江國香織「薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木」を読んで
自分でタイトルを決めているわりに、読書記録ではないかもしれない文章を書かせてもらってもいいですか。
好きな作家が何人かいるうちの1人が江國さんです。彼女の文章の好きなところは湿度と色気があるところ。動きがスローでしっとりした女性が多く登場するから、私もそんな人になりたいなー(無理です)と憧れの気持ちで読んでいます。だから、話の内容もそうだけれど、登場人物の嗜好や生活スタイルが描かれているシーンの文章が結構好き。
しかしこの小説に関しては憧れというより懐かしささえ感じました。って、そんなことは大変おこがましいけれど笑。どんだけ恋愛マスターなんだって感じだけど笑。(ご想像のとおり恋愛マスターでは無いです)懐かしいというか、みんなの感情をすごく客観的に見ることができた。だから「あー、こういうときの男性の必死さ、わかるなぁ」とか、「恋が始まる時ってこんな些細な感じだよなぁ」とか「今の私だったらもう少し上手くできるなぁ」とか思いながら読んでいたらあっという間に読了していた、、なので個人的には結構読みやすい物語でした。私が憧れる時代は今より少し不便で娯楽が少ない頃(具体的な年代で言うと1970年〜1990年くらいまで)なのですが、結構今の感覚とか価値観に近いというか−実際文庫本の第一刷が2003年−ってそれでも20年以上前なのかー、、時の流れ早すぎるな。
登場人物の中で誰に一番共感できたか、と考えると特に誰にも共感はできなかったし、でも誰のことも理解することができた。人生はこうやって、人からみたらわからない毎日の生活のほんの一瞬の気持ちで成り立っているんだよねぇと改めてしみじみさせてもらえた一冊でした。
ちなみに私が物語を読む時、頭の中で実際にいる役者さんを当てはめて映像にしています。江國さんの小説を読むときは私の頭の中では石田ゆり子さんの登場回数が高いです。(勝手なキャスティング)それでいうと今回は、陶子→石田ゆり子・エミ子→板谷由夏 ・れいこ→ハセキョー・綾→西野七瀬・衿→長澤まさみ・土屋→松田龍平って感じ。ほかの登場人物も全員誰かしらに当てはめているけど長くなるので割愛。年齢とかがおかしな感じになるのだけど、あくまでも外見とか雰囲気の超個人的なイメージですので。文字を読みながら頭で映像を流す。。みんなこんな感じで読んでると思ってるんだけど、実際どうですか?
この本を美容院に持っていって読んでいたら、アシスタントの女の子が「結構本読むんですか?」と尋ねてくれたので「はい、結構読みますよ。昔から好きで。」と答えた。「私、全然本を読まなくて、まわりから読むといいよって言われるんです。言葉がうまく出てこないから、本読むといいって。何かオススメありますか?」とのことだったのだが、実は結構困った。
困ったというか、多分その子にとっては結構軽めの雑談で聞いてくれた一言だったんだろうだけど、わたしの中では「普段本を読まない人に、わたしの好みを一方的にオススメして、それが彼女の好みではなかった時、やっぱり読書好きじゃないなという気持ちにさせてしまうかもしれない!」みたいな勝手すぎる責任感を感じてしまってパッと思いつかなかったのである。だからベタ?に「東野圭吾とかのドラマや映画の原作みたいなものだと登場人物をイメージしやすいから読みやすいと思いますよ。」と伝えたら、「なるほどー、たしかに!」と言っていたけれど、多分そういうのを求めていたわけではなさそうだった。
本を薦めるって難しいですよねー、まぁ私が考えすぎなだけだと思うけど。普段から読むか読まないかでも理解度が違うだろうし。好きか嫌いかより、読みやすいかそうじゃないかで薦めてしまいがちだなー。
でももっと熱量高く「この人のこれを読んだらこのシーンのここがこんな風に良くてそれから見える世界がこうやって変わってしまったのよ!!」というネタ(ネタ?)を常にストックしておけばいいのかもしれないな。でもそれはそれでかなり一方的な話になってしまうんだよなー。
その後もずっとなんとなく考えた結果、普段読書をしない人でも読書を好きになるきっかけになるのは、原田マハの「楽園のカンヴァス」「本日はお日柄もよく」かなと思いました。
そしてもう少ししっかり物語の世界に入り込みたい方にはこの「薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木」がピッタリかと思います。いかがでしょうか。