『ロード・エルメロイⅡ世の冒険』読了
2200万DLを誇る一大スマホゲーム「FGO」、誰しも名前くらいは聞いたことがあるだろう。
でもこれはもともと、TYPE-MOON「Fate/stay night」より連なるFateシリーズのひとつだ。
このFateの世界で、どの世界線であれロンドンが舞台となると顔を出すお方の存在をご存じだろうか。
ロード・エルメロイⅡ世という男
第四次聖杯戦争で征服王イスカンダルを召喚し、生存者となったウェイバー・ベルベット。
その聖杯戦争で亡くなった師の跡をすったもんだで継いで「ロード・エルメロイⅡ世」を名乗るようになる。
本人は魔術師3世、魔術回路もろくにない。しかしその鑑識眼、分析力は超一流。
彼を主人公としたスピンオフシリーズが「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿」として10巻まで発売されている。
2019年には4巻、5巻のエピソードがアニメ化された。
冒険の始まり
そこから数年経った後のおはなしとして、このたび新シリーズ『ロード・エルメロイⅡ世の冒険』が発刊された。
「冒険」というだけあり、いつものロンドンから飛び出し舞台は夏のシンガポールへ。
前シリーズのワトソン役・内弟子グレイは無事続投、今作でもよきバディというか用心棒として大活躍。
そして今回、ついに「Fate/stay night」でおなじみ「あかいあくま」も満を持してご登場。予想斜め上を超えて悪魔だった。
前シリーズは「ワイダニット」がテーマだったが、今回は「フーダニット」がテーマとなる。
Ⅱ世とグレイが出会った青年が喰らった神は誰なのか。
これが新シリーズの軸となる問いとなり、その問いへの答えを通じグレイが抱える問題が解決していくのだろう。
教師の条件
Ⅱ世は今作冒頭で、(口にはしないから、グレイの憶測ではあるが)グレイのためもあり講師を辞することを考えている。
しかし、彼が新しい生徒に語りかけることばの数々は、彼が生粋の教師であることを体現している。
「私は生徒を売るような真似はしない。何があろうとだ」
「だが、約束しよう。私は君と一緒に迷うと」
「私だって、いつも大切なことを間違いっぱなしだ。だけど、それは挑戦をした数だろう。人を何度も怒らせて、失望させて、それでも私たちは自分なりの答えを精一杯掲げていくしかない。正しいか間違ってるかなんていうのは、多分その結果でしかないんだよ」
ここまで寄り添ってくれる教師が、どれだけいることか。
Ⅱ世ご本人が苦しんできたことが、生徒の指導で役立っているのかもしれない。
かけることばの選び方が、適切だ。正しさだけで突き刺すものではない。
時計塔の新情報、あります
時計塔シンガポール支部をめぐり、魔術協会の新たな情報が明らかに。
「特許取得済みの魔術が使われているか否か、どうやって感知してんねん」という疑問に答えが出た。
しかし師匠も無茶をなさる。そういう法に対するチャレンジ精神は、征服王を見習わなくてもいいです。
型月作品の小ネタもいっぱい!
著者の三田誠先生は「単独で読めるように」と執筆なさったようだが、ほかの型月作品を知っていると楽しさ倍増のネタがちりばめられている。
UBWアニメ最終話で衛宮士郎と交わした会話、その特典ドラマCDで遠坂凛が車を運転したときの有様、事件簿アニメ0話の回想……等々。
Ⅱ世の殺し文句&悩殺ショットも健在!!
「君がいないと、死ぬ」と殺し文句(←本人はそんなつもりない)を吐きまくっていたが、本作でも健在。この人誑し。
「でも、師匠じゃライフルを持ち出されたら終わりですよ」
「……そこは、君を頼りにしてる」
こういうの、殺し文句のつもりで言ってくれないかな!
しかしグレイちゃんも事件簿から数年で慣れたらしい。
「ありがたいが、もう少しお手柔らかにお願いできないかな。レディ」
「余裕があるときはそうします」
そして挿絵でⅡ世がモノクルをかけて中国茶を入れている場面が描かれているので、ぜひファンの皆さまはごらんあれ。
あとがきに曰く、次は来年の夏予定とのこと。
あと半年は、次の新作を心待ちにすることで生き延びられる。
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