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「今、何を考えているの? 」と「どういう気持ちで・・・ ここに来たの?」 " 二つの感情 " が交差していく瞬間に。[第16週・1部]

割引あり

若き実力派俳優・清原果耶氏の代表作である 連続テレビ小説・『おかえりモネ(2021年)』 。 その筆者の感想と新しい視点から分析・考察し、「人としての生き方を研究しよう」という趣旨の " 『おかえりモネ』と人生哲学 " という一連のシリーズ記事。

今回は第16週・「若き者たち」の特集記事の1部ということで、76話を集中的に取り上げた内容だ。ちなみにこの前の特集記事となる、第15週・5部 (75話後編)の記事をお読みになりたい方は、このリンクからどうぞ。

さて、この企画を書き始めるキッカケは、第15週・「百音と未知」とこの第16週・「若き者たち」、第19週・「島へ」という三つの週に、特に大きな感銘を受けたことだ( 単体の放送回では、第9週・「雨のち旅立ち」の45話 )。

これらの週では、感動的なストーリー展開と出演俳優の演技・演出は当然ながら、構図やカメラワーク、ライティング、グレーディング(映像の階調・色調の補正)、編集、MA(Multi Audio:音声編集ダビング)などの細部に至るまで創意工夫がなされており、それぞれが効果的に連携することで " 表現したい映像の世界観 " が巧みに描かれている。したがって、これらの週を詳細に分析・考察することによって、" ストーリーの背後に描かれている世界観 " により迫ることが出来ると考えている。

それで第16週では、主人公・百音の妹である未知に加えて、幼馴染の亮が抱えている " 心の痛み " にフォーカスが当てられる。この週では、ファンの方々が色めき立つ " あの80話 " があるため、どうしても主人公・百音と菅波との恋愛の行く末に注目が集まってしまう。

しかし80話に辿りつく過程の中で、百音や妹・未知、亮の「抱える心の痛みは、どのようなものなのか?」ということの " 浮き彫りになっていく経緯とプロセス " の方が重要ではないかと筆者は考えている。そして、この経緯とプロセスがあったからこそ、80話のセリフやシーンがより感動的に感じられるのだ。

また第15週と同様に、特に今回の76話においても、妹・未知の発言や行動に対して放送当時は批判的なものが多かったようだ。しかし彼女の発言や行動によって、菅波に " ある気づき " がもたらされる。これが非常に重要な伏線となっており、また80話での " シーンやセリフの感動を増幅させる機能 " を持たせてもいるわけだ。したがって、目を凝らして隅々に至るまで注目したい放送回でもあるだろう。今回の特集記事では、その部分にも十二分に光を当てたいと思う。

それで今回の76話では、『映像力学』的なギミックは基本的なものが多いため、あまり取り上げてはいない。その一方で今回も、『DTDA』という手法 ( 詳しくはこちら )を積極的に活用し、特に百音と妹・未知、菅波、亮の表情や仕草から、セリフでは語られない " 秘めた心模様 " にフィーチャーしている。

また、百音や妹・未知を演じた、清原氏や蒔田彩珠氏のインタビューは当然ながら、野村明日美役の恒松祐里氏や及川亮役の永瀬廉氏のインタビューも取り上げて、登場人物の深層心理にも迫りたいと考えている。ぜひとも、この部分にも注目して読んで頂きたいと思う。




○彼のことを一番理解したいと思っていたのに・・・ 全く理解できていなかった


まずは前回のおさらいと、76話導入部のストーリー展開をまとめたいと思う。

主人公の永浦百音(モネ 演・清原果耶氏)の、故郷・亀島の幼馴染・及川亮 (りょーちん 演・永瀬廉氏)の失踪がキッカケとなって、彼の気持ちが百音の方へと向かっていることが露呈する。


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*『俺、やっぱ・・・ モネしか言える相手いない』という言葉で、亮の気持ちが「自分の方へと向かっている」ということに気づいてしまった百音。彼女は、『りょーちん』としか言葉を発することが出来なかった [第15週・75話「百音と未知」より]


亮に思いを寄せていた百音の妹・未知(みーちゃん 演・蒔田彩珠氏)は、これまでに " 姉・百音に対する積年の思いと嫉妬心 " が、とうとう抑えつけられなくなり感情が爆発。思わず " 白いジャンパースカート " を投げつけてしまった。


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*亮に思いを寄せていた百音の妹・未知は、これまでに " 姉・百音に対する積年の思いと嫉妬心 " が、とうとう抑えつけられなくなり感情が爆発。" 東京で購入した白いジャンパースカート " を手に取って・・・ 思いっきり百音に投げつけてしまう [第15週・75話「百音と未知」より]


深夜の喧噪を耳にした、幼馴染でルームメイトの野村明日美(スーちゃん 演・恒松祐里氏)は、百音の部屋で " 姉妹ケンカ " が起こっていると思い駆けつけると・・・ 居た堪れなくなった妹・未知は、部屋を飛び出していく。


*深夜の喧噪を耳にした、幼馴染でルームメイトの野村明日美は、百音の部屋で " 姉妹ケンカ " が起こっていると思い駆けつけると・・・ 居た堪れなくなった妹・未知は、部屋を飛び出していく [第16週・76話より]


駆けつけた明日美に、百音は亮が失踪したことと、その原因となった彼の父・新次の酒乱事件の顛末を話して聞かせる。

一方、百音の部屋を飛び出した妹・未知は、『汐見湯』のコミュニティースペースに独り佇んでいると、亮が座っていたスツールが目に飛び込んでくる。


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*百音の部屋を飛び出した妹・未知は、『汐見湯』のコミュニティースペースに独り佇んでいると、亮が座っていたスツールが目に飛び込んでくる [第16週・76話より]


それと同時に妹・未知の脳裏には・・・ 一昨日の光景が蘇ってきた。


『亮 : まあ、たまにはいいじゃない。そういうカッコも。』

第16週・76話 (第15週・74話「百音と未知」の回想) より


* " 東京の服 " を身に纏う妹・未知が、亮に『まあ、たまにはいいじゃない。そういうカッコも。いいよ』と褒められる。彼女は戸惑いつつも・・・ その喜びは隠せない [第15週・74話「百音と未知」より]


[ りょーちんさんのことを一番理解したいと思っていたのに・・・ 私は全く理解できていなかった。りょーちんさんは、あの言葉を " 本当はどのような思い " で口にしていたの? ]


と妹・未知は、「りょーちんさんの本心に少しでも迫りたい」という思いからか、一昨日に亮が座っていたスツールに自らも座り、彼の上京してからの言動を思い返そうとする。


*妹・未知は「りょーちんさんの本心に少しでも迫りたい」という思いからか、一昨日に亮が座っていたスツールに自らも座り、彼の上京してからの言動を思い返そうとする [第16週・76話より]


さて亮は、なかなか本心が見えてこない人物像の設定であり、そのセリフや表情を額面通りに受け取ることは出来ない。百音の前では若干、本音を漏らしそうにすることもあるが、妹・未知や明日美の前では " 作り笑顔 " が非常に目立つ。

それで、『まあ、たまにはいいじゃない。そういうカッコも』と妹・未知に語った時の亮の本心を、皆さんはどのようなものだったと考えますか? 筆者には、


[ 結局、みんな・・・ " 東京の色へ " と染まっていくのか・・・ ]


といった喪失感だったり、「自分だけ・・・ 独り取り残されていく」という孤独感が、心の中を占めていたように感じられたのだ。

というのも、そもそも亮が上京して『汐見湯』へと立ち寄ったのは、「モネが " 東京の色 " に染まって変わっていってしまう」ということへの喪失感や、「 " あの頃のモネ " を失いたくない」といった焦燥感が理由だったわけだ。


*亮が見つめるモニター画面の向う側には、今までに見たこともないような " 大人びた百音 " が立っており、彼はふと寂しそうな表情を浮かべる。この時に亮は、「東京という街がモネを変えていく・・・ 東京という街に " 唯一の心の支え " が奪われていく・・・」といった焦燥感に襲われていた [第15週・72話「百音と未知」より]


しかし、いざ『汐見湯』へと来てみると、幼馴染の明日美も東京生活の謳歌を感じさせ・・・ とどめは故郷・亀島在住の未知でさえ、 " 東京の服 " で着飾っていたのを目の当たりにしてしまったわけだ。


*東京という街に馴染みつつある明日美が、そのセンスで選んだ " 東京の服 " を身に纏った妹・未知。亮は彼女の姿を目にして、『可愛いね』と褒める [第15週・74話「百音と未知」より]


[ みーちゃんだけは・・・ いつまでも " あの頃のまま " だと思っていたが、やはり彼女も変わっていくのか。そして、俺だけは " 過去 " に囚われて変われず・・・ 独りだけ取り残されていくんだ ]


" 東京の服 " で着飾った未知に対して、『まあ、たまにはいいじゃない。そういうカッコも』とはいったものの・・・ 亮の心中には、上記のような喪失感や孤独感が渦巻いていたのではなかろうか。そして、一昨日に亮が座っていたスツールに自らも座って、彼の心情に迫ろうとしていた妹・未知も・・・ だんだんと " そのこと " に気づき始めていく。


[ お姉ちゃんもスーちゃんも " 東京の色 " に染まっていて、りょーちんさんは相当ショックだったはずだ。それなのに " 最後の砦 " だった私でさえ・・・ " 東京の服 " で着飾ってしまっていた ]


*亮が座っていたスツールに座りながら、一昨日のやり取りでの " 彼の心情 " に迫る妹・未知。その中で、「お姉ちゃんもスーちゃんも " 東京の色 " に染まっていて、りょーちんさんは相当ショックだったはずだ。それなのに " 最後の砦 " だった私でさえ・・・ " 東京の服 " で着飾ってしまっていた」ということに気づき、後悔の念が沸き起こる [第16週・76話より]


このことが、妹・未知の心の中を・・・ さらに掻き乱していく。



○ " 東京という街 " に打ちのめされた彼を・・・ いち早く故郷に帰って待っていてあげたい。


妹・未知の様子を心配して、階下の『汐見湯』のコミュニティースペースに降りてきた百音。


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*第16週・76話より


妹・未知の茫然自失の様子に、声をかけることすらできない。すると、住人・宇田川の銭湯掃除のデッキブラシ掛けと水の音が響いてくる。その音で振り返った妹・未知は、ようやく百音がコミュニティースペースにいたことを視認する。


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*住人・宇田川の銭湯掃除のデッキブラシ掛けと水の音で、振り返った妹・未知。ようやく百音がコミュニティースペースにいたことを視認する [第16週・76話より]


百音の顔を見た瞬間に、我に返った妹・未知は、


『未知 : 帰らなきゃ。牡蠣、水揚げしなきゃいけない棚がたまってるし、検討会の報告書も、まとめないと・・・ 』

『百音 : みーちゃん。』

第16週・76話より


*百音の顔を見た瞬間に、我に返った妹・未知は、故郷・亀島へと急いで帰ろうとするも・・・ 百音は声もかけられず。引き止めるのがやっとだった [第16週・76話より]


と故郷・亀島へと急いで帰ろうとするが、それを引き止めるのがやっとの百音だった。

さて、銭湯掃除のデッキブラシ掛けと水の音で妹・未知が我に返るのは、" このシーンの伏線回収 " ということは言うまでもないだろう。


『龍己 : 誰か、掃除してんな。』

『百音 : ああ、うん。』

『龍己 : いや~ 水の音、聞くと、仕事思い出して、寝てられなくてさ。へへ。" 漁師の性 " だ。ねえ~ 』

第14週・68話「離れられないもの」より


*出社のために百音が深夜に出かけようとすると、銭湯掃除のデッキブラシ掛けと水の音が響く中で祖父・龍己も既に起床し、故郷・亀島へと帰り支度をしていた。彼は『いや~ 水の音、聞くと、仕事思い出して、寝てられなくてさ。へへ。" 漁師の性 " だ。ねえ~ 』と、自身に言い聞かせているようでもあった [第14週・68話「離れられないもの」より]


このように島で育ち、水産業に携わる妹・未知も " その性 " によって、条件反射的に体が反応したというところだろうか。しかし、未だ亮の消息も分かっていない中で、故郷・亀島へと帰ろうとするところが解せない。筆者は、妹・未知の " 二つの心情 " が影響しているのではないかと考えている。

その一つ目としては、妹・未知がこれまでひた隠しにしてきた、島の復興への責任感やプレッシャーから生まれる「息苦しさから逃げたい」という気持ちと " 百音に対する積年の思いと嫉妬心 " を吐露してしまったことで、


[ あんなに " 悪辣な私 " は・・・ 本当の私じゃない。私はこれからも永浦家を背負い、故郷・亀島の復興をこれからも支えていく。お姉ちゃんに思わず悪態をついたことも、とても私の本心とは認められない。とりあえず早く亀島に戻って・・・ リセットしたい ]


といった、「とりあえず今の状況を一旦立て直したい」といった心理が働いていることが考えられる。そして二つ目はやはり、


[ お姉ちゃんもスーちゃんも " 東京の色 " に染まっていて、りょーちんさんは相当ショックだったはずだ。それなのに " 最後の砦 " だった私でさえ・・・ " 東京の服 " で着飾ってしまっていた。いち早く帰って、故郷・亀島で・・・ りょーちんさんのことを待っていてあげたい ]


といった二つの心情が、妹・未知を「いち早く故郷・亀島に帰ること」へと駆り立てたのではなかろうか。



○なぜ、お姉ちゃんは・・・ 彼のことが、そんなにも分るの?


酒乱事件で警察に保護されていた、亮の父である及川新次(演・浅野忠信氏)。一晩が明けて、解放された彼の身柄を永浦夫妻が引き取ってくる。新次を自宅である復興住宅に送りつつ、その報告を百音にする母・亜哉子(演・鈴木京香氏)。


*第16週・76話より


母・亜哉子はその報告と共に、亮が漁師を辞めるという発言を撤回し、「すぐに職場復帰する」と関係各所に謝りの連絡を入れたことも伝える。近くには妹・未知も明日美もいて、ハンズフリーモードでその経緯を聞いていた。


*第16週・76話より


すると明日美は、亮の行動に違和感を覚えたようで、百音の母・亜哉子に確認をする。


『明日美 : りょーちんが言ったんですか? 戻るって。』

『亜哉子 : ああ、スーちゃん? うん。朝になって、あちこち連絡してたみたい。』

『明日美 : そうですか・・・ 』

第16週・76話より


どうやら明日美は、亮が漁師を辞めるという発言を撤回して、すぐに職場復帰するという " 一貫性の無い行動 " に違和感を感じているようだった。


[ りょーちんが " 漁師を辞める " ということを、そんな簡単に口にするわけがない。それでも辞めると関係者に伝えたのだから・・・ よほどの思いと覚悟があったのだろう ]

[ " 漁師を辞める " という発言をすぐに撤回して、職場復帰するって言うなんて・・・ りょーちんは、そんなに無責任で " 一貫性の無い行動 " をする男ではない。結局・・・ 本心を抑え込んで無理をしているだけなんじゃないの? ]


*明日美は、亮が漁師を辞めるという発言を撤回して、すぐに職場復帰するという " 一貫性の無い行動 " に違和感を感じた様子だ。『 そうですか・・・ 』の言葉には、「結局・・・ 本心を抑え込んで無理をしているだけなんじゃないの?」という明日美の感じた違和感が滲む [第16週・76話より]


といったことを明日美は感じていたのではなかろうか。その違和感は当然、百音も感じていた。彼女は母・亜哉子に、このように問いかける。


『百音 : お母さん、りょーちん、何時のバスに乗るとか言ってた? 』

『亜哉子 : ううん。そこまでは・・・ 何で? 』

『百音 : もう一日だけ、休ませてあげられないかな。

『亜哉子 : ああ・・・ ああ。そうね。』

第16週・76話より


*明日美の同様に、亮の " 一貫性の無い行動 違和感を覚えた百音は、『もう一日だけ、休ませてあげられないかな』と提案し、母・亜哉子も同意する [第16週・76話より]


さて亮は、父・新次のことを背負っていくこと、そして故郷・亀島の復興の責任感やプレッシャーから生まれる " 息苦しさ " にギリギリまで耐えていたのだが・・・ とうとう耐えられなくなって、『もう全部やめたい』と百音に吐露したわけだ。


*父・新次のことを背負っていくこと、そして故郷・亀島の復興の責任感やプレッシャーから生まれる " 息苦しさ " にギリギリまで耐えていた亮。しかし、とうとう耐えられなくなって・・・ 『もう全部やめたい』と百音に吐露する [第15週・75話「百音と未知」より]


それにも関わらず、一晩が明けただけで手のひらを返すが如く、発言の撤回と早期の職場復帰をしようと考えたのは、なぜだろうか? 筆者には、


[ モネに見せてしまった弱い自分は、本当の俺じゃない。俺は・・・ これからも親父を背負い、故郷・亀島の復興をこれからも支えていく。とりあえず早く漁師の仕事に戻って・・・ リセットしたい ]


といった「いち早く状況立て直したい」という思いが先に立って・・・ 亮は、かなり焦っていたのではないかと感じられた。このような亮の心情を、百音や明日美は " 無理をして取り繕っている "と感じ取ったのではなかろうか。またこの亮の反応が、直前のシーンである「妹・未知が故郷・亀島に急いで帰ろうとした」という行動と酷似しているというところが、非常に興味深い。さらに百音は、


[ 確かに、りょーちんが今すぐに帰れば、何事も無かったように元の生活には戻れるだろう ]

[ でもそれは・・・「りょーちんが無理をする生活」に再び戻るだけじゃないの? りょーちんが抱えている " 息苦しさ " を取り除かなければ・・・ いつか再び爆発してしまう ]


と感じたのだろう。だからこそ、母・亜哉子に対して、『もう一日だけ、休ませてあげられないかな』と提案したのではなかろうか。もしかすると、「一日休みを伸ばしたからって、亮の状況はほとんど変わらないんじゃないか」という意見の方もいらっしゃるかもしれない。確かに仰る通りだとは思うが、百音が考えたことは、


[ りょーちんに、我がままを言わせてあげたい。りょーちんに、我がままな行動をさせてあげたい ]


*亮を " もう一日だけ休ませる " という提案には、「りょーちんに、我がままを言わせてあげたい。りょーちんに、我がままな行動をさせてあげたい」という百音の思いが滲む [第16週・76話より]


ということだったのではないかと、筆者は考えている。今置かれている立場と状況の中で、今すぐに帰らないということは、「亮にとっての最大の我がまま」ということになるのだ。百音はこのことで、亮の気持ちが少しでも晴れればいいと考えたのではなかろうか。

さて、このシーンで注目してほしいのは、『もう一日だけ、休ませてあげられないかな』と提案した瞬間の、妹・未知が百音を見る " 鋭い目 " だ。


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*『もう一日だけ、休ませてあげられないかな』と提案した瞬間に、妹・未知は百音の方へと視線を送る。この時の妹・未知の " 鋭い目 " が非常に印象的だ [第16週・76話より]


[ なぜ、お姉ちゃんは・・・ りょーちんさんのことが、そんなにも分るの? ]

[ 私はお姉ちゃんのように・・・ りょーちんさんを「もう少し休ませる」ということに・・・ 全く思い至らなかった ]


妹・未知は上記のことに、ハッとさせられているような表情にも見える。そしてこのことが、この後の彼女の行動を大きく左右するのだ。



○ " 悔しそうな表情 " を浮かべて、呆然と立ち尽くす瞬間に・・・ 彼女の " 長年の片思い " が、ようやく終わりを告げる


手早く身支度を整えた百音と明日美は、亮を引き止めるために新宿のバスターミナルへと向かおうとするのだが・・・ 妹・未知は一昨日に亮が座っていたスツールに座ったままで、出かけようとする気配すらない。明日美が急かす。


『明日美 : みーちゃん、行こ。みーちゃん? 』

『未知 : ごめんなさい。私、行かないです。

第16週・76話より


*亮を引き止めるため、出かけようとする百音と明日美だが、妹・未知はスツールに座ったままで、出かけようとする気配すらない。明日美が急かすと、『ごめんなさい。私、行かないです』と完全に拒否する妹・未知 [第16週・76話より]


さて、 妹・未知の『私、" 行かない " です』というセリフ・・・ 筆者には、「私、" 行けない " です」という言葉に聞こえてくる。その理由としては、続く妹・未知のセリフの、


『未知 : りょーちんが来てもらいたいのは、お姉ちゃんだから。』

第16週・76話より


というセリフが効いているものあるとは思うが・・・ 筆者には、やはり百音が、『もう一日だけ、休ませてあげられないかな』と提案したシーンでの、妹・未知の " 鋭い目 " の方が効いていると思う。


[ なぜ、お姉ちゃんは・・・ りょーちんさんのことが、そんなにも分るの? ]

[ 私はお姉ちゃんのように・・・ りょーちんさんを「もう少し休ませる」ということに・・・ 全く思い至らなかった ]


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*『もう一日だけ、休ませてあげられないかな』と提案した瞬間に、妹・未知は百音の方へと鋭い視線を送る。この時に、妹・未知は自身の無力さと不甲斐なさを思い知る [第16週・76話より]


おそらくこの時に妹・未知は、自身の無力さと不甲斐なさを思い知ったのではなかろうか。


[ りょーちんさんのことを全く理解していなかった、そして " 気づけなかった私 " なんかに・・・ 引き止めに行く資格なんてない。だから・・・ 私、" 行けない " です ]


妹・未知の『私、" 行かない " です』というセリフには、上記のような思いも込められていたのではなかろうか。一方、明日美からは意外な言葉が返ってくる。


『明日美 : みーちゃんさ、そんなの分ってるよ。』

第16週・76話より


*妹・未知の『りょーちんが来てもらいたいのは、お姉ちゃんだから』という言葉に対して、『みーちゃんさ、そんなの分ってるよ』と返す明日美。百音はこの言葉に・・・ 驚きを隠せない [第16週・76話より]


さてこの時の明日美を、皆さんはどのように捉えましたか? 筆者には、


[ りょーちんに、これまでどんなに思いを届けようとしても・・・ 届かなかった ]


といった " 積年のやるせなさ " と亮に対する " 心残り " が、明日美の表情から伝わってくるように思えたのだ。この明日美の語ったことに対する、妹・未知の反応と表情が、これまた非常に興味深い。皆さんはこの時の妹・未知の心情を、どのように捉えますか?


*明日美の『みーちゃんさ、そんなの分ってるよ』という言葉に対して、妹・未知の反応が驚いた素振りには見えない [第16週・76話より]


筆者には、明日美の『みーちゃんさ、そんなの分ってるよ』という言葉に対して、妹・未知の反応が驚いた素振りには見えない。むしろ、


[ ああ、やっぱり、スーちゃんも・・・ りょーちんさんの " お姉ちゃんへの思い " に気づいていたのか ]

[ ああ、やっぱり、スーちゃんも・・・ りょーちんさんに対して、未だに " 心残り " があるんだ ]


といった反応と表情のように感じられたのだ。そして明日美は続けて、その心情を語る。


『明日美 : こういう時、りょーちんが本音言うのはモネだよ。昔から、そうじゃん。なんだろうね、" そういう関係 " 。ムカついた時期もあったけど。

第16週・76話より


*百音と亮が昔から通じ合っていたことを、昔から分っていたと語る明日美。そして、ひた隠しにしてきた『ムカついた時期もあった』ということを、面と向かって百音に告白する [第16週・76話より]


この " 明日美の告白 " に一番驚いているのが、百音のようにも感じられるのだ。これは、先ほど妹・未知から、


[ スーちゃんや私が抱いていた " りょーちんさんへ好意 " を知っていたからこそ、お姉ちゃんは皆との関係性を壊さないように・・・ 。りょーちんさんの気持ちが " 自分の方へ向かっている " ということに気づいていても、お姉ちゃんは " 気づかないフリ " をして、今まで誤魔化してきたんじゃないの? ]


といったことを、百音は指摘されていたわけだ。さらに今度は、明日美からも同様のことを突き付けられて・・・ 驚きを隠せないような表情にも感じられる。


『明日美 : みーちゃんさ、そんなの分ってるよ。』

第16週・76話より


[ そんなの・・・ ずっと前から気づいていたよ ]


*『みーちゃんさ、そんなの分ってるよ』という明日美の言葉には、「そんなの・・・ ずっと前から気づいていたよ」という感情が滲む。「百音の気づかないフリ」さえも、明日美は " 女の感 " で、ずっと前から気づいていた・・・ その驚きと共に " かける言葉も見つからない " といった百音だった [第16週・76話より]


「百音の気づかないフリ」さえも、明日美は " 女の感 " で、ずっと前から気づいていた・・・ その驚きと共に " かける言葉も見つからない " といったような表情の百音。そしてこのタイミングで、" 明日美が抱えてきた積年の思いと嫉妬心 " を・・・ ようやく思い知った百音だったのではなかろうか。" この告白 " をした直後に、明日美は気持ちを切り替えたような笑顔で、このように語る。


『明日美 : モネ、行ってきてよ。』

第16週・76話より


* " 百音への積年の思いと嫉妬心 " を告白した後、明日美は気持ちを切り替えたように笑顔で、『モネ、行ってきてよ』と語る [第16週・76話より]


これに対して百音は、「えっ? 」と驚くような表情を見せるのが印象的だ。


*明日美に『モネ、行ってきてよ』と言われて、「えっ? 」と驚くような表情を見せる百音。「一番行きたいのは・・・ 本当はスーちゃんのはずなのに」という百音の思いが滲む [第16週・76話より]


[ りょーちんを引き止めに行きたいのは、みーちゃん。そして一番行きたいのは・・・ 本当はスーちゃんのはずなのに ]


このようなことを感じ取ったからこそ、明日美の『モネ、行ってきてよ』という言葉に意外性を感じつつ、百音は驚くような表情を浮かべるのだろう。さらに明日美は続けて語る。


『明日美 : 私とか行くとさ、りょーちん、逆に笑ってさっさとバス乗っちゃうかも。あいつは・・・ ね。カッコつけるからね。私や・・・ みーちゃんには。』

第16週・76話より


*『あいつは・・・ ね。カッコつけるからね。私や・・・ みーちゃんには』という明日美の言葉の裏側には、「結局、モネには・・・ 私は到底叶わない」といった一抹の悔しさも滲む [第16週・76話より]


[ 結局、モネには・・・ 私は到底敵わない ]


と一抹の悔しさを滲ませつつも、おどけてひた隠しにしようとする明日美。しかし気持ちを切り替えるが如く、彼女は百音を見つめてこのように語りかける。


『明日美 : りょーちん・・・ バス、乗せないで。』

第16週・76話より


*『りょーちん・・・ バス、乗せないで』という明日美の目には、「今はモネしか、りょーちんのことは救えない。モネに・・・ りょーちんのことを託すよ」という思いが伝わってくるようだ [第16週・76話より]


[ 幼馴染のピンチの時に、そんなことは言ってられない。今はモネしか、りょーちんのことを救えない。モネに・・・ りょーちんのことを託すよ ]


幼馴染という厚い信頼と、女と女の熱い友情・・・ 明日美の目には " 託す思い " が強く滲む。その心意気を感じ取った百音も、


[ 私は " スーちゃんの思い " も託されて・・・ 幼馴染の代表として、りょーちんを絶対に引き止める ]


という決意も込めて、


『百音 : 絶対、連れてくる。』

第16週・76話より


*幼馴染という厚い信頼と、女と女の熱い友情・・・ 明日美の目から " 託す思い " を感じ取った百音。「私は " スーちゃんの思い " も託されて・・・ 幼馴染の代表として、りょーちんを絶対に引き止める」といった決意も込めて、『絶対、連れてくる』と宣言でもするように、力強く語った百音 [第16週・76話より]


と百音は宣言するが如く、力強く語ったのだろう。

さてこのシーンにおいても、妹・未知の心情にどうしても注目してしまいがちだ。しかし制作者側はこのシーンにおいては、むしろ明日美の心情にフォーカスを当てたいようだ。このことは " このカット " でのMA(Multi Audio:音声編集ダビング)処理から垣間見れる。


*百音は『絶対、連れてくる』と宣言するが如く、力強く語る。その直後に、明日美に何かを語りかけつつ、亮の元へと向かう百音。そのセリフが非常に聞き取りにくく、ヘッドフォンで確認すると、百音は微かに「みーちゃん、お願い」と明日美に語りかけるのが、かろうじて分る程度だ [第16週・76話より]


明日美に思いを託されて、『 (亮を) 絶対、連れてくる』と宣言するが如く、力強く語る百音だったが、その後のセリフが聞き取りにくい。ヘッドフォンで確認すると、百音は微かに「みーちゃん、お願い」と明日美に語りかけるのが、かろうじて分る程度だ。字幕を確認しても表示はないため、演じる清原果耶氏の判断で、 " 台本には書いていないセリフ " をアドリブで語っている可能性が高い。

そうはいっても、『絶対、連れてくる』という百音のセリフは、かなりのレベルの音量で収録されており、直後の「みーちゃん、お願い」がほとんど聞こえてこないというのは、非常に不自然だ。映画やドラマの撮影現場では、ラベリアマイク (ピンマイク) とショットガンマイクのハイブリッドで音声収録が行われるため、収録ミスは考えにくい。ということは・・・

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