「正規ルート」だけが正解じゃない。永井ようこさんの「ストーリー」(#私だけのキャリアストーリー 002)
「自分の名」で社会に貢献したいーー。
永井ようこさんが目指すキャリアのゴールは、「自分」というリソースを武器に社会に貢献することだ。
「最終的には、自分の名前で仕事がしたいんです。『永井さんだから、お願いしたい』とか、『永井さんに頼みたい』と言われるような、そんな存在になりたい。だからこそ、自分の中のひきだしをいつもなるべく多く作れるように意識しています。」(永井さん)
現在、社会保険社労士として働く永井さん。キャリアコンサルタントや講演者、フリーランス、17年間の専業主婦経験など、多面的なキャリアを歩んできた。
「どちらかと言えば、事務作業より前に出て人と一緒に働くのが好きなので。直接人と話をして、共感してもらい、一緒に巻き込みながら何かを達成する。そんな影響力を発揮できることが、自分の強みだと思います。企業でのコンサルティングや講師等、今は求められながら実績を積むことができている実感があります。」
スキルの掛け算で、「100万分の1」に
人生100年時代では、自分を「100分の1」にするスキルを3つ掛け合わせることで、「100万分の1」の希少性をキャリアの中で築くべしーー。
教育者で著述家の藤原和博氏が提唱する3つのスキルの「掛け算」。永井さんは、自らのキャリアを作る上でこの考え方を大切にしているという。
永井さんにとっての3つの「100分の1」は、「社労士」「キャリアコンサルタント」そして「専業主婦」だという。
「社労士の資格は20代の時に取っていて、今では実務経験も積んで自分の軸となりつつあります。キャリアコンサルティングとしての経験は、もともとフリーランスでコンサルティングなどに携わりながら積んできました。」と永井さん。「私自身、人前で話をしたり、人に共感してもらえるようなストーリーを共有して一緒に何かをするのが好きなので。自分でも楽しみながら取り組める仕事の一つだと自覚しています。」
そして何より、17年の専業主婦経験こそが自身の希少価値を高める大きな武器だ、と永井さんは胸を張る。
「私にとって専業主婦の17年間は、『家庭内中間管理職』の経験を積む期間にもなったと捉えています」と永井さん。
「私には子どもが3人いるんですが、例えて言うなら上司(夫)の言う事を直接そのまま伝えても、まるで響かないわけです。そこで、私が間に入って夫の言うことを子どもたちがわかるように翻訳して伝えたり、タイミングを見て話を切り出したり。時を変え、言い方を変えて何かを伝える、というのは、上司と部下の関係を取り持つ中間管理職的な動きかたそのものだったと感じています。」
「全体像をつかんでバランスを取りながら物事を進めたり、相手の良いところやタイプを見極めてコミュニケーションを取ったり…専業主婦時代は、組織人として必要な、そしてお客様の課題を改善するためのスキルが数えきれないほど身についたと感じます。」
「正規ルート」だけが正解じゃない
永井さんは、現在53歳。17年間の専業主婦の経験は一般的には「ブランク期間」として捉えられ、不利になることも多い。
それでも、いわゆるリクルーターからの紹介や中途採用などの「正規ルート」でなくても、再就職や転職でキャリアを積み重ねることが出来るーー。自身の経験を踏まえ、永井さんはそう振り返る。
「フリーランスで仕事を手伝ったことがあるとか、ボランティア、プライベートのコミュニティ、PTA…自分で色々な場所に出向くことで、それが仕事につながることもあるんです」と永井さんは言う。現在の仕事も、仕事とは関係のない知り合いから声がかかったことがきっかけで縁につながったと話す。
「正規ルートだと、ブランクがあって年齢をある程度重ねていると、それだけで『訳あり人材』だとみなされてしまう。それでも、就職や転職を探してることを普段から伝えて種をまいておくと、思わぬ所から芽が出てそれが機会につながることもある。世の中も少しづつ変わっていく中で、その『人』を深く見てもらえるような場所をたくさん持っておくほうが良いのかなと考えています。」
(文:村井秀輔)