私たちは殺意なき殺人を日々犯している
毎日ニュースを見ていると震えるような怒りを覚える事件はたくさん世の中に溢れているのだが、中でもここ最近で、この事件は私の中で強く染みついて離れない。
人間は直接手を下していなくとも平然と人を殺しうる。気づかぬうちに。
そんなことを改めてなまなまと感じたのが、コロナウイルスの影響で政府チャーターでの中国からの帰国者を泊まり込みで対応にあたっていた政府職員が自殺したというニュース。
(もちろんまだ捜査や情報公開が進んでいない部分も多くここからは私の勝手な推測によるものです。ご了承ください。)
きっと、普通に生活していて自ら感染エリアに近づいたわけでもないのに、対応の職務に就かされたがために、思わぬ形で自分の意思とは無関係に半強制的にコロナウイルス感染リスクが非常に高い死に近い危うい場所に立たざる負えなくなった、不可抗力な状況が生んだ絶望とか
缶詰状態で精神安定のとれていない帰国者からの非常識で暴力的で自分に全く非のないクレームとか
そのクレームすらも上に届けたところで突き返されたりと、受け取ったものを次の人へと吐き流す場所のない体制とか
泊まり込みでの24時間体制、休む暇も逃げ込むところもない状況とか
帰国者が流した情報を使ってのメディアからの責任追及とか
そのメディアやSNSの情報を見た国民からの対応へのバッシングだとか
そういった風に全方向塞がれた状態での包囲網攻撃によって彼は息をすることができなくなったのかもしれない
確かにコロナウイルスのせいで多くの人が今なお亡くなっていて、命の重さは誰一人として変わりはない。変わりはないのだけれども、それでも、この職員さんが一番死ななくてもよかった存在なんじゃないか、対応職員にあてがわれていなければ死なずに済んだ命なんじゃないか、と憤りを隠せない。
「受け入れ先で、『テレビがない』と不満を言ったり、『こっそり逃げ出すぞ』と脅しのように凄む帰国者がいたそう。相部屋が不満で、『こんな狭いところに閉じ込めるな!』『人権無視か!』などの怒鳴り声もあったとか」(政府関係者)
この情報が正しければ、あの自殺した職員さんはこういった声によって殺されたんだきっと。
別に帰国者全員を非難したいとか、彼らに全責任があるとか言いたいのではなく(軟禁状態のストレスで現場は相当殺伐としていたらしい)、彼らも含めて、マスコミ、日本政府、国民、全員がこの事件の加害者なのだと思う(もちろんウイルス自体や中国政府の対応等も含めて)
彼を追い込んだものは色々あるのだろう。もしかしたら前々から過労がたまっていて、今回の出来事が自ら命を絶つ決定打になったのかもしれないし、帰国者の対応にあてられるまではごく一般的な生活をしていて、ここ数週間の出来事によって自死を選ばざる負えなくなったのかもしれないし。
とにかく私が言いたかったことは、
私たちはナイフで相手を刺すといったように自ら直接手を下していなくとも、日常生活の中で、殺意を持たずして、いつの間にか人殺しを行っているということ。
あなたの目の前に死体は転がっていなかったとしても、直接自分の目で確認していなくとも、あなたの手によって殺されたその身体はどこかを浮遊していて、なかったものには決してできない
今回の事件も誰か一人が悪いわけでなくとも、人を死に追い込むほどの環境を人間は容易に作りだすことができてしまうという証明になっている。人間が人間をサンドバッグに仕立て上げるのだ。
こんなにも複雑化している社会では、私たちは一言発言する度に一動作する度に、少しずつ自分の手を真っ赤な血で染めているのかもしれない。気づいた時にはもう全身血まみれ。
くれぐれもこのことを忘れてはいけないとしかと心に刻み込んでおきたい。
最近のより詳細が書かれたネットニュースがあったので貼っておきます。
ご冥福をお祈りいたします。
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