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「スカウトピックアップ」は採用活動において最も重要な業務の一つであると思う

「スカウトピックアップをAIで自動化するサービスが登場しました」

という話を耳にすることが多くなってきました。
これについて、何というか、私は何とも言えない違和感を覚えています。AIそのものへの違和感ではありませんが、スカウトの「ピックアップ」という作業が、採用活動における「根幹」であることを市場が認知していないことに対する違和感です。

本ブログでは、採用活動で非常に重要であるにもかかわらず、軽視されがちな「スカウトピックアップ」についてお話ししたいと思います。




0. スカウトピックアップとは?

スカウト対象者の選定を指します。この部分は、採用担当者であればご存じかと思いますが、スカウトメールを送信する際に、対象者を選定しなければなりません。スカウト業務を1人で担当されている方は、スカウトピックアップとスカウト送信を同時に行っているかもしれませんが、複数名の採用担当者がいる場合、スカウトピックアップとスカウト送信を別々の担当者が行っていることもあるでしょう。

ちなみに、スカウト業務は思った以上に複雑です。以下、そのフローについて少し説明します。

0-1. スカウトターゲットの確定

この項目では詳細は触れませんが、スカウトターゲット設定に関する話です。例えば、どの業界でどの職種、どの年収をターゲットにするのかなど、ターゲットを構成する要素を一つ一つ決めていきます。

0-2. スカウトの検索条件の設定

前項で説明したスカウトターゲットをもとに、検索条件を設定します。この条件設定が非常に重要で、厳しくしたり緩めたりすることでスカウト返信率に大きな影響を与えます。その理由は後述します。

0-3. スカウトピックアップ

これが本ブログでメインに説明したい内容です。スカウト送信対象者を選定する作業です。

0-4. スカウト送信をするか否かの判断

スカウトピックアップ担当とスカウト送信者が別の場合、このフェーズが発生します。

0-5. スカウトカスタマイズ文章の作成

各求職者さまのキャリアを読み込み、そのキャリアのどの部分に魅力を感じたのか、また自社でその求職者さまの希望をどのように実現できるのかについて言及する内容です。採用界隈では「1to1」と表現することもあります。

0-6. スカウトテンプレートの調整

スカウトテンプレートとは、スカウトメールの雛形を指し、スカウト文章の「共通部分」のことです。前項のカスタマイズ文章とは異なりますので、ここでは共通部分の調整とご理解ください。

0-7. スカウト送信

スカウトを送信する作業ですので、詳細な説明は割愛します。

ここまで説明したように、スカウト業務は様々なフェーズに分かれています。もちろん、すべての業務が重要ですが、その中でも最も大事だと言えるのがスカウトピックアップです。本ブログでは、この点について深掘りしていきます。


1. なぜスカウトピックアップが重要なのか?

「佐藤さんから鈴木さんにスカウト担当を変更しただけで成果が出た」という話をよく耳にします。これは、佐藤さんよりも鈴木さんが優れていたと解釈されがちですが、「何が優れていたのか?」という部分まで言及されることは少ないです。

ここでは具体的なエピソードをもとに説明します。

1-1. 佐藤さんと鈴木さんのスカウト業務の比較

佐藤さんと鈴木さんという名前は仮名ですが、実際に社内外で起きた話です。佐藤さんが半年ほどスカウトメールを担当していた際、返信率は平均的で、特に目立った成果はありませんでした。その後、鈴木さんがスカウト担当になった途端、返信率が1.5倍に増加しました。

「え、鈴木さんすごくない?」
「どんなスカウトカスタマイズ文章を書いているの?見せて!」

といった声が社内外で上がり、私も興味があって確認してみました。その結果、次の2つのことがわかりました。

  • スカウトテンプレートはほぼ変えていない(微修正レベル)

  • スカウトカスタマイズ文章は、むしろ佐藤さんの方が良い

正直これを知ったとき、「どういうこと?」と疑問に感じました。なぜなら、鈴木さんの方がスカウト返信率を1.5倍に引き上げていたにもかかわらず、カスタマイズ文章やテンプレートには大きな違いが見られなかったからです。

そこでさらに深掘りしてみたところ、一つの事実に気付きました。

1-2. 佐藤さんと鈴木さんのスカウトピックアップの違い

結論から言うと、スカウトピックアップにおいて、佐藤さんと鈴木さんが見ていた「対象者」が異なっていたのです。

例えば、フィールドセールスのスカウトピックアップを考えてみてください。佐藤さんは主にSaaSの経験者をピックアップしていましたが、鈴木さんはSaaS出身者に加え、「SIer出身者」「業界出身者」も意図的にピックアップしていました。特定の業界向けのSaaS企業だったため、ITの経験が少なくても業界経験者をピックアップする工夫がなされていたのです。

これにより、鈴木さんのスカウト返信率が上がっていたのです。

1-3. スカウトピックアップのチューニングがもたらす影響

「山根さん、スカウト対象者がもういません」と言われたことが、私はこれまでに100回以上あります。しかし、実際にその企業さまのスカウト媒体にログインして検索してみると、まだスカウト対象者がいることがほとんどです。

この状況の原因は、スカウトピックアップ担当者が要件通りにピックアップを進めているものの、無意識的に「スカウト対象者を広げる」作業を怠っていることにあります。


2. スカウトピックアップに必要な求職者さまの見極め

求職者さまのキャリア情報を正確に理解し、適切なレベルでスカウトを行うことが重要です。例えば、知名度のある企業に在籍する求職者さまにスカウトを送っても、返信率が低くなる可能性があります。企業の「偏差値」を意識したピックアップが重要です。

2-1. 「ピックアップ確認をする際の合格率は70%で良い」という言葉について

当社は多くの企業さまのスカウト支援を実施しており、支援の序盤にはスカウトピックアップ対象者の確認を採用企業さまに依頼することがあります。その際に、メンバーが勘違いしていることがよくあります。それは、「スカウトピックアップの精度を100%にしようとしている」ということです。

これには私は反対です。

前項で述べたように、無難なピックアップを行えば、間違いなく100%の合格率を得られるでしょう。つまり、10人ピックアップして10人全員がスカウトOKになるということです。しかし、この状態ではスカウトピックアップの確認作業があまり意味を成しません。

私が考える理想の合格率は70%程度です。その理由は、スカウト対象者を選定する際に「本当にギリギリだけれど、この方にスカウトを送るべきか?」という判断が重要だからです。そうした際どいラインにある求職者さまをピックアップすることが、成功の鍵となる場合が多いのです。

もちろん、採用企業さまは質の高い求職者さまを採用したいという希望がありますが、現実の採用市場を見据えながら進める方が、結果として事業成長につながると私は考えています。


3. スカウトピックアップ業務にエースをアサインする

もしかすると、採用活動を成功に導く最短ルートは、スカウトピックアップ業務にエースをアサインすることかもしれません。業界や職種についての知識が豊富で、かつ採用ニーズを的確に把握し、積極的にスカウトピックアップができる人材を配置することで、スカウトの返信率が向上するでしょう。

そのため、スカウトピックアップ業務を外注している場合は、本当に精度の高いスカウトピックアップができているのかを確認することをお勧めします。当社では、一定の研修を実施した上でスカウトピックアップを行っていますので、その点についてはご安心ください。

3-1. 自社の魅力の偏差値を正確に知る

自社が転職市場においてどの程度の人気を持っているのか、つまり

「自社の魅力の偏差値」

を正確に把握することが重要です。多くの企業さまでは、過去の経験から「このくらいのレベルの人材なら採用できるだろう」という固定観念を持っていることが多いです。

しかし、昨今の採用市場は非常に変化しており、そうした固定観念が通用しないこともあります。例えば、メルカリやサイバーエージェント、リクルートなどの有名企業出身者は、自信を持って次のステップに進むため、簡単に採用できるわけではありません。そのため、自社の魅力のレベルに応じて、スカウトピックアップの基準を調整する必要があります。

3-2. 求職者さまが求める魅力を提示できるか?

自社の魅力を把握することは重要ですが、それだけでは十分ではありません。求職者さまが求める魅力を提示できるかどうかも非常に重要です。

例えば、「営業職」のスカウト返信率が高い場合でも、「エンジニア職」に対して同じ戦略を使っても効果が低いことがあります。それぞれの職種に対して響く魅力を理解し、適切にアプローチすることが必要です。

3-3. どの企業に在籍しているか?

スカウトピックアップにおいて、対象者が現在どの企業に在籍しているのかも重要なポイントです。「社歴社会」と言われるように、メルカリやサイバーエージェント出身の求職者さまは、その経歴自体で高いキャリアバリューを持っています。

名の知れた企業に在籍している求職者さまにスカウトを送る際、スカウト送信前に既に勝負が決まってしまうことがあるので注意が必要です。

3-4. 自社を選んでくれそうな人材も視野に入れる

採用活動では、採用企業が主語となることが多く、「この求職者さまが自社にマッチしているか」を重視しがちです。しかし、「自社を選んでくれそうな人材」を意識してスカウトピックアップを行うことも大切です。

スカウトピックアップにおいては、採用要件を少し広げたり、別の視点から人材を見つめ直すことで、スカウト返信率が大きく変わることがあります。

3-5. 際どいラインを知り、更新する

採用における選考基準は完全ではありません。
採用活動においては、面接で良い印象を持っても、実際の業務で期待通りに活躍できないこともあります。

そのため、「この求職者さまはスカウト対象としてギリギリだが、送信してみるべきか?」という判断は非常に重要です。際どいラインにある求職者さまを見極め、定期的に基準を見直すことで、スカウトピックアップの精度を高めることができます。


最後に

皆さんいかがでしたでしょうか。
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