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音響解析の話1

音響解析の目的は「騒音低減」と「快音設計」です。

例えば、設計時に予期していなかった騒音が発生したとき、その製品はエネルギーの一部を無駄に音の発生で消費しており、本来の性能を100%発揮していないことになります。またその騒音からその製品の品質に対するイメージも損ねます。

一方、オーディオ機器のようにユーザーの嗜好に合わせて心地良い音を届ける快音設計もあります。


音響解析の例

【ノイズ低減のマイク設計】
録音時にマイクで雑音が発生することがあります。この現象に対して流体のシミュレーションを活用し、圧力の急激な変化が起こらないマイクネット形状を検討します。


【遮音壁の性能評価】
実物の遮音壁を製作・試験していては時間とコストがかかります。そこでシミュレーションモデルとして開放空間の音場モデルを構築し、バーチャルな音場モデルの中で開発中の遮音壁を評価することで、開発期間の短縮と開発コストの低減を実現します。


音響現象とは

人は空気の圧力(音圧)変化を耳で感じることで音として認識します。ただしその音の振動数が高すぎる、あるいは低すぎると認識することができず、人の認識できる音には範囲があります。

また人は低い周波数ほど実際の音よりも小さく感じる性質があります(聴感特性)。



音響現象の単位

通常、音の強さや音圧レベルはdB(デシベル)を使って常用対数(log)で表記します。音の現象ではスケールの異なる、まさに桁違いの値がよく登場し、これらを計算式上で簡潔に表現するために常用対数を導入しています。dBの目安は次の通りです。 

120dB:ジェットエンジン
100dB:ドリル工事
 80dB:電車
 60dB:通常の会話
 40dB:図書館
 20dB:ヒソヒソ声、寝息
   0dB:人が聞き取れる限界(20μPa)


ただし自動車の加速時の騒音のように時間的に変動する非定常な音に対しては、dBに対し、A特性(dBA)と呼ばれる補正係数が使われ、実際の感じ方に近いデータへと補正します。

また、ジェット機の騒音のように常にほぼ一定の定常的な音に対してはC特性(dBC)と呼ばれる補正係数が使われます。





音響現象の表記法

音響現象の記述に必要なパラメータを説明します。
【音圧  Pa、dB】

音圧は、音源が放射した音のエネルギーが、その場の音響環境の影響を受けて測定された物理量です。



【音響パワーdB】

音響パワーとは単位時間あたりに音源が放射した空気中の音響エネルギーの総量です。周囲の環境に依存しません。音響パワーが原因、音圧は環境の影響を受けた結果といえます。



【透過損失 dB】

透過損失は遮音性能を表します。入射音に対する透過音のエネルギーの低減量です。

透過損失は「質量、隙間の有無、入射音の周波数」で決まります。重い板(密度が高い板)
、かつ入射音が高周波であるほど遮音性能が高くなります。

また板が空気層を挟んだ多層構造の場合は、 間に挟まれた空気層による共鳴透過により透過損失が変化します。


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