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販売している本は全て読んでいますか?

noteの更新が滞っていましたが、ポトラというお店をオープンして8ヶ月が経ちました。久しぶりのnoteは唐突なタイトルで始まりますが、これまでお店を営む中で、お客さんから聞かれることベスト3(店長調べ)に入る質問です。

販売している本は、全て、店長である私が選書しています。ということをお伝えすると、8割くらいの確率(これまた店長調べ)で、この質問をいただきます。

ということは、店長さんはここにある本、全部読んでいるんですか?

事実としては、さすがに全部読んだ上で仕入れているわけではありません。
むしろまだ読んでいない本を仕入れることの方が多く、着荷後に、店長自ら読みたくて買ってしまうことも多々あります。

ではどのように選んでいるのかというと、ポトラの場合は、特に信頼を寄せている出版社(現時点では100社程度)のホームページを定期的にチェックし、新刊・近刊情報を見ています。また、SNSでも「この本屋さんは素敵だな」と憧れる先輩書店さんの中には、入荷した本を紹介されている書店さんもあるので、それを見て気になった本を仕入れることもあります。情報は日々いろんなところから取れるので、新聞、ラジオ、SNS…さまざまなところから選書のヒントを拾い集める日々です。

最終的にはそのように得た情報の中から、どの出版社から出ているのか、著者は誰か、タイトル、推測できる内容(あくまで概要)、装丁など様々な要素を合わせ見て、ポトラで仕入れたい本かどうかを判断しています。

と、毎回丁寧に説明できれば良いのですが、お客さんはもっと気軽な気持ちで質問されていたり、お店を運営しながらだと、こちらも十分に時間を使ってお答えできないことが多いのが現状です。

ほとんどの場合、「さすがに全部は読んでいません。でも、すべて1冊ずつ選んで仕入れています。」というようにお答えするのですが、その度に、何か後ろめたいような気持ちになっていました。

お答えしていることは事実であるのに、何が後ろめたい気持ちにさせているのだろうと考えると、2つのことが浮かびました。

1つ目は、「全部は読んでいない」と答えた時に感じる後ろめたさ。お客さんは「全部読んでいる」ということを期待して質問しているのではないか、それに対して「読んでいない」とお答えすることは、期待はずれに感じさせるのではないかということ。

そして2つ目は、「1冊ずつ選んで選書している」という一言には、どのような本を選んでいるのか、どんなことを大事にして選んでいるのかということまで含まれていないこと。

この後ろめたさを感じずに、かつ手短に、どうお答えすれば良いのか。この8ヶ月考えてきましたが、先日ふと自分なりの、そしてポトラなりの答えが降ってきました。

全部読んだわけではありません。
でも、全部、私が読みたい本です。

あるいは、

読んだことのある本だけを、選んでいるわけではありません。
でも、自分が読んでみたい本だけを選んでいます。

この答えを見つけたのも、お客さんとお話をしている中でのことでした。おすすめの本を教えてほしい、とお客さんからお声かけいただき、その方の普段読んでいる本や、どんな本を読んでみたいかといったことを伺いながら、一緒に本を選ばせていただきました。私が、この本の著者はこんな本も出していて…この本もこの本も◯◯という出版社から出ているんですけどすごく面白い出版社で…などと、無意識にも本と本を繋ぎ、渡り歩くような紹介の仕方をしていたら、お客さんから「本当に本のことをよくご存知なんですね」とおっしゃっていただきました。

実際にはそんなことはなく、海のように果てなく広い本の世界の中で、私は私の好きな本やジャンル、著者、一部の出版社のことしか知りません。でも、反射的に、ごく自然にその時に口に出たのが、

だってこの店には、私が読みたい本しかありませんから。

というひとことでした。自分が、読みたいと思える本しか置いていない、だから、読んだことがなくても自信を持ってお客さんにおすすめできるんです。8ヶ月かけてふと自分の中から湧いてきた言葉に、安堵した瞬間でした。これからは、こうやって答えることができる。

全て読みたいけど、読めてはいません。
でも、全て私が読みたい本なので、自信を持って売ることができます。

レジでお客さんから差し出された本が、私が次に買って読もう!と思っていた本だった時には、(売れて嬉しいのに)「先にやられた!」という悔しさもちょっぴり感じながら、お客さんとも会話が弾みます。

「これ、私も読みたい本なんです!」


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