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読書記録 - 伊与原新 「リケジョ!」
「水晶という鉱物は圧電体の一種で、電圧をかけると一定の周期で振動する。その性質を利用した時計が、クオーツ時計」律は文字盤を見せながら言う。
小4にはなかなかハードな授業してます、この人。
軽めな「探偵ガリレオ」的ミステリ
大学院生の律は海外留学の費用を稼ぐため、富豪の令嬢である理緒の家庭教師となるべく、お屋敷の門を叩く。
「──律先生、あのー、念のために訊くんですけど……」
少女の口から語られたのは、にわかには信じがたい噂だった。
「お墓の壁のところから足が二本、ニョキって出てるんです」
2人の理系女子、通称リケジョの活躍を描いた連作短編。
不思議な現象を科学の力で解き明かす、東野圭吾の『探偵ガリレオ』を彷彿とさせる5篇が収録されています。
表紙がかなりポップなので子供向けというイメージを持たれるかもしれませんが、ボリュームもあって普通に大人でも楽しめる小説でした。
エグいシーンなどはほぼ無いので、軽めで明るい雰囲気のミステリを欲してる方におすすめ。
科学に関する雑学が満載!
この本の一番の魅力は、やはり科学のエッセンスがふんだんに盛り込まれていることではないでしょうか。
トンネル効果
シュレーディンガーの猫
コペンハーゲン解釈
といった量子論に関するワードに始まり、
電波による地球外知的生命体探査 (宇宙人との交信)
虹ができる理由
赤い月の正体
などなど、幅広いプチ知識が掲載されています。
「科学に興味はあるけど数式は見たくない」って人にはちょうど良いとっかかりとなるかも。
長編小説として読むべし!
ただ個人的な意見として、序盤はあまり好きになれませんでした。
本格推理小説としてはちょっと軽すぎるし、犯人がすぐわかっちゃうので、犯人当てを楽しみたいって方には向いていません。
あと「急な場面転換」が頻繁に起こります。
僕自身わけがわからず、数行置いてけぼりを喰らうことも何度かありました。その点はイマイチだったかな。
しかし最後のストーリーを読み始めると評価が逆転。読後感もスッキリで「読んでよかった」と思える。
これはもう、最初から長編小説として読むべき本ですね。途中で読むのをやめちゃうのはもったいない。
最後にひとつ、よい子のみんなと約束だ!
この本のトリックは、悪いことに使っちゃダメだぞ!