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デザインにundo機能を実装することは可能か?

■デザインにUndo機能を実装することは可能か?

講師:久保田晃弘

■可逆デザイン/リバーシブルデザイン

・可逆性【Reversibility】・・・元に戻り得ること、もとの状態に戻り得ること。→undo

・一般的な計算→不可逆。

・遡ることができる計算→可逆計算

・“入力”と“出力”の数が同じになると可逆。あみだくじは可逆。

・時間の流れを反転できる。過去と未来の役割を入れ替えることができる。
行ったり来たりできるもの。

・セルオートマトン

■情報は物理的である

・ランダウアーの原理

【情報を操る時にも熱(エネルギー)が必要。】

【情報を作り出す時ではなく、消去する時に熱を放出する。】

・情報と物質世界は繋がっている。

・情報は必ず物理メディアで記録される。

・情報を物質(物理メディア)、情報処理と物理法則の間には対応関係があるのでは?

情報的に可逆の計算を行うとエネルギーの消費、すなわちエントロピーが増大する。

・情報を消去する時にエネルギー消費が伴う。

・可逆な計算の場合、エネルギー消費はない。

・不可逆な演算の際、最低限必要とされるエネルギーは情報の消去量によって推定することができる。

・量子コンピューター(量子計算は可逆)

・放出する熱----環境

・可逆計算とエントロピー増大の法則
自然はミクロに見れば可逆であるがマクロに見れば非可逆である。

・参考資料

■可逆デザイン

・可逆計算のメタファーによるデザインを考えてみる。

・デザインにおけるフィードバックと可逆ということは異なる。
インタラクション
リサイクル/再利用/再資源化
ユーザーやマーケットからの反応
ものにつくられるものづくり(存在論的デザイン)

■デザインプロセスは覆水盆に返らず?

・デザイン(プロセス)における「Undo」機能=戻せるデザイン

・時々刻々と変化するデザインオブジェクトの状態をもとに戻したり、戻した後にまた先に進めること。

・覆水を盆に返すことができるデザイン→捨てるものをとっておく

・可逆デザイン=デザインプロセスにおける不要なものを捨てない。

・捨てることによって、デザインが可逆でなくなる(過去に戻れなくなる)。ランダウアーの原理によれば、物事を蓄えて置くためにリソースやエネルギーが必要とされるのではなく、不要なものを捨てたり、不要なことを忘れるときにリソースやエネルギーが使われる。
捨てたこと=忘れたことは二度と戻ってこない。

■非破壊的デザイン

・近代デザインにおけるシンプリシティーやミニマリズムの横行

何事においても、完成は加えるものがなくなった時ではなく、取り去るものがなくなった時、つまり身体が裸になった時ようやく達成される。

このことから発明の完璧さは発明の不在と手を結ぶことになる。
あたかも人間の目がムルなく喜びをもって追う線が発明されたのではなく、
単に発見された線であるかのように。
初めは自然に隠されていて最後には技術者によって発見されたものであるかのように。

(アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ)
ホモ・サピエンスの短い歴史にのこされたのは、何度も何度も消しゴムと修正液で描き換えられた、ぼろぼろになった設計図の山だ。

動物もヒトも、身体の歴史を辿ってみると、実に面白い足跡が見えてきた。
もともとはナメクジウオのような優れた設計図があったとして、それがダオたんにも何度も何度も描き直された挙句、ついには継ぎ接ぎだらけの形として、今の時代に生きておることがよくわかる。
積み重ねられた設計変更はそれ自体、かなり無理をした構造が身体のなかに
隠されてきていることを思わせるが、ことそれはヒトに至って表に出てくる。

二足歩行という、ある意味とんでもない移動方式を生み出した私たちヒトは、そのために身体全体にわたって、設計図をたくさん描き換えなくてはならなかった。そうして得た最大の“目玉”は巨大でとびきり優秀な脳だったと言えるだろう。
だが、そうして作り上げたヒトの身体は、現代社会がヒトに求める特異な環境、たとえば頭脳労働や晩婚化、異様な長寿や技術依存社会の発展の中で、悲鳴をあげつつあるというのが本当のところだ。

(遠藤秀紀 人体—失敗の進化史)

・プロセスとしてのデザイン:デザインに“完成”概念は不要である。

・捨てないデザイン=可逆デザインの日常イメージ
積み重ねられた書類や本。

・Messy life / Creative Chaos

整理整頓された人の雑然としたデスク。
机の上にはその人の服さつな生活が反映されている。
しかしこのデスクを所有する人にとっては、すべてのものがあるべき場所にあり、秩序と構造がある。

・机の上は片付けない。

・データは決して消去しない(一度消したら二度と復元できない)

■Undoによる可逆性:デザインにおける決定論を自由意志

決定論:あらゆるできごとはその出来事に先行する出来事のみによって決定している。

自由意志:人間は、外界に規定されずに、自発的に意志や行動を生み出す能力がある。

Undoの使用は自分が自由意志を持っていることの証明になります。
時間の可逆性は自由意志の立証を可能にします。

(クリス・クロフォードのインタラクティブデザイン論)

■因果は認知的である

・世界はさまざまな事象のネットワークである。

・その中には可逆なものと非可逆なものの両方がある。

・その中には、人間が気づくものと、気づかないものの両方がある。

・その中には、人間が換えられるものと、換えられないものの両方がある。

・気づいたもののうち、変えられそうな物事を原因とみなすことが多い。

・気づいたもののうち、変えられなさそうな物事を結果とみなすことが多い。

・本当は変えられるのに、そのことに気づいていないことが多い。

・変えられないものごとは、そもそもあまり気づかない。

・変えられるものを、変えられないと思い込んで諦めない。

・変えられるものに、もっと気づくようにする。

・物事をなるべく変えられるようにしておく。

■デザインとアクセシビリティー

伝統的なマクロ系の熱力学系においては「マクロ/ミクロ」という区別と、
「アクセス可能/不可能」という区別は、実質的に等価である。
「アクセス可能/不可能」という観点からすると、不可逆な過程とは、アクセス可能な自由度からアクセス不可能な自由度にエネルギーが散逸するプロセスを意味している。
つまり「アクセス可能/不可能」の境界を移動することは「可逆/不可逆」の境界を移動することでもあるのだ。

(沙川貴大・上田正仁 Maxwellのデーモンと情報熱力学)

・アクセス可能=可逆
・アクセス不可能=非可逆

・可逆デザインを実践するということは、デザインの対象や過程をできるだけ「アクセス可能」にすることに他ならない。

「今日生きている私たちがぜひ尋ねたいのは、今世紀前半、まだ時間がある時になぜ当時の人々は地球温暖化を少なくとも遅らせる行動に出なかったのでしょうか?」

「答えが簡単だからです。十分な根拠はありませんでした。」

(ジェームズ・ローレンス・パウエル 2084年報告書:地球温暖化の後述記録)


・アクセス可能な過去:未来からみた過去としての現在
現在から未来を描くのではなく、未来から現在を描く。

・予言:現在をへんかさせるためのひとつの方法。

自己破壊的予言:予言によって現実を変化させ(現在の延長としての)予言=未来を破壊する。

自己成就的予言:(現在からはあり得ない)予言=未来によって現在を変化させ予言を実現する。

(ロバート・K. マートン 社会理論と社会構造)

■スペキュラティブデザイン

・予言としてのデザイン
未来を予言するのではなく、予言を通じて「もしも?」を問う。

・未来のUndo機能を実装する

■デザイン考古学(デザインアーカイヴ学)

・アーカイヴ=蓄積した過去そのものにアクセスする。

・堆積した過去の現在化

・現在からみてUndo機能、アクセシビリティを与え今現在から見えない未来をみることができるようにする。

・未来は過去の中にある:アーカイヴから(再)創造される(別の)未来

・予言=未来を現在にもってくる、予言が現在にUndo機能、アクセシビリティを与える。

・自己破壊/成就する未来:変更された現在から生まれる(別の)未来

・文化とは反復の仕方である。(ミシェル・フーコー)

・デザインを反復可能にする=デザインをいかにして繰り返すか。

・反復によって、デザインプロセスの生(不可逆性)はどうなるのか?

・アーカイヴとは過去にアクセス性=可逆性(部分的に)実装するひとつの方法である。

・そのためにあらゆるものをできる限り選択せずにアーカイヴしなければならない。(何がアーカイヴされないのか)

・可逆=アクセス可能にすることで権威的な物事を解体する。

・可逆デザインとは
①可逆なデザイン=捨てないデザインの実践【自由意志】
②可逆性をいかにデザインするか?=デザイン考古学【アクセス可能性】



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