ATELIER PARANOIA (アトリエ パラノイア)

狂楽亭ヒトリと愛猫ロクが運営するアトリエ。 ■狂楽亭ヒトリ→アート系ステルス芸人♂ ■愛猫ロク→野良出身ツンデレ猫♂

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【短編小説】不老不死

オトくんは物知りだった。 単に博識、というわけではなく得た知識を自分なりに噛み砕き、消化し自らの血肉としていた。 そんなオトくんにあることを聞いた。 「ねぇ、オトくん。不老不死になりたいって思う?」 オトくんはしゃがんで地面に何か描いていた。 そのままの体勢で、こんな突飛な質問に動じることもなく返事を返した。 「不老不死かぁ。時と場合によるかな」 「時と場合?」 「どの時点で不老不死になるかってこと」 僕がわからないまま黙っていると、オトくんは立ち上がり 砂のついた手をズ

    • 2024年をちゃんと捨てることができただろうか。

      Look back in anger —2024年を振り返る— 《SECOND VOICE》 Fall out 2024年もだいぶ後半に差し掛かってきた。 年始に考えた計画はほとんどが水の泡となった。 残された計画は片手の指で足りるほどだ。 いや、おおまかに言うとひとつふたつかもしれない。 まず、思うように資金がプールできなかった。 それゆえできることがかなり狭まってしまった。 生活をするということはやはり私にはかなり難易度が高かった。 生活というのは、飯だけ食えれば

      • 原点回帰のきっかけは“わさび”だった。

        Look back in anger —2024年を振り返る— 《FIRST VOICE》 WASABI あの人はわさびを平たいお菓子の上に目一杯ひねり、私に差し出した。 この瞬間に私は自分自身の本質を思い出した。 このわさびがたっぷりと乗ったお菓子を食べることが私の選択すべきことだと思い出したのだ。おそらくこの人以外にこんな仕打ちをされたら手首から先を切り落としていたかもしれない。 物騒な話だが、この頃はそれほど私の心は荒んでいた。 たぶんこれを読んでいる人はなぜわさ

        • 一年なんてすぐ過ぎる

          2023年に自己崩壊を経験し、2024年を“捨て年”として今後に備えることにした。 “捨て年”というのは別にどうでもいい年ということではなく、 実際の結果や何かの成果を目指したり期待をしないという年にするということだ。 2023年に改めて思ったのは自分にはないものが多過ぎるということだった。 物理的なものから精神的なもの、概念的なものすべてがない、もしくは足りていない状態だった。今後の自分の動きを考えると、そのないものや足りないものを揃えなければならなかった。 よって結

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        • 真実と虚構の短編集
          65本
        • 狂楽亭ヒトリの戯言
          46本
        • 独断と偏見で映画紹介
          6本
        • エッセイのようなもの
          63本
        • アートやデザインについて
          30本
        • 偏執的映像制作工房
          11本

        記事

          《ひとり映画祭 2024》終幕—感想と初見—

          ■《ひとり映画祭 2024》を終えて…一ヶ月間で毎日一人ずつ、世界のすごい人の伝記映画やドキュメンタリーを観た。30人のすごい人の人生の一部からたくさんのプレゼントをもらった気分だ。この一ヶ月を人類で初めて月に立ったアームストロング船長が地球に送った言葉を借りて言うと“誰かにとってはいつもの一ヶ月だが、私にとっては偉大な一ヶ月だ”である。 《ひとり映画祭 2023》はテーマが『戦争』だっただけに、かなり精神的につらくなったりもした。平和や正義といった美しく追求すべきことでさ

          《ひとり映画祭 2024》終幕—感想と初見—

          《ひとり映画祭2024》今年のテーマは『世界のすごい人』

          ■ひとりでも映画祭2024。今年のテーマは……。 “世界のすごい人!” 大きな成功や世界や社会に変革を起こした人はすべからく人生の苦みやどん底に落ちた経験があるのでは?という仮説のもとどん底からどんなタイミングで、どんな方法で蘇るに至ったのかをドキュメンタリーや伝記映画を中心に紐解いていくことを目的とする。 そこには何か自身の理想を叶えるための共通した項目があるのかもしれない。2024年を種まきの時期とした私が種を発芽させるための栄養を吸収するべく“世界のすごい人”に会い

          《ひとり映画祭2024》今年のテーマは『世界のすごい人』

          【カゾクの形】家族について書いてみた<あとがき>

          ■あとがき 私は以前、ある二つの組織と話をしたことがある。それは私の生活が困窮を極めていた時であった。藁にもすがる思いで話をしに行った。 一つ目は社会福祉協議会。 生活困窮者の自立相談支援事業をやっていることを知った。 少額だが貸付も行なっているそうだ。 二つ目は役所の生活福祉課。  その時の私は家賃や光熱費、携帯電話の通信費などを満足に支払えないでいた。理由はいろいろあるのだが今は割愛させていただく。 私の生活が困窮に陥ったわけはもう少し後に書くことにする。 今は、《

          【カゾクの形】家族について書いてみた<あとがき>

          【紀子の食卓】カゾクの形<第四回>レンタル家族

          まえがき 【逆噴射家族】カゾクの形<第一回>家族間戦争 【誰も知らない】カゾクの形<第二回>家庭内で起こる誰も知らないこと 【パラサイト-半地下の家族-】カゾクの形<第三回>貧困家庭のサバイバル ■紀子の食卓(2006)※この映画は同監督による「自殺サークル」の内容も含まれますが、この記事ではあくまでも「紀子の食卓」に焦点を置いております。「自殺サークル」の内容には気持ち程度しか触れておりませんが深く知りたい方は是非ご視聴ください。名作です。 ■幸せな島原家▼おめで

          【紀子の食卓】カゾクの形<第四回>レンタル家族

          【パラサイト-半地下の家族-】カゾクの形<第三回>貧困家庭のサバイバル

          まえがき 【逆噴射家族】カゾクの形<第一回>家族間戦争 【誰も知らない】カゾクの形<第二回>家庭内で起こる誰も知らないこと ■パラサイト-半地下の家族-■半地下の家族▼半地下とは? ・貧困 日本では馴染みのない「半地下」の家。この「半地下(반지하)」は、韓国では誰もが分かる「貧困層」を指す単語である。 ・底辺と呼ばれる者たち 日本でも同じような単語が存在する。「底辺」という言葉である。 以前、就活関連の企業が「底辺職」としてランキング形式で紹介したものが軽く炎上した

          【パラサイト-半地下の家族-】カゾクの形<第三回>貧困家庭のサバイバル

          あんたが想像できないような人間はこの世にたくさんいるんだよ【映画】正欲

          ■正欲 ■あらすじ■正欲のみどころ①登場人物についてのエピソードが重厚  さまざまな想いを抱えた登場人物が魅力。 登場人物のタイプが複数いることで観る側が誰かには共感できるようなしくみがすばらしい。しかし逆を言えば、登場人物が複数いることで人によってはもう少しこの人物を深掘りしてほしかったな、という物足りなさは感じるかもしれない。 とは言え、登場人物の想いとまったく同じとは言えないまでも似たような想いを抱えて生きている人にはかなり刺さると思う。 ②無関係だと思われた登場人

          あんたが想像できないような人間はこの世にたくさんいるんだよ【映画】正欲

          誰かにしか手に入らないものは幸せって言わない【映画】怪物

          ■怪物 ■あらすじ ■「怪物」のみどころ①視点の転換によって解かれる謎 ミナト視点、ミナトの母早織視点、ミナトの担任保利視点という3つの視点が軸になりその他にも小学校の校長やミナトの友人星川くん、星川くんの父などさまざまな視点が層のように折り重なり、ある一点を複雑化し覆い隠している。そのある一点が話が進むにつれ明らかになっていく様がすこぶる快感であり、心に強く残るメッセージとなっている。 ②時系列の構成によって解かれる謎 冒頭から中盤までのなぜそんな行動をしたのか、な

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          生まれる時は選べないから、死ぬ時は選べたらいいなって【映画】PLAN75

          ■PLAN75 ■あらすじ75歳以上の高齢者に対して自らの生死の権利を保障し、支援する制度PLAN 75の施行に伴う制度の対象者たちや市役所の職員、スタッフの苦悩を描く。 ■「PLAN75」のみどころ①淡々と進む日常の中に潜む違和感 まず、“75歳以上の高齢者に対して自らの生死の権利を保障する”という制度自体に違和感を覚える。噛み砕けば“75歳以上は安楽死できます”という制度である。こういう制度が政策として可決されたりしたら75歳以上に限らず恐怖するだろう。なぜならばもし

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          こんな世界なくなればいい【映画】世界の終わりから

          ■世界の終わりから ■あらすじ事故で親を失い、学校でも居場所がない孤独な女子高生・ハナが、終わろうとする世界を救おうと必死に奔走する姿が描かれる。 ■「世界の終わりから」のみどころ①めちゃくちゃ豪華なキャスト陣 キャスト陣が豪華すぎる。 まずは北村一輝、高橋克典、夏木マリという絶対に外さないラインナップである。さらに朝比奈彩のかっこよすぎるシーンにはシビれた。 特筆すべきはやはり主役、伊藤蒼のすばらしさに尽きる。 私が初めて伊藤蒼という女優を知ったのは映画【さがす】であっ

          こんな世界なくなればいい【映画】世界の終わりから

          —自分のジャンルは自分でつくる—【表現を仕事にするということ】

          ■思ったことを書こうと思ったけどこの本が届いた日に、読み切ってしまった。 ものすごくやわらかくわかりやすい文体、たまにクスッとなるたとえ。 本でありながら、小林賢太郎の声で再生される。 なんだか小林賢太郎がそこにいるようで、いや、いるはずないんだけど。 この本は、表現する人や表現したい人にとてもやさしい。 “やさしい”とは“易しい”ではなく“優しい”の方だ。 表現を仕事にすることの素晴らしさや厳しさを優しく伝えている。 読み終わってもまた読み返して、公演やコント観てまた読

          —自分のジャンルは自分でつくる—【表現を仕事にするということ】

          あれから約一年が経ちました。

          2023年のある個人的な事件から短期の生活保護と精神病院に行ってから、 約一年が経った。そこで今の私、狂楽亭ヒトリについて少し書いておこう。 ■生活の状況▶︎生活できているか? 生活はギリギリなんとかなっている。とりあえず生きるために支払わなければならないものは支払えている。 バイトもある程度定着してきて、月単位では安泰である。 しかしこれを年単位で考えると不安である。自分がいつまた不意にバイトを手放してしまうかは予測ができないからである。 今のところそういう予兆は限りな

          あれから約一年が経ちました。

          【変身】フランツ・カフカ【いつからか私は「虫けら」だった】

          ■著者紹介■あらすじ主人公の男グレゴールは、ある朝目覚めると巨大な虫になっていた。 この物語は虫になった男とその家族の物語である。家族は最初こそ世話をしてくれていたが、だんだんと負担になり煙たがられていく。  この『変身』という物語——原作にしろ映画にしろ——なぜ急に「虫」になったかは語られない。アメコミヒーローのように「虫」の力を得て悪と戦うなんてこともない。ただ「虫になった男と家族の日常」を描いている。 映画はほとんどが部屋の中で展開されるし、登場人物も限られる。  こ

          【変身】フランツ・カフカ【いつからか私は「虫けら」だった】