「管理職=長く働く人ではない」 大橋運輸が考えるリーダー像と、女性活躍推進の取り組み
こんにちは! 愛知県瀬戸市に本社を置く大橋運輸です。
運輸業を営む大橋運輸では、年齢や性別、雇用形態、国籍、ライフステージなどに関わらず、すべての人がいきいきと働ける職場環境にしたいと考え、各種制度を整えてきました。
例えば、子育て期や介護期は突発的な勤務時間の変更が発生してしまいがちです。どうしてもその日にやらなければいけない業務があったら、一から引き継ぎをしなければいけませんそのような課題を解決するため、大橋運輸の本社では「ジョブ共有制度」を導入。常に仕事の情報を共有し、誰か一人に任せっぱなしにならないことを当たり前の状態にしています。
このような施策の他、弊社では多様な働き方をしやすい制度や文化が整っており、フルタイムでの仕事が難しい社員もイキイキと働くことができます。しかし、働きやすい環境が整ってきたのは、会社の想いに共感し、実績を出してきた社員たちがいたからに他なりません。
今回の記事では、女性管理職として活躍している安全衛生推進室の吉田恵美子を紹介します。愛知県瀬戸市男女共同参画審議員としても活躍する吉田。2021年には経済産業省主催の女性リーダー育成研修に参加しました。
入社時は「週3日・1日4時間」の勤務からスタートした彼女が、いかに管理職として大橋運輸の課題解決に取り組んだのか。女性リーダーとしてどのようなマインドで仕事に取り組んでいるのかなどを詳しく語ってもらいます。
安全に関わる幅広い業務を担当する室長として
初めまして。安全衛生推進室 室長の吉田恵美子です。
安全衛生推進室と言われてもなかなかイメージしづらい方もいるかもしれませんが、「運行管理者」という資格を持ち、安全にまつわる業務を幅広く担当しています。例えば、車両の点検や整備、日々のドライバーの点呼、社員教育の仕組みづくり、車両を新規に購入したり使用するエリアを変えたりした際の届け出対応、事故処理などです。
最初のキャリアは、大学卒業後の新卒で入社した大手鉄道会社。管理部門で主に人事教育を担当し、駅や運輸区、車両区などの現場によく出向いていたことを記憶しています。
結婚を機に退職し、その後二人の子どもを授かりました。夫の仕事の関係もあって何度か引っ越したのですが、子どもの気管支が弱かったこともあり、空気が良く名古屋へのアクセスも良い瀬戸市でマイホームを購入しました。
しばらくは子育てに専念していましたが、下の子どもが小学校に上がってからは少し時間ができたので、地元のタクシー会社で事務のパートを始めることに。そのタクシー会社には6年間お世話になったのですが、下の子が中学生になるタイミングで、転職活動をしようとハローワークを訪れました。タクシー会社では定型業務が多かったのですが、より仕事の幅を広げて挑戦してみたいと考えたからです。そこで紹介されたのが大橋運輸でした。
健康経営や地域貢献活動に取り組む大橋運輸は地元の新聞やテレビなどに取り上げられることが多く、よく知っていたこともあり、思い切って応募してみることにしました。
しかし、当初募集されていたのは、営業所間の調整業務を行なう「ファシリテーター」という職種。ハローワークの後押しがあって応募したのはいいものの、高いコミュニケーション能力が求められるため、うまくこなせるか自信がなかったというのが正直なところです。
面接で社長の鍋嶋にその思いを伝えたところ、鉄道会社の経験も考慮してファシリテーターではなく、安全管理と総務の仕事をすることに。しかも週4日の募集でしたが、希望を聞いてもらい週3日から無理なくスタートすることができました。募集がない職種への変更や勤務日数の変更など、今振り返っても非常にフレキシブルな対応だったと思います。
デジタコの運転診断でA判定が53%→98%に
入社してからしばらくは他の社員の手が回らない業務を中心に対応していましたが、半年が経過して慣れてきたころ、社長からある課題が与えられました。「燃費を見える化し、ドライバーたちに意識させる」というものです。
大橋運輸では社員一人ひとりに合った課題を社長自ら考え、提示されます。勤務日数や職種に関わらず自分だけのミッションが与えられるので、定型業務をこなすのとまた違ったやりがいが生まれる環境です。私も成長のチャンスだと考え、頑張りました。
私が最初に検討したのは、すでに導入されていた「デジタコ」(デジタルタコグラフ)を使った燃費の可視化です。勉強して試行錯誤を重ねながら簡単なシステムを組み、最終的にはドライバー一人ひとりの燃費を見える化してフィードバックする仕組みを導入しました。
また、燃費に加えて運転評価も可視化してフィードバックするようにしました。その結果、デジタコが目安として出している指標を弊社用にアップデートした運転診断でA判定(90点以上)の割合が、当初は約53%だったところから、現在は約98%までアップしています。
しかし、ここまでは数々のハードルがありました。燃費については、同じトラックを複数人が使用していたので個人とデータが紐づいていませんでしたし、何より社内で反対意見が多くあったのです。
多かったのは「システムが信用できない」というものです。きちんとしたシステムですから「信用できない」というのは失礼な話なのですが(笑)、ドライバーの皆さんも決して悪気があって言っていたわけではありません。「いつも真剣に気を付けながら運転しているのに」というプライドがあるからこそでしょう。彼らの気持ちを大事にしたかったので、私にできることは、「デジタコについて勉強し、丁寧に説明すること」だと考えました。
一人ひとりに対してつど対応したので、ある程度時間は要しましたが、今ではデジタコやその判定に対してネガティブな意見を言われることもなくなっています。「頑張ってよかった」と思える経験のうちのひとつです。
管理職として「無理しないこと」を意識する
2015年の入社から3年がたち、社長から「管理職にならないか」という話がありました。2018年当時も、現在も私は週4日の出勤。しかも、子育てがあり夜間や休日の急な対応や長時間労働はできません。自分の中でも、管理職は「長時間働く人」「緊急対応をする人」というイメージがあったので、「私が管理職になっていいのか」という葛藤がありました。
しかし、社長は「『管理職=長く働く人』ではない」「広い視野を持っている人、改善に向けたアクションをできる人が管理職になればいい」と、社内に伝え続けていました。その過程で、私の中でもリーダーのあり方に対する考え方が次第に変わっていったのです。
また、私も入社してから今までのことを振り返りつつ、「自分自身がどうしたいのか」をしっかり考えました。入社当時は大橋運輸がダイバーシティに舵を切り始めたばかりだったので、まだ短時間勤務の社員は少なく、勤務時間が短いことに対して嫌味を言われることもあったんです。でも、短時間勤務でも成果を出す人や責任を持って仕事をする人が増え、社内が活気にあふれていくにつれ、ネガティブな声を聞くことは少なくなりました。
試行錯誤をしているときは当然意見のぶつかり合いもありますし、新しい挑戦をするときには勇気が必要です。でも、もし自分が週4日勤務のまま管理職になってしっかりと成果を出せたら、もっと働きやすい土壌をつくれるかもしれない。挑戦してみたいという気持ちが湧いてきて、「管理職として大橋運輸を成長させるべく頑張ろう」と腹をくくりました。
でも、決して背伸びや無理をして頑張るという意味ではありません。一人ではなく、みんなで一緒に仕事をこなすことを強く意識しています。私が無理をすると、当然周囲の人たちに伝わるでしょう。次世代のリーダーになる社員たちが家庭を犠牲にしている私をみたら、「あんな管理職にはなりたくない」と思うはず。無理をせず互いに助け合える環境を作ることで、社員たちが少しでも仕事に対して前向きに感じてもらえると嬉しく思っています。
年齢や性別に関係なく、誰もが挑戦できる環境を
2021年には、経済産業省が主催する「Women’s Initiative for Leadership(WIL)」に参加させていただきました。WILは30名が参加する女性リーダー育成研修で、活動は「グループワーク」と「講義受講」があります。
6名ごとに分かれてのグループワークでは、「貧困を断ち切るための子どもの教育」をテーマに政策提言を行ないました。同じチームの皆さんと週末の時間を使って必死に取り組んだ結果、最優秀提言賞を受賞。またとない素敵な成長の機会をもらえたと思っています。
講義では、国連女性機関「UN Women」の日本事務所で所長を勤める石川雅恵(いしかわかえ)さんがおっしゃっていた「若い女性のうち、9割がリーダーになることを望んでいない」という話が印象に残っています。「長時間働く」「休日を犠牲にする」といった固定化されたリーダー像が変わらない限り、こういった残念な状況は変わりません。
年齢や性別、稼働時間などに関係なく、誰もがやりたいことに挑戦できたり、未来に希望を持って仕事に取り組めるよう、私自身もできる限りのことをしたいと思っています。まずは大橋運輸の管理職として、会社が目指す方向性と自分ができること・できないことを認識し、できないことは周囲に感謝しながら頼るなど工夫しつつ、自分のやるべきことを最大限頑張ります。
大橋運輸にはジョブ共有制度もあり、急な事情で仕事を休まなければいけないときも心配せずに済みます。一方で、定型業務のみをやるわけでもありません。ポジティブな人がたくさん集まっていますし、それぞれに合った課題やミッションをしっかりと用意しているので、やりがいのある環境です。興味のある方はぜひ一緒に働きましょう!