手は自分にとって、かけがえのない特別な『ひとり』になる」
これは私の意訳だけど、サン=テグジュペリが私たち読者に伝えたかったことは、こういうことだ思う。だってこの言葉、3回も使われている。
1度目は、キツネが王子様と友達になった時に。
2度目は、王子様が自分の星に置きざりにした薔薇の花を想った時に。
3度目は、王子様と「僕」がお別れする時に。
私は特に、3度目に王子様が言った「君だけが笑い上戸の星を見るんだ」って言葉が好き。
「良い女」らしい芸風で笑いを取る某女芸人は、男の人を「35億」って膨大な数で捉えてるけど、私はそんなことないと思う。
好きな人は特別だし代替が効かない。35億分の1だから。
余談だけど、失恋した友達に「女なんて星の数ほどいるよ」って慰めたら「だけど太陽は1つしかないから」って返答されたっていうエピソードをTwitterで見かけたことがある。それも大好き。
だってそうじゃない?両親とかが特にそう。私の両親じゃなかったら、ただのオジサンとオバサンでしょう?電車で割り込みしてきたから舌打ちしてやったオッサンも、誰かのお父さんで、かけがえのない旦那さんなんだと思ったら感慨深い。
友達だって同じで、同じ学部でも未だに「この人初めて見たな」って思う人も沢山いるのに、今の友達と一緒にいられるのは奇跡だと思う。
だからこそ、私は私の「キツネ」を「薔薇」を「星」を大切にしたい。私が持ってる愛を出来るだけ多く与えたい。
自分のものを「自分の好きなように扱っていい」じゃなくて、「だからこそ大切に扱いたい」って考えられる王子様みたいな人になりたい。
私が星の王子様を好きな理由について。