子どもの自己肯定感をどう上げていけばいいのか(生き渋りの小6男子のパパ育児)
結論は、下にある目次の★を押せば読めます。お急ぎの方はそちらをどうぞ。
背景:そもそも我が家では(読み飛ばして大丈夫です)
我が家では、長男が小さいころから集団行動が苦手で、小学校低学年からはクラスに通いながらも特別支援教室での指導を受けていました。しかし、小5の頃に学校への行き渋りが始まり、小6の頃には完全に教室にはいかなくなり、度々学校を脱走、夏前には学校で大きなトラブルも起こしてしまいました。
父としては、ここが彼にとっても自分にとっても親としてのターニングポイントかもしれないと感じ、40歳にして何のキャリアプランも立てずに退職、徹底的に彼と向き合うことにしました。
結果、夏休みも過ぎ2学期となって、学校には遅刻しながらも元気に行くようになりました。普通の授業はまだまだ出れていませんが、クラブ活動には参加するようになり、友達とも少しずつ話せるようになっているようです。
今回の記事は、この3か月でぽよ太郎が悩みに悩んだ「子どもの自己肯定感をどう育(はぐく)めばいいか」について、「非認知能力(小塩真司編著)」からその理論と我が家の実践録をご紹介します。
★結論:自己肯定感は3方向から伸ばせる
1 多くの居場所(柱)を持つ
一つだけの居場所(柱)だと、人はそこでうまくいかなくなるだけで自尊心が低くなります。だから、たくさんの柱を持ちましょう。
例えば、仕事一筋の人が職場で大きなミスをしてしまったら、その傷は大きいでしょう。家庭や友人関係、趣味などがあれば、一つの柱が一時的に大きく崩れてしまっても、他で支えることができます。
居場所作りのポイントは、一緒に同じことをすること(共有体験※1)です。"同じ釜の飯を食う"ことで、その相手と絆が産まれるのは想像できると思います。
孤独が健康状態を損ねるという研究結果も出ており、多くの居場所を持つことが自己肯定感が著しく下がることを防ぎ※2、結果人生としての自己肯定感を上げることにつながります。
※1 書籍では以下のように定義されています。
共有体験とは、物や時間・空間を他者と共有する経験、それから過去の知識・現在の感情・未来への意思を肯定的なものとして他者とともに経験すること
※2 書籍では"多次元性による緩衝作用"と表現されています。
2 「傷ついたらこうする」を決めておく
生きていれば必ず自己肯定感が低くなるようなことがあります。しかし、それはいつまでも続くわけではなく、その後の反応次第で回復していきます※3。ですから、自己肯定感が低くなった時にどうしておくかを決めておけば、早く立ち直れます。
親としても、子どもが傷ついたらどうするか、子どもと接していて自分が傷ついたらどうするか、を事前に決めておくとよいです。事が起きたときだと冷静さを失って、よい反応ができないですからね。
※3 書籍では"変動性による回復力"と表現されています。
3 今うまくいっていることに目を向ける
理想が高すぎるとちょっとしたことで大きく自尊感情が損なわれてしまいます。ですから「十分ある」という感覚に目を向けること※4 が大切です。
これは親の方に効く方法ですね。過度に子どもへ期待せず「子どもができること」ないしはそもそも「子どもがそこにいることの大切さ」に注目することで、親の自尊感情が保たれ、結果として子どもの自尊感情を傷つける言動を防げます。
※4 書籍では"本来性による均衡化"と表現されています。
以上、自己肯定感を含む非認知能力の研究結果を整理した書籍から、自己肯定感(書籍では"自尊感情")について書かれている章の内容(p181-192)をぽよ太郎なりに整理し、どのようにすれば自己肯定感が育めるか考えた結果です。みなさんの参考になれば幸いです!
以下は、書籍内容の整理結果と、我が家での実践録と理論との照し合せ、理論から今後どうしていくか考えたことを紹介しますね。
理論の紹介
自己肯定感(self-esteem)の定義
自己肯定感という言葉は、self-esteemの訳ですが、紹介した書籍では「自尊感情」と訳されています。自己肯定感という言葉が日本で広まっているのは、おそらく(ぽよ太郎も読んで感銘を受けた)「子育てハッピーアドバイス」という子育て応援漫画の影響が大きいのではないでしょうか(その辺りはこの方の記事が詳しいです)。
今回紹介した書籍では自己肯定感は自尊感情の下位概念であるとされているので、この記事では、これからは"自己肯定感"→"自尊感情"(目次だけはself-esteem)という表現に統一します。
Self-esteemの高さは重要か
書籍からの引用になりますが、論文446本という膨大な量を整理した結果でも、社会経済的地位の良好さと自尊感情の高さが関わっていることが示されています。
自尊感情の高さと社会経済的地位の良好さには、弱いけれど確実な関係性があることが確認されています。
Self-esteemをどのように向上させるか
これまで多くの研究が行われており、いくつかは医療行為としても行われています。認知行動療法が代表的であり、ソーシャルスキルトレーニングやアサーショントレーニングといった方法もあります。
認知行動療法については、書籍から(孫引きとなってしまいますが)そのポイントを引用します。
自尊感情の認知行動療法では第一に、問題となっている個別の領域を特定することが大事であるとしています。つまり自尊感情の多次元性を前提としており(中略)、第二に、歪んだ理想自己を修正して現実の自己を改善する適切なスキルを子どもに教えることが大事であるとしており、これは自尊感情の本来性による均衡化を利用した介入を意味しています。
実践録:我が家ではどうした&どうする
何をしてどうなったか
しっかり長男と向き合うと決めたその日にまず気が付いたのは、私も妻も長男のことを叱ってばかりだったということです。
仕事から帰ってきたあと、寝るまでの間にやらせなければならないこと(食事やお風呂など生活のことから、学校の宿題など社会的なことまで)がたくさんあるのは事実でしたが、そういう「用件」ばかりを押し付けるだけで、「用件」に関すること以外は何も聞いてなかったな、と。
逆の立場だったら、そりゃあ非常に嫌だろうと感じました。自分に当てはめたら、、、
ほとんど話すこともなくじっと座って聞くばかりの仕事に行き、自ら行動の選択の自由がない時間をたっぷりと過ごした後、帰ってきたらすぐに妻にあれやこれやと言われる。
嫌すぎますよそりゃ。私なら家帰りません(笑)。
でも、長男は帰らないという選択肢もなかった。せいぜい家で漫画やゲームの攻略本を読んで一人の時間を作り「叱られるまでの時間」を回避するしかなかった。苦しいだろうな、と。
ですので、思い切って共にいることを大切にしました。ゲームも一緒にやり、長男の話すことは途中で区切らず全てしっかり聞き切るようにしました。
また、長男を一人の人間として尊重して、やってもらえることはお願いするようにしました。まずは家事の手伝いをしてもらい、できたら「助かった、ありがとう」と素直に伝えました。
「偉いね」とか「すごいね」など、子ども扱いするようなことは言いません。親子という上下の関係ではなく、一緒に住んでいる人間としてきちんと頼りにさせてもらうようにしました。はじめは「なんで?」「やだよ」ばかり言っていたんですが、そういうときも「今俺が○○って状況だからやってもらえると助かるんだよ。今忙しかったらいいよ、すまんね」などと丁寧に伝えていくと、次第にやってもらえることが増えてきました。
すると「問題」が起きにくくなりました。例えば、以前は夜ご飯ができて呼んでも"絶対拒否"がデフォルトだったのですが、すっと現れるようになりました。
兄弟げんかも圧倒的に少なくなりました。三男のことをかわいがるようにもなりました。自分のやりたいことを我慢して三男の我儘をきいてくれたり、お風呂に一緒に入ってくれたりするようになりました。以前は、自分の世界だけだったのが、他者のことも視野に入れられるようになった感じです。
今後どうする
長男にとっては、父と共有体験をすることで、そこに安心できる領域を作ることができたのでしょう。逆に言うと、まだ他者との関係で安心できる領域は家族だけです。今後は、他者との共有体験を増やし、深めていき、だんだんに自己肯定感を支える領域を広げていく活動をしていくことが大切ではないかと考えます。
親としては、学校では授業を受けることよりも友人や安心できる人(支援員、事務の方)との時間を大切にすることを優先してよいと伝えています。また、可能な限り学校外の人と接する機会を増やしていっています。さらに、学校外でもソーシャルスキルトレーニングやアサーショントレーニングを受けられるような環境があれば探していきたいです。